Author Archive
年末年始休業のお知らせ
いつも名古屋H&Y法律事務所をご利用いただきありがとうございます。
誠に勝手ながら、令和7年12月25日から令和8年1月5日までを年末年始休業とさせていただきます。
なお、ホームページからお申し込みいただきました法律相談につきましては、上記休業期間後に返信させていただきますので、ご了承下さいませ。
ご不便をお掛けしますが、ご了承くださいますよう、よろしくお願いいたします。


名古屋市・伏見駅から徒歩1分の好立地にある当事務所では、企業法務から離婚や相続、交通事故まで、日常のさまざまなお悩みに寄り添ったサポートを行っています。
岡崎市、豊田市、豊橋市など愛知県内全域はもちろん、三重県・岐阜県の広い地域で対応。
不貞慰謝料や相続、刑事事件は相談料無料。リモート相談にも可能。事前予約で夜間・休日も対応いたします。
わかりやすく丁寧な対応で、法律をもっと身近に感じていただけるよう心がけています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
夏季休業のお知らせ
いつも名古屋H&Y法律事務所をご利用いただき、誠にありがとうございます。
誠に勝手ながら、8月12日(火)から15日(金)まで夏季休業とさせていただきます。
なお、8月12日(火)、13日(水)につきましては、新規のお問合せは受け付けておりますが、14日(木)、15日(金)は新規のお問合せについても受付けを停止させていただきますので、ご了承くださいませ。
ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承のほどお願い申し上げます。


名古屋市・伏見駅から徒歩1分の好立地にある当事務所では、企業法務から離婚や相続、交通事故まで、日常のさまざまなお悩みに寄り添ったサポートを行っています。
岡崎市、豊田市、豊橋市など愛知県内全域はもちろん、三重県・岐阜県の広い地域で対応。
不貞慰謝料や相続、刑事事件は相談料無料。リモート相談にも可能。事前予約で夜間・休日も対応いたします。
わかりやすく丁寧な対応で、法律をもっと身近に感じていただけるよう心がけています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
年末年始休業のお知らせ
日頃より名古屋H&Y法律事務所をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
勝手ながら令和6年12月27日(金)から令和7年1月5日(日)までを年末年始の休業期間とさせていただきます。
最終営業日である令和6年12月26日(木)におきましては、電話の最終受付時間が13時30分までとなります。
なお、休業期間中にお問合せフォームやメールからお寄せいただいた新規のお問合せつきましては、令和7年1月6日(月)以降の対応となります。
ご不便をおかけしますが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。


名古屋市・伏見駅から徒歩1分の好立地にある当事務所では、企業法務から離婚や相続、交通事故まで、日常のさまざまなお悩みに寄り添ったサポートを行っています。
岡崎市、豊田市、豊橋市など愛知県内全域はもちろん、三重県・岐阜県の広い地域で対応。
不貞慰謝料や相続、刑事事件は相談料無料。リモート相談にも可能。事前予約で夜間・休日も対応いたします。
わかりやすく丁寧な対応で、法律をもっと身近に感じていただけるよう心がけています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
書類送検されるとどうなる?書類送検とは何か弁護士が簡単に解説します
ニュースでよく耳にする「書類送検」って何?
芸能人やスポーツ選手が「書類送検された」というニュースを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
ところが、「書類送検」の意味を正確に理解している人は案外少ないように思います。
「書類送検」とは何かというと、警察が捜査をした事件について、その書類や証拠を検察庁に送致することをいいます。
刑事事件では、まず警察が事件について捜査します。関係者から話を聞いたり、実況見分して証拠を集めたりといったことをするわけですね。
しかし、警察には事件を起訴するかどうか判断する権限がありません。
日本で起訴か不起訴かを判断する権限を持つのは検察だけです。
そこで、事件について捜査を終えた警察は、検察官に起訴か不起訴か判断してもらうために事件の書類や証拠を検察庁に送致しなければなりません(刑事訴訟法246条)。
この警察が検察に事件の書類や証拠を送ることを文字通り「書類送検」というわけです。
関連記事:刑事事件はどのように進んでいくのか?刑事事件の流れについて弁護士がわかりやすく解説します
逮捕されている場合は「書類送検」とは言わない
上述のとおり、「書類送検」とは、書類や証拠を検察庁に送致することを意味します。
もっというと、あくまで書類や証拠のみを送致するニュアンスを含んでいるのであり、被疑者が逮捕されていない在宅事件の場合にのみ使われる言葉です。
これに対して、被疑者が逮捕されている場合、警察は逮捕から48時間以内に証拠や書類と一緒に被疑者の身柄を検察庁に送致しなければならないとされています(刑事訴訟法203条1項)。
このように被疑者が逮捕されている事件(身柄事件)では、被疑者の身柄も一緒に検察庁に送られるため、「書類送検」とはいいません(では、その場合は何というのかというと、特に呼び名があるわけではなく、単に「送致」や「送検」ということが多いです)。
「書類送検=犯罪の疑いがある」ではない!
