撮影罪って何?盗撮で成立する罪と検挙されたときの対応策について弁護士が詳しく解説します

・撮影罪ってどういう場合に成立するの?

・盗撮の刑が重くなったって本当?

・盗撮で他に成立する可能性がある犯罪は?

・盗撮で警察に捕まった場合にすべきことは?

・盗撮で不起訴になるにはどうすればいい?

・前科を避けるためには何をすればいい?

盗撮では何罪が成立する?

盗撮とは広く一般には隠し撮りのことを指しますが、処罰の対象となりうる盗撮とは、他人の身体の性的な部位や下着などをこっそり撮影する行為のことです。

盗撮事案が発生する場所として一番多いのは、駅構内および電車内ですが、その他にもショッピングセンターコンビニスーパー路上オフィス(職場)公衆浴場トイレなどさまざまな場所があります。

その方法も典型的にはスマートフォンで女性のスカートの中を撮影するケースが多いですが、カメラを靴の中に仕込んで撮影するケースやトイレ等に小型カメラを設置して撮影するケース、パートナーとの性交渉を隠し撮りするケースなどさまざまです。

このような盗撮行為をしてしまった場合、どのような法律が適用され、どのような犯罪が成立するのでしょうか?

1 撮影罪(性的姿態等撮影罪)

最初に考えられるのは「撮影罪」です。

正式名称を「性的姿態等撮影罪」といい、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(以下では「性的姿態等撮影行為処罰法」といいます)という長ったらしい名前の法律の第2条に規定があります。

この法律は最近になって新設されたものであり、令和5年7月13日から施行が始まっています。

ちなみにですが、なぜ「盗撮罪」ではなく「撮影罪」と呼ばれているかというと、後で解説しますが、撮影罪では、単に隠し撮りをするケースのみならず、相手を脅したり困惑させたりして撮影するケース(つまり純粋に「盗撮」とは呼べないケース)も処罰の対象となっているからです

撮影罪ができたのはなぜか?

性的姿態等撮影行為処罰法ができるまで、盗撮事案では主に各都道府県の迷惑防止条例違反が適用されていました。

しかし、各都道府県で犯罪の成立要件や罰則の内容が不統一になることや、迷惑防止条例自体が市民生活の平穏という公共の利益を守るための条例であり、対象となる被害者の保護を直接の目的として作られたものでないこと、そのため市民生活の平穏を害さない一部の類型の盗撮行為が処罰の対象外とされたことなどが問題視されていました。

そこで、以上のような問題を解消すべく、法律によって盗撮行為に対する処罰規定を設けるよう求める声が大きくなっていたところ、そのような声に答えるために性的姿態等撮影行為処罰法が新設されたというわけです。

なお、従来の迷惑防止条例違反の場合、盗撮行為に対する法定刑は多くの都道府県で「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とされていましたが、撮影罪では「3年以下の拘禁系または300万円以下の罰金」とされており、法定刑自体が従来よりも重くなっています。

これは性犯罪に対する昨今の厳罰化傾向を表すものといえるでしょう。

撮影罪に関する規定の内容

さて、上述のとおり、撮影罪は性的姿態等撮影行為処罰法の第2条に規定されています。

以下に条文を引用しておきます。長くて分かりにくい条文ですが、あとでわかりやすく解説していきます。

(性的姿態等撮影)

第2条 

1項 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。

1号 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為

イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分

ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

2号 刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為

3号 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性 的姿態等を撮影する行為

4号 正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

2項 前項の罪の未遂は、罰する。

3項 前二項の規定は、刑法第百七十六条及び第百七十九条第一項の規定の適用を妨げない。

以上のとおり、性的姿態等撮影行為処罰法2条は1項から3項までで構成されており、どのような行為が処罰の対象となるのかを定めているのは1項です。

2項は未遂犯の処罰について定めた規定であり、3項は撮影罪が成立する場合でも、同時に不同意わいせつ罪や不同意性交罪が成立しうるという当たり前のことを注意的に定めた規定になっています。

当然、第2条のうちで一番重要なのは1項ですので、以下では1項の規定内容について解説していきたいと思います。

2条1項

上述のとおり、法2条は1項から3項までで構成されていますが、1項はさらに1号から4号までで構成されています。

つまり、1号から4号までに定める4つの行為類型が処罰の対象とされているということです。

1号

まず、1号ですが、これは①正当な理由なく、②ひそかに、③「対象性的姿態等」を撮影した場合に成立するとされています。

①の「正当な理由」とは、撮影行為を法的に正当化しうるような事情のことであり、法務省はその具体例として「医師が、救急搬送された意識不明の患者の上半身裸の姿を医療行為上のルールに従って撮影する場合」を挙げていますが、実際に「正当な理由」が認められることはほとんどないといってよいでしょう。

