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家族が逮捕されてしまった場合、早期の釈放や不起訴処分獲得のためにすべきこととは?
「夫が警察に連れて行かれた」
「突然警察から電話がかかってきて『あなたの息子を逮捕した』と言われた」。
多くの人にとってそのような経験は初めてのことだと思います。
突然家族が警察に逮捕されてしまった場合、今後どうなってしまうのか、また何をすべきかがわからず途方に暮れてしまう人がほとんどでしょう。
しかし、家族が逮捕された場合、事態は一刻を争います。初動の遅れによって、取り返しのつかない不利益を被ることもあります。
ここでは、あなたの大切な夫や妻、息子、娘、両親が逮捕されてしまった場合にどうなるのか、また、逮捕されてしまった家族のために何をすべきなのかを解説したいと思います。
家族逮捕されてしまったらどうなるのか?逮捕後の流れについて
逮捕後の流れ
逮捕された後は、通常、①警察署→②検察庁→③裁判所の順で身柄が移送され、最終的に裁判所で「引き続き身柄を拘束(勾留)し続けるかどうか」が判断されることになります。この判断が出るまでの時間はおおよそ逮捕されてから2日か3日です。
ここで注意が必要なのは、この段階では、「起訴か不起訴かを決めるまでの間、引き続き身柄を拘束すべきかどうか」を決めるだけであって、「懲役何年」や「罰金何円」などの刑罰を決めるわけではない、ということです。刑罰は起訴された後の裁判で決められることになります。
そのことを前提に逮捕後の流れを図にすると以下のようになります。
逮捕
警察に逮捕された場合、まず警察署の中にある留置場という場所に入れられます。
ここでは最長で48時間身体を拘束され、その間、警察からの取調べを受けることになります。この段階で本人と会うことができるのは弁護士のみであり、家族や友人の方などが本人と面会することはできません。
その後、警察は48時間以内に本人を釈放すべきか否かを判断し、「釈放して良い」と判断した場合は身柄が釈放されることになります。軽微な事件などであれば、この段階で釈放されることもありますが、実際上はあまり多くありません。
それ以外の多くのケースでは、逮捕から48時間以内に検察庁に身柄が送られることになります。これを「送検」といいます。
検察庁での取調べ(弁解録取)
送検後、今度は検察官から取調べを受けることになります。
検察官は、取調べの結果や警察が集めた証拠などを検討し、捜査のためにさらに長期間の身体拘束(これを「勾留(こうりゅう)」といいます。)が必要であるかどうかを判断します。ここでいう「長期間」というのは、具体的には10日間です。
その結果、検察官が「勾留の必要はない」と考えた場合は、本人の身柄を釈放します。この段階で弁護人が意見書を提出するなどして検察官を説得することで、検察官が勾留請求をせず、身柄が釈放になることがあります。
他方、検察官が「勾留の必要がある」と考えた場合、検察官は裁判所に「勾留請求」をします。勾留請求をされると、今度は裁判所に身柄が移送されて、裁判官が勾留するかどうか判断することになります。検察官はあくまで裁判所に勾留を「請求」するだけであり、勾留するかどうかの最終判断は請求を受けた裁判所で行います。
なお、名古屋地裁管内(愛知県内)の場合、送検後、裁判所に移送されるまでの時間は、通常、数時間程度であり、多くの場合、午前9時頃に送検され、その日の午後1時頃には裁判所に移送されることになります。
裁判所での勾留質問
裁判所に移送された後、今度は本人と裁判官が面談をすることになります。
裁判官は本人から様々な事情を聞き、勾留の必要があるかどうかを判断します。これを勾留質問といいます。
そして、裁判官が勾留の必要はないと判断すれば、その段階で身柄が釈放されます。ここでも、弁護人が意見書を提出して裁判官を説得することで、裁判官が勾留請求を却下し、身柄が釈放になることがあります。
他方で、勾留の必要があると判断されてしまった場合は、最低10日間身柄が拘束されてしまうことになります。
もっとも、勾留された後でも、弁護人が裁判所に不服の申立て(「準抗告」といいます)をすることで、勾留が取消されることもあります。
なお、送検から勾留の判断が出るまでは最長で24時間と法律で決められていますが、名古屋地裁管内(愛知県内)の場合は、送検されたその日の夕方頃に勾留の判断が出るのが通常です。
また、勾留された後はご家族や友人の方でも本人と面会できるようになります。ただし、接見禁止命令が出されていた場合、弁護士以外は本人と面会ができませんので、接見禁止の解除を裁判所に求める必要があります。
勾留延長の可能性
すでに述べてきたとおり、勾留の期間は原則10日間ですが、さらに10日を限度として勾留期間が延長されてしまうこともあります。比較的軽微で単純な事件以外では、延長されることも多いです。ここでも弁護人が検察官や裁判官に意見書を出すなどして、勾留延長を回避するための弁護活動が重要になってきます。
検察官による処分決定
10日ないし20日の勾留期間の間に検察官は「起訴にするか不起訴にするか」を判断します。