上述のとおり、書類送検とは、被疑者が逮捕されていない在宅事件について、事件の捜査を終えた警察がその書類や証拠を検察庁に送ることをいいます。
「書類送検された」と聞くと、「その人が実際に犯罪を行った疑いがあると警察が判断したから送検したんだ」というような印象を受ける人も多いかもしれませんが、実際はそうではありません。
というのも、刑事訴訟法では、警察は捜査をした事件については、原則として、全件を検察庁に送致しなければならないとされているからです(刑事訴訟法246条)。
これを全件送致主義といいます(ただし、全件送致主義の例外として、ごく軽微な万引き事件などについては、書類送検せずに警察限りで事件を終結させる処理がなされることがあり、これを微罪処分といいます。微罪処分はあくまで例外であって、すべての事件について検察庁に送致をするのが原則です)。
上述のとおり、警察には事件を起訴するかどうかを判断する権限がありません。
ですので、警察は、犯罪の疑いがあるか否かにかかわらず、すべての事件を検察庁に送致して、検察官の判断に委ねなければならないのです。
したがって、警察は、捜査した結果、犯罪の疑いが全くないと考えるような場合であっても、書類送検しなければならないのであって、裏をかえせば書類送検されたからといって、犯罪の疑いがあるということでは決してないということになるのです。
書類送検というのは、あくまで形式的な手続きを意味するに過ぎないのであって、犯罪の疑いがあるか否かとは全く無関係ということですね。
今後は「書類送検された」というニュースを目にしても、その人のことを色眼鏡で見ないことが大切です。
書類送検されても前科はつかない
書類送検されると前科がつくのでしょうか?
すでに説明してきたとおり、書類送検というのは、あくまで警察が事件に関する書類や証拠を検察庁に送致することであって、起訴にするか不起訴にするかを決めるのは送致を受けた検察です。
そして「前科」とは、起訴されて裁判で有罪判決を受けることなので、当然ながら、書類送検されただけで前科がつくということはありません。

名古屋市・伏見駅から徒歩1分の好立地にある当事務所では、企業法務から離婚や相続、交通事故まで、日常のさまざまなお悩みに寄り添ったサポートを行っています。
岡崎市、豊田市、豊橋市など愛知県内全域はもちろん、三重県・岐阜県の広い地域で対応。
不貞慰謝料や相続、刑事事件は相談料無料。リモート相談にも可能。事前予約で夜間・休日も対応いたします。
わかりやすく丁寧な対応で、法律をもっと身近に感じていただけるよう心がけています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
保釈が認められるのはどんな場合?―保釈制度について弁護士がわかりやすく解説します
・保釈ってなに?釈放とは違うの?
・保釈が認められるのはどういう場合?
・保釈で身柄を解放してもらうにはどうすればいい?
そもそも「保釈」とは?
保釈は「身柄事件」の「公判段階」においてのみ適用される制度
「保釈」とは、起訴された被告人が勾留によって身体を拘束されている場合に、一定の金銭(保釈保証金)を裁判所に預けることで、身体拘束から解放してもらう制度のことをいいます。
刑事事件は、通常、捜査段階→公判段階という流れで進んでいきます(刑事事件一般の流れについては「刑事事件はどのように進んでいくの?」というコラムで詳細に解説しておりますので、そちらもご参照ください)。
つまり、おおまかにいえば、①警察が事件を捜査をして、検察官が起訴or不起訴の判断をするまでの段階を捜査段階、②検察官が起訴した後、裁判所で行われる裁判手続きのことを公判段階といいます。
そして、捜査段階で犯罪の嫌疑を受けて捜査の対象となっている人のことを「被疑者」、公判段階で事件について審判の対象となっている人のことを「被告人」といいます(捜査段階=被疑者、公判段階=被告人ということです)。
上述のとおり、保釈は「起訴された被告人」について認められる制度なので、起訴後の公判段階においてのみ適用されます。したがって、捜査段階での保釈というのはありません。
また、保釈は身体拘束からの解放を目的とした制度なので、当然ですが、本人の身柄が拘束されている事件(=身柄事件)であることが前提となります(身柄事件に対して、本人の身柄が拘束されていない事件のことを「在宅事件」といいます)。
身柄事件も在宅事件も捜査段階と公判段階がありますが、保釈は身柄事件の公判段階においてのみ適用されうる制度であるということです。
保釈が必要になる場面とは?