そもそも、上記の具体例のような場合であれば、正当業務行為(刑法35条)や緊急避難(刑法37条)として違法性が阻却されるはずですので、「正当な理由がなく」という要件を設ける必要があるのかは疑問が残るところです。

いずれにせよ、「正当な理由」が認められることは実際上ほとんどありませんので、あまりこの文言について気にする必要はないでしょう。

②の「ひそかに」とは、「被写体となっている人(被害者)に認識されないような方法で」という意味です。

注意が必要なのは、認識されないような方法で撮影されていれば足り、被写体となっている人が実際に撮影行為を認識しているか否かは関係がないということです。

したがって、被写体に気づかれないようにこっそりと撮影していたものの、実際には被写体が撮影行為に気づいていたという場合でも1号の撮影罪が成立しうるということになります。

③の「対象性的姿態等」とは、イ号とロ号に定められた「性的姿態等」のうち、被写体自らが性的な部位を露出したり性行為を行っている場合を除いたものです。

そして、イ号は人の「性的な部位」又は「性的な部位を直接または間接に覆っている下着」を撮影罪の対象として定めています。

このうち「性的な部位」は「性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部」とされています。

例えば、顔面や頭部、うなじ、ふくらはぎや二の腕、脇などはこれに含まれませんので、それらの部位をひそかに撮影しても撮影罪は成立しません。

太ももは場所によっては「臀でん部」に含まれる可能性があるでしょう。

次に「性的な部位を直接または間接に覆っている下着」ですが、性的な部位を直接覆っている下着(ブラジャー、パンティー)だけでなく、間接に覆っている下着も含まれるので、例えば、スカート内を盗撮したところアンダースコート(いわゆる見せパン)を着用していた場合なども撮影罪が成立することになるでしょう。

また、ロ号は、イ号に掲げるもの以外で、わいせつ行為や性交渉を撮影する行為について規定しています。

「イ号に掲げるもの以外で」というのは、要するに性的な部位や下着が写っていないような場合のことを指しています。

つまり、性的な部位や下着を映さずに性交渉の様子を盗撮した場合や、被写体が服を着たまま口淫している様子を盗撮した場合なども撮影罪が成立するということです。

2号

2号はいわゆる不同意型の撮影行為を処罰する規定です。

つまり、1号が被写体に認識されないような方法での撮影行為であるのに対して、2号は被写体に認識されるような方法であるものの、相手の同意に基づかず撮影する行為について定めた規定といえます。

2号では、「刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により」とされていますが、刑法第百七十六条第一項は、以下のとおり、不同意わいせつ罪について定めた規定です。

(不同意わいせつ) 

第176条 

1項 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。

 1号  暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。

 2号  心身の障害を生じさせること又はそれがあること。

 3号  アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。

 4号  睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。

5号  同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

6号  予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。

7号 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

8号 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

具体例としては、以下のような撮影行為が挙げられます。

・相手を脅迫して裸を撮影した場合(1号)

・相手が精神障害や酩酊状態、睡眠中で正常に判断できない状態で(またはそのような状態にして)裸を撮影した場合(2号、3号、4号)

・相手に不同意の意思を表明する時間を与えずに不意打ち的に性交渉中の様子を撮影した場合(5号)

・予想外の事態で相手がフリーズしている隙に下着などを撮影した場合(6号)

・DVなどによる無力感、恐怖心に乗じて相手の裸を撮影した場合(7号)

・上司・部下、教師・生徒などの立場ゆえの影響力を行使して相手の裸を撮影した場合(8号)

3号

3号は、相手を誤信(勘違い)させて(または相手の誤信に乗じて)性的姿態等を撮影する行為について定めた規定です。

つまり、2号が相手の同意に基づかずに撮影する行為であるのに対して、3号は相手の同意はあるもののその同意が錯誤(勘違い)に基づくものである場合についての規定です。

3号における「行為の性質が性的なものではないとの誤信させ」とは、例えば、治療のために必要であると偽って相手を裸にして撮影した場合、宗教儀式と称して性交渉の様子を撮影した場合などが考えられるところです。