検察官は、十分な証拠がないと判断した場合、または、十分な証拠があっても情状面を考慮して「起訴して刑罰を与える必要がない」と判断した場合は、事件を不起訴にします。前者の場合を「嫌疑不十分による不起訴」後者の場合を「起訴猶予」といいます。
起訴猶予になるためには、被害者と示談していることや家族など確かな身元引受人がいること、本人が反省していること、具体的な再犯防止策を講じているころなどが重要になってきます。特に、被害者のいる事件では、被害者との示談は検察官の判断に大きな影響を与えるので、弁護士を入れて早期に被害者と示談交渉を行うことが極めて重要です。
他方、検察官において十分な証拠があり、情状面を考慮しても起訴すべきだと判断した場合、検察官は事件を起訴します。
起訴には①正式起訴(公判請求)と②略式起訴の2種類があります。正式起訴(公判請求)は、公開の法廷で事件を審理するよう求める通常の起訴のことです。この場合、刑事ドラマなどでよく見る通常の刑事裁判を行うことになります。当然、起訴された人は裁判所に出廷しなければなりません。
他方、略式起訴の場合は、簡易裁判所の裁判官が書面審査だけで判断するので、裁判所に出頭する必要はありません。略式起訴の場合は、その時点で釈放され、それ以上身柄が拘束されることはありません。なお、略式起訴の場合は必ず罰金刑になります(したがって、法定刑に罰金刑が定められていない犯罪の場合、略式起訴になることはありません)。
保釈請求
もしも正式起訴(公判請求)されてしまうと、今度は裁判所で事件についての審理を受けることになります。この場合は、さらに身柄拘束が続くことになるので、身柄を解放してもらうためには保釈請求を行う必要があります。
保釈請求とは、一定のお金(保釈保証金)を裁判所に預けて身柄を解放してもらう手続きのことです。ここで預けたお金は、いわば本人が逃げたり証拠を隠滅したりしないようにするための人質のようなもので、本人が問題を起こさず裁判が終了すれば、事件終了後に戻ってきます。
拘束期間はどれくらい?
すでにご説明差し上げてきたとおり、逮捕から送検までで最長48時間、送検から勾留の判断までで最長24時間、勾留期間が最長で20日間なので、逮捕から起訴・不起訴の判断までで最長23日もの間身柄が拘束されてしまう可能性があります。
仕事や学校などに重大な影響を及ぼすおそれがありますので、弁護士に依頼して早期の身柄解放に向けた対応をとることが重要といえるでしょう。
報道はされる?
家族が逮捕されてしまった場合、事件が報道されるのかどうかという点も気になるところかと思います。
警察は誰かを逮捕したら、その事件に関する情報をマスコミに提供します。
マスコミは事件の内容や重大性、社会的影響などを踏まえて報道するかどうかを判断します。あまり重大な事件でなければ、報道されるリスクは低いですが、その日の他のニュースが少ない場合は地方紙の社会面などに実名で掲載されることもあります。他方、重大な事件であれば、テレビや全国紙などで報道されてしまう可能性もあるでしょう。
事件が報道されないためには、弁護士による働きかけが必要になるので、家族が逮捕された場合は、早期に弁護士に依頼するようにしましょう(もっとも、弁護士が働きかけても、警察やマスコミの判断によって報道されてしまう場合も多いです)。
職場や学校への連絡はどうする?
逮捕された家族が仕事をしていたり学校に通っている場合、悩ましいのは職場や学校への連絡をどうするかです。
この点は、事件の内容や早期釈放の可能性があるかどうかなど、今後の見通しを見極めながら適切に判断する必要があります。拙速な判断で取り返しのつかない事態にならないためにも、弁護士による判断が必要になってくるので、早期に弁護士に依頼することをおすすめします。
家族が逮捕されてしまったら何をすべきか?弁護士に依頼するメリット
家族が逮捕された場合にしなければならないこと
家族が逮捕された場合、早期の身柄解放に向けた対応や被害者との示談交渉、釈放後の環境調整、不起訴処分に向けた検察官の説得など限られた時間の中でやるべきことがたくさんあります。
早期接見の重要性
そのためにまずは、弁護士が本人と接見し、事件に関する情報を聞き出すことが何より重要です。
また、逮捕された本人は一人で警察や検察からの取り調べを受けるなければならず、取り調べで供述したことはのちに裁判で不利な証拠になるおそれがあります。
取り調べで不用意なことを言ってしまうとのちに致命的な不利益を被るリスクもあります。したがって、弁護士が一刻も早く本人と接見し取調べへの対応について適切なアドバイスを与えることが肝要です。この意味でも、弁護士による早期の接見が極めて重要といえるでしょう。
接見後の対応
接見で事件の情報を聞き取った後は、検察官や裁判官を説得して勾留を回避したり、勾留された場合は不服申立て(準抗告)をして身柄の釈放に動くとともに、それと並行して被害者との示談交渉など不起訴処分獲得のための活動を進めて行く必要があります。
早期に弁護士に依頼するメリット
本人が逮捕されている事件ではこれらを一定の期限内に行わなければならないので、時間との勝負になります。逮捕されている事件ではスピードが命であり、少しの遅れが重大な不利益につながることもあります。
家族が逮捕された場合は、できるだけ早くに弁護士に依頼すべきでしょう。