以上を前提にもう少し詳しく説明すると、身柄事件においては、捜査段階で最長23日間身柄を拘束されることになります(身柄拘束されている刑事事件の流れについては「ご家族が逮捕された方へ」というコラムでも詳細に解説しておりますので、そちらもご参照ください)。
そして、この最長23日間の間に警察は事件について捜査を進め、最終的に検察官が起訴にするか不起訴にするかを判断します(繰り返しになりますが、この捜査段階での身体拘束について「保釈」を求めることはできません。捜査段階での身体拘束については、別の手続き(勾留準抗告や勾留取消請求等)によって身柄の解放を求めていくことになります)。
捜査終了後、検察官が不起訴にすると判断すれば、そこで事件は終了するのですぐに身柄が釈放されます。当然、この場合は保釈は不要です。
また、起訴の場合でも「略式起訴」といって、軽微な事件について書面審査だけで罰金に処する簡易的な手続きが選ばれた場合も、必ず罰金になるので身柄はすぐに釈放されます。この場合も保釈は不要です。
これに対して、不起訴でも略式起訴でもなく、正式起訴という手続きが選ばれた場合は、正式な刑事裁判手続きを行うことになるので、最終的に判決が出るまでの間、身体拘束(勾留)が続くことになってしまいます。
しかし、判決が出るまでの数か月(下手をすれば数年)もの間、身柄拘束が続くのは被告人にとって極めて負担が大きいといえます。
そこで、一定の金銭(保釈保証金)をいわば人質代わりに裁判所に収めることで、身柄を解放してもらうのが保釈という制度になります。
保釈保証金は、保釈の際に出される条件(保釈条件)を守っていれば、裁判が終わった時点で全額戻ってきます。
他方、逃亡や証拠隠滅を図るなどして保釈条件を破ってしまった場合は、保釈保証金の全部または一部が没収されます。そしてこの場合、保釈も取り消しとなって再び収監されることになってしまいます。
「保釈」と「釈放」はどう違う?
なお、「保釈」とよく混同される用語として「釈放」があります。
「釈放」とは、身体拘束から身柄を解放してもらうこと全般のことを意味しています。
保釈によらなくても、例えば、不起訴処分となって身柄が解放されることも「釈放」といいます。
これに対して、「保釈」は刑事訴訟法88条〜94条によって定められている上記のような制度(お金を納めて身柄を解放してもらう制度)のことをいうのであり、身体拘束からの解放全般を指す「釈放」とは意味が異なります。
保釈の重要性
保釈によって身体拘束からの解放を得ることは極めて重要です。
すでに説明したとおり、保釈はすでに起訴され、裁判を控えている人が身柄を解放してもらう制度です。
ですので、来たる裁判の期日に備えて弁護人と密に打ち合わせなどをしていかなければならない状況にあります。
しかし、身体拘束が続いている状態では、拘置所や留置場の面会室でしか打ち合わせをすることができず、これでは刑事裁判に向けて必ずしも十分な準備ができるとはいえません。
他方、保釈によって身柄拘束から解放された場合、もとの生活を送りながら裁判に対応することが可能となり、時間や場所の制限を受けず、十分に記録を検討しながら、弁護人と密に連絡をとりながら裁判に向けて準備を進めることができるようになります。
このように保釈制度は、刑事裁判に向けて充実した準備を進める前提として非常に重要な意味を持っているといえるでしょう。
保釈はどういう場合に認められる?
全ての事件において保釈が必ず認められるわけではありません。では、保釈はどのような場合に認められるのでしょうか?
保釈が認められるための条件を定めた規定としては、刑事訴訟法89条と90条があります。
89条は、いわゆる「権利保釈」について定めた規定であり、保釈の請求があった場合は、同条1号から6号までに定める事由(除外事由)がある場合を除いて、保釈を認めなければならないという規定です。
つまり、「保釈の請求があった場合は、原則として保釈を認めないといけないけど、1号〜6号までの事情に当てはまる場合は例外ね」ということです。条文は以下のとおりです(条文の内容は後で詳しく説明します)。
第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
これに対して、90条は、いわゆる「裁量保釈」について定めた規定であり、89条1号から6号に該当する事由があり、権利保釈が認められない場合であっても、裁判所が様々な事情を考慮して裁量によって保釈を認めることができるという規定です。条文は以下のとおりです。
第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
まとめると、保釈の可否判断は、①保釈請求があれば、原則として、保釈(=権利保釈)を認めないといけない→②ただし、例外的に89条1号〜6号に該当する事由(除外事由)がある場合は、権利保釈を認めない→③除外事由があって権利保釈が認められない場合でも、裁量保釈を認めることはできる、という3段構造になっているということです。
そこで、以下では権利保釈と裁量保釈についてみていきましょう。
権利保釈
上述のとおり、89条1号から6号に定める除外事由がない限り、裁判所は権利保釈を認めなければなりません。
したがって、権利保釈が認められるか否かは、89条1号から6号に定める除外事由に該当するか否かによって全てが決まります。
以下で除外事由について一つずつ見ていきましょう。
89条1号
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
これは、起訴された罪の法定刑に死刑もしくは無期刑、又は、短期1年以上の懲役、禁錮刑が含まれている場合のことです。
このような重罪事件については重い刑罰が科される可能性が高く、類型的に逃亡するおそれが高いと考えられるため、権利保釈の除外事由とされています。
例えば、殺人罪は、法定刑の中に死刑または無期刑が含まれているので、これに該当します。
また、強盗罪は、死刑や無期刑は定められていないものの、短期5年以上の有期懲役が法定刑となっているので、これに該当します。
したがって、殺人罪や強盗罪では権利保釈が認められることはありません。
89条2号
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
これは保釈決定時を基準として、それ以前に死刑や無期刑、長期10年を超える懲役、禁錮に当たる罪について有罪判決を受けたことがある場合のことを指します。
過去に一定以上の重大犯罪について有罪判決を受けたことがある場合、今回の裁判でも重い刑罰となることが予想されるところ、類型的に逃亡のおそれが高いと考えられるため、権利保釈の除外事由とされています。
「死刑や無期刑、長期10年を超える懲役、禁錮に当たる罪について」とされているので、実際に過去に受けた判決が死刑や無期刑、長期10年以上の懲役、禁錮である必要はありません。
例えば、過去に殺人罪について懲役8年の懲役刑を言い渡されたことがある場合でも、殺人罪は法定刑に死刑や無期刑が含まれた犯罪なので、89条2号に該当することになります。
なお、有罪の宣告を受けていれば足り、判決が確定していることは不要ですし、ここでいう有罪の宣告には、執行猶予が付されていた場合も含みますので注意が必要です。
89条3号
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
「常習として」とは、同種・同質の犯罪事実を繰り返し行なっていたことが認められる場合のことを指します。
これが権利保釈の除外事由とされているのは、1号、2号と同じ趣旨であり、重い刑が科される可能性が高いので、定型的に逃亡のおそれが高いと考えられるからです。
必ずしも起訴された事実だけに限らず、余罪として繰り返し行なっていたと認められる場合もこれに含まれます。
例えば、1件の窃盗(長期10年)で起訴された場合でも、起訴はされていない余罪として複数回に渡って窃盗を繰り返し行なっていたことが証拠上認められる場合は、89条3号に該当し、権利保釈は認められないことになります。
89条4号
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
現在、権利保釈を却下する理由として一番多いのがこの要件です。
罪証を隠滅するおそれがある否かは、犯罪事実の軽重、罪を認めているか否か、証拠の隠滅が客観的に可能か否か、可能であるとすればその証拠はどの程度重要なものであるか、適切な身柄引受人がいるか否か、などの事情によって判断されます。
なお、89条4号にいう「罪証」とは、物証や書証のみならず、人証も含みます。
例えば、証人予定者が被告人と面識のある人物である場合、被告人が容易に接触することができるため、罪証を隠滅するおそれがあると判断される可能性が高まるといえるでしょう。
89条5号
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
これは被害者や証人等に対する いわゆる「お礼参り」を防止するために設けられた規定です。
これに該当するか否かは、被告人の属性(反社会的勢力に所属していないか否か等)や過去の言動、被害者等との関係性などによって判断されます。
89条6号
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
氏名や住所が不明な場合は逃亡のおそれが類型的に高いと考えられるため、権利保釈の除外事由とされています。
「氏名又は住所」と定められているとおり、氏名と住所のいずれかが不明であれば、89条6号に当てはまります。
裁量保釈
権利保釈が認められない場合でも、裁判所は職権で裁量保釈を認めることができます。
実際、権利保釈の除外事由に該当する事件でも、裁量保釈で保釈される事案はたくさんあります。
裁量保釈は、逃亡や証拠隠滅の防止という勾留を継続することによるメリットと、健康上、経済上、社会生活条の不利益等勾留を継続することによるデメリットを比較衡量して判断されます。
健康上の不利益に関する事情としては、例えば、被告人が持病を抱えており、長期間の身体拘束が原因で健康が害されるおそれが高い場合などが考えられます。
経済上の不利益に関する事情としては、例えば、身体拘束の長期化により会社を解雇される危険が高いこと、収入が途絶えて家族の生活費が工面できなくなっていること、自営業者における顧客や取引先の消失等の事情が考えられるところです。
社会生活条の不利益に関する事情としては、例えば、学生である被告人が退学処分を受ける可能性があることなどが考えられます。
保釈の手続きはどうすればいい?
保釈を求めるためには、保釈請求書を裁判所に提出しなければなりません。
保釈請求書には、保釈を認めるべき理由を記載するとともにそれを裏付ける資料を添付します。また、保釈が認められた場合に生活の拠点となる場所(制限住居)も記載しなければなりません。
なお、保釈が認められるためには、親族等の適切な身柄引受人がいることが必須ですので、保釈請求書には必ず身柄引受書を添付しなければなりません。
裁判所は保釈請求書の内容や事件記録を検討し、検察官の意見も聴取した上で、保釈を認めるか否かを判断します。
裁判所が保釈を認めると判断した場合は、保釈決定が出されます。
保釈決定には、保釈中に守らなければならない条件(保釈条件)や制限住居、保釈保証金の額が定められます。
保釈決定で定められた保釈保証金を裁判所に納付すれば、晴れて釈放されることになります(通常は、保釈保証金を納付したその日のうちに釈放されます)。
なお、保釈決定で定められた保釈条件を破った場合は、保釈が取り消されて再度収監されるとともに、保釈保証金の全部又は一部が没収されてしまいます。
また、保釈期間中に制限住居が変更になる場合は、裁判所の許可を得なければなりませんので、保釈期間中の引越しや旅行の際には注意が必要です。
保釈保証金の額はどのように決まる?用意できない場合は?
保釈保証金の額は、起訴された犯罪事実の重大性や逃亡、証拠隠滅のおそれの程度、本人の経済力などによって判断されます。
要するに、本人にとって逃亡や証拠隠滅を抑止するのに十分な金額がいくらであるかという判断になりますので、カルロス・ゴーンやホリエモンなどの大富豪の場合は億単位の保釈保証金が設定されることもありますが、そうではない一般市民の場合は数百万円(概ね100万円〜300万円)になることがほとんどです。
なお、保釈保証金は必ずしも本人が用意する必要はなく、親族などに用意してもらうことなども勿論可能です。
保釈保証金を用意できない場合、一定の手数料はかかってしまいますが、日本保釈保証支援協会(https://www.hosyaku.gr.jp/)という機関が保釈保証金を立て替えてくれる制度がありますので、こちらの利用を検討すべきでしょう(なお、立て替えには審査があります)。
まとめ
以上、保釈制度について解説してきましたが、保釈を獲得するためには、保釈の要件や手続き等に関する専門的な知識を前提に、裁判官を説得するための技量と経験が非常に重要になってきます。
名古屋H&Y法律事務所では、豊富な知識と経験に基づき、あなたのご家族が保釈されるために尽力いたします。
ご家族の保釈獲得をご希望の場合は、ぜひお早めにご相談ください。

名古屋市・伏見駅から徒歩1分の好立地にある当事務所では、企業法務から離婚や相続、交通事故まで、日常のさまざまなお悩みに寄り添ったサポートを行っています。
岡崎市、豊田市、豊橋市など愛知県内全域はもちろん、三重県・岐阜県の広い地域で対応。
不貞慰謝料や相続、刑事事件は相談料無料。リモート相談にも可能。事前予約で夜間・休日も対応いたします。
わかりやすく丁寧な対応で、法律をもっと身近に感じていただけるよう心がけています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
慰謝料以外の損害は不倫相手に請求できる?―不倫によって発生する様々な損害が請求可能かどうか弁護士が解説します
配偶者が不倫をした場合、不倫相手に対して精神的苦痛についての慰謝料を請求することができます。
ですが、不倫に起因して発生する損害には様々なものがあり、必ずしも精神的苦痛に限られるわけではありません。
ここでは慰謝料以外の損害について、不倫相手に請求することができるのか、過去の裁判例などに基づいて解説していきたいと思います。
不倫慰謝料=精神的苦痛の損害賠償
「配偶者が不倫をした場合、不倫相手に対して慰謝料を請求できる」というのは法律に詳しい人でなくても、広く知られた知識だと思います。
では、その法律的な根拠は何でしょうか?
民法には以下のような規定があります。
第709条(不法行為) 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
これは「不法行為に基づく損害賠償責任」について定めた規定であり「意図的に(故意)あるいは不注意(過失)によって他人に損害を与えた場合、その損害を賠償しなさい」という内容の規定です。
例えば、交通事故によって怪我をした場合、治療費や休業損害、慰謝料など様々な損害を相手に請求できますが、その根拠となるはこの民法709条です。
不倫慰謝料を請求できるのも、同じくこの民法709条が根拠規定となっているのであり、不倫が不法行為として他人に損害を与える行為であるから、その損害の賠償を相手に請求できるということになるのです。
そして、民法709条における「損害」には、精神的損害とそれ以外の損害があり、特に精神的損害に関する賠償のことを「慰謝料」といいます。
したがって、「不倫慰謝料」とは、不倫によって被った精神的苦痛についての損害賠償ということになります(不倫慰謝料の相場などについては、不倫・不貞慰謝料の相場と証拠というコラムでも詳しく解説しておりますので、そちらもご参照ください)。
ですが、交通事故の場合に治療費や休業損害など精神的損害以外の様々な損害が発生するのと同じように、不倫の場合も、精神的損害以外の種々の損害が発生することがあります。
では、不倫の場合、交通事故と同じように、それら精神的損害以外の損害についても相手に賠償請求ができるのでしょうか?
以下では、この点について各損害ごとに見ていきたいと思います。
慰謝料以外の損害賠償の可否
探偵(興信所)の調査費用
配偶者の不倫が疑われる場合でも決定的な証拠がない場合は、探偵(興信所)に依頼して証拠を集めることも多いでしょう。
では、探偵(興信所)に依頼した場合の費用は「損害」として、相手に賠償請求ができるのでしょうか?
これについては、認める裁判例と一部を認める裁判例、否定する裁判例があります。
【認める裁判例】
・東京地裁平成28年11月30日
Xは、Aの行動からその不貞を疑ったが、Aがこれを否定したため、やむなく興信所に調査を依頼したものであり、その結果、Yがその相手方であることを突き止めることができたのであるから、そのためにXが興信所に支払った費用は、Yの不法行為と相当因果関係のある損害というべきである。
Xは、興信所にその費用として77万7600円を支払ったこと、調査は2日にわたって行われていることが認められ、同額は不相当に高額とまではいえないから、Yは、Xに対して、その全額を賠償すべきである。
【一部を認める裁判例】
・東京地裁平成29年4月27日
Xは、調査費用として304万4609円を要したと主張する。確かに、Xの提出する写真や精算書によれば、Xが本件調査を依頼し、YとAとの関係について写真撮影がされたことは認められるものの、本件調査を依頼した時点では、YとAはまだ再開しておらず、Yとの関係で平成27年1月からの調査が必要であったとはいえず、どのような調査が行われたのかの内容も不明であり、その支払いもXのみにおいて行ったのかは明らかではない。これらの事情からすると、本件不貞行為と相当因果関係のある調査費用を20万円と認めるのが相当である。
【否定する裁判例】
・東京地裁平成28年6月3日
調査費用については、これにより得られる調査報告書その他調査結果はいわば証拠収集の手段でしかなく、行為としての調査も弁護士費用のように法律上資格等による制限がなされているものではなく、代替的な性質のものであることに鑑みれば、Xにとって重要であったとしても、不法行為と相当因果関係のある損害とは認められない。
◉解説
以上のように、調査費用を損害として認める裁判例、認めない裁判例、その中間として一部を認める裁判例があります。
もっとも、実務上は、調査費用が全額認められることは少ないといえるでしょう。
配偶者が不倫を否定しており、他に有力な証拠もないなど、探偵に依頼する必要性が高かったといえる場合であれば、調査費用の一部が認められることもありますが、その場合でも実際に認められるのは実際にかかった費用の1割程度です。
治療費
不倫によって精神的苦痛を被り、それによってうつ病や適応障害等の精神的な疾病を発症した場合、その治療費等を請求することは可能でしょうか?
【認める裁判例】
・東京地裁平成28年2月1日
Xの心療内科への通院が、本件不貞を知ったことによることは明らかであるから、Yは、治療費及び交通費の合計3万6320円をXに対して賠償すべき義務を負うほか、Xが医師から長期の通院を要する旨伝えられていることを踏まえると、少なくとも、将来1年間分の治療費として6万2263円をXに対し支払うべき義務を負うと認められる。
【否定する裁判例】
・東京地裁平成28年11月8日
一方配偶者の不貞行為により他方配偶者が精神的衝撃を受けたとしても、それを原因としてうつ病に罹患するのが通常であるとはいえないから、治療費、通院交通費、休業損害、後遺障害による逸失利益、通院慰謝料及び後遺症慰謝料が、AとYとの不貞行為との間に相当因果関係がある損害とは認められない。
◉解説
治療費等についても肯定例と否定例がありますが、認められることは実務上極めて稀有といえます。
実際にうつ病などの精神疾病を発症したとしても、不貞との因果関係が必ずしも医学的に明らかでないこと、仮に因果関係があったとしても、不貞行為によって通常生じる損害とはいえないことがその理由です。
ただし、精神的な疾病を発症したことは、個別の損害として認められるのは難しくても、慰謝料の増額理由にはなり得るでしょう。
転居費用
自宅が不倫の現場になっていたなどして、転居を余儀なくされた場合、その転居費用を不倫相手に請求できるでしょうか?
これについて肯定した裁判例は見当たりません。
否定した裁判例は以下のとおりです。
【否定する裁判例】
・東京地裁平成28年8月30日
Xは、Y及びAの不貞行為によって引越しをせざるを得なかったとして、引越し費用30万7400円も相当因果関係ある損害として主張している。
しかしながら、Y及びAの不貞行為があったからといって必然的にXが転居しなければならなくなるものとはいえず、Y及びAの不貞行為とXの転居費用との間に相当因果関係があるとはいえない。
◉解説
不貞行為がきっかけで転居することになったとしても、必ずしも不貞行為と因果関係があるとはいえず、転居費用を不倫相手に請求することはできないといえるでしょう。
弁護士費用
不倫相手に慰謝料請求をするにあたり弁護士に依頼をした場合、その弁護士費用は相手に請求できるのでしょうか?
これについて実務の運用はすでに固まっており、訴訟をした場合、弁護士費用以外の損害の1割が不倫と因果関係のある損害として認められるということになります。
ですから、例えば、弁護士費用以外の損害額が200万円として認められた場合、弁護士費用は20万円までがこれと因果関係のある損害として認められ、最終的な認容額は220万円になるということです。
離婚慰謝料
不倫によって離婚をした場合、不倫自体によって発生した慰謝料(不倫自体慰謝料)の他に、離婚したことによって発生した慰謝料(離婚慰謝料)も請求できるのでしょうか?
これについては、最高裁の判例があります。
最高裁の判例は、下級審(地裁や高裁)との裁判例とは格が違い、ある論点について一度最高裁が判例を出した場合、それ以降、実務はその判断に従って運用されることになります。
さて、離婚慰謝料についての判例(最高裁平成31年2月19日)は「夫婦が離婚をするに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが、協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても、離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である」として、不貞と離婚との因果関係を否定して、離婚慰謝料についての賠償責任を否定しました。
もっとも、最高裁も全ての場合に離婚慰謝料が否定されるとは述べておらず「当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦の離婚をやむを得なきに至