他方、「特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ」とは、例えば、自分一人しか見ないなどと偽って性交渉の様子を撮影する場合などです。

4号

4号は、相手の同意があり、かつその同意について錯誤もない場合であっても、相手の年齢によって撮影罪が成立するとする規定です。

すなわち、13歳未満の者の性的姿態等を撮影した場合は、たとえ相手の同意があったとしても、撮影罪が成立します。

また、相手が13歳以上16歳未満の場合は、撮影者が相手より5つ以上年上であれば、相手の同意があっても撮影罪が成立するとされています。

2 児童ポルノ所持罪、製造罪

盗撮の対象者が児童(18歳未満の者)であった場合は、撮影罪の他に児童ポルノの所持罪、製造罪に該当する可能性があります。

児童ポルノとは

児童ポルノの定義は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護用に関する法律(以下「児童ポルノ法」といいます)の2条3項に規定があります。

第二条(定義)

1項 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。

2項 (省略)

3項 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方 式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。

1号 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態

2号 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

3号 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

これによると、まず「写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物」とされているので、スマートフォンやカメラで撮影した写真や動画がこれに当たることになり、単なる絵や漫画は児童ポルノには該当しません。

児童ポルノの実質的な中身は1号から3号に定められており、1号は児童の性交または性交類似行為(手淫、口淫など)を撮影するものです。

衣服を着用しているか否か、性的な部位が映っているか否かに関わらず、性交や性交類似行為を撮影した場合はこれに該当します。

2号は、他人が児童の性器等(性器、肛門または乳首)を触っている様子、または、児童が他人の性器等を触っている様子を撮影するものです。

3号は、児童の性的な部位を撮影するものです。「性的な部位」の意義は撮影罪と同じであり、「性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう」とされています。

「露出され又は強調されているもの」とされていることからもわかるように、必ずしも性的部位が露出している必要はありません

下着などで隠されていたとしても、撮影された画像や動画において性的な部位がことされに強調されているような場合はこれにあたります(スカートの中を盗撮した場合は、これに当たるでしょう)。

児童ポルノの所持、製造とは?

児童ポルノの定義は以上のとおりですが、どのような場合に児童ポルノの所持罪や製造罪が成立するのでしょうか?

条文は以下のとおりです。

(児童ポルノ所持、提供等)

第七条 

1項 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。

2項 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。

3項 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

4項 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

5項 前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

6項~8項      (省略)

1項(所持罪)

児童ポルノの所持罪は1項で定められています。

児童ポルノを撮影した写真の現物を所持している場合はもちろん、児童ポルノの画像や動画の電子データをPCやスマホ、USBなどの記録媒体に残している場合も所持罪が成立します。

なお「自己の性的好奇心を満たす目的で」で所持していた場合にしか犯罪は成立しません。したがって、例えば、記念撮影として自分の子供やその友達のプールでの様子を撮影したからといって、所持罪になるわけではありません。

法定刑は一年以下の懲役又は百万円以下の罰金とされています。

3項(提供目的製造罪)

これは、他人に児童ポルノの画像や動画を売却したり譲渡したりする目的で児童ポルノの撮影等する行為が当たります。

なお「製造」の厳密な意味合いについては、法的な争点となっているところですが(例えば「CGの作成は製造に当たるのか」など)、ここでは単に「撮影すること」という意味合いで捉えていただければ十分です。

したがって、動画を販売する目的で、相手が18歳未満であることを知りながら、スカートの中を盗撮したような場合はこれに当たります。

法定刑は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金です。

4項(児童に所定の性的「姿態をとらせ」て行う製造罪)

児童に対して、児童ポルノに該当するポーズなどをとらせて、撮影する行為がこれにあたります。

例えば、児童に対して裸になるように要求・指示し、その様子を撮影した場合などです。

児童に対し「病気を診るために必要だ」などと嘘を述べて裸にし、その様子を撮影した場合は、撮影罪(性的姿態等撮影行為処罰法2条1項3号)と同時に児童ポルノの製造罪が成立する可能性があるでしょう。

法定刑は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金です。

5項(盗撮類型の製造罪)

3項、4項以外で「ひそかに」児童ポルノの撮影をする行為がこれにあたります。

「ひそかに」の意義は、撮影罪と同様であり、対象者に知られないような方法、態様で撮影することです。

実際に対象者が気づいていたとしても、撮影の方法がそのようなものであれば「ひそかに」に該当します。

撮影罪と同時に成立する可能性があるのは、ほとんどがこの類型の製造罪といえるでしょう。

女子高生のスカートの中を盗撮したところ、その女子高生が16歳であった場合は、撮影罪と同時に児童ポルノの製造罪が成立する可能性があります。

法定刑は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金です。

3 軽犯罪法違反(窃視)

軽犯罪法という4条しかない法律に以下のような規定があります。

1条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

 1項~22項       (省略)

23項 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

 24項~34項      (省略)

これはいわゆる「のぞき行為」(正式には「窃視」といいます。)を処罰する規定ですが、23項にいう「のぞき見た」にはカメラなどを使用して撮影した場合も含まれると解されています。

したがって、風呂場などで盗撮行為をした場合は、撮影罪などと同時に軽犯罪法違反(窃視罪)も成立するということになります。

もっとも、軽犯罪法違反の罰則は極めて軽微であるため、盗撮行為により撮影罪と同時に窃視罪が成立する場合でも、窃視罪は撮影罪などに包含され、窃視罪という罪名で処罰されることはほぼないといえるでしょう。

4 迷惑防止条例違反

撮影罪の項目でも説明したとおり、性的姿態等撮影行為処罰法が施行されるまでは、盗撮行為は主に各都道府県の迷惑防止条例が適用されてきました。

迷惑防止条例は、文字通り、公共の場所での迷惑行為を禁止する規定であり、痴漢行為や盗撮行為も禁止の対象となっています。

例えば、愛知県の迷惑防止条例には、以下のような規定があります。

(卑わいな行為の禁止)

第2条の2 

1項 何人も、公共の場所又は公共の乗物(第三項に定めるものを除く。)において、正当 な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。

1号   (省略)

2号 衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。

3号 前号に掲げる行為をする目的で、写真機、ビデオカメラその他の機器(以下「写真機等」という。)を設置し、又は衣服等で覆われている人の身体若しくは下着に向けること。

4号   (省略)

2項 何人も、学校、事務所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用することができる場所又は乗物(公共の場所又は公共の乗物に該当するもの及び次項に定めるものを除く。)において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。

1号 衣服等で覆われている人の身体又は下着をのぞき見し、又は撮影すること。

2号 前号に掲げる行為をする目的で、写真機等を設置し、又は衣服等で覆われている人の身体若しくは下着に向けること。

3項 何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。

1号 人の姿態をのぞき見し、又は撮影すること。

2号 前号に掲げる行為をする目的で、写真機等を設置し、又は人の姿態に向けること。

(罰則)

第15条 

1項 第二条の二又は第二条の三第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

2項 常習として前項の違反行為をした者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

2条の2の1項から3項は、それぞれ場所によって区分されているものの、いずれも盗撮行為かまたは盗撮目的でのカメラの設置が処罰の対象とされています。

撮影罪が施行された令和5年7月13日以降の盗撮行為については、同罪が適用されることになりますが、それ以前の盗撮行為については、依然として迷惑防止条例違反が適用されることになるでしょう。

盗撮で警察に検挙された場合はどうすればいいか?

盗撮で検挙された場合、そのまま何もしなければ、起訴されて罰金や懲役などの処罰を受け、前科がついてしまう可能性が非常に高いといえます。

初犯の場合であれば、懲役になることはほとんどなく、通常は略式での罰金ですが、それでも前科がついてしまうことに変わりはありません。

起訴されて前科がついてしまうことを避けるためには、検察官が起訴する前に、被害者と示談をしておくことが非常に重要であり、盗撮事案の場合は、被害者と示談ができていれば極めて高い確率で不起訴処分となります。

他方、盗撮事案などの性犯罪では、通常、加害者と被害者が直接示談交渉をすることはできません。

そこで、盗撮で前科がついてしまうことを避けるためには、できるだけ早い段階で弁護士に依頼して被害者との示談交渉に臨むべきといえるでしょう。

なお、性犯罪の示談交渉は非常にセンシティブな対応が必要となり、刑事事件、特に性犯罪弁護について豊富なノウハウと経験を有する弁護士に依頼した方がよいといえます。

名古屋H&Y法律事務所では、性犯罪弁護について数百件の取り扱い経験を有し、示談成功率9割以上の弁護士が在籍しておりますので、盗撮で検挙されてお困りの際はお早めにご相談いただければと思います。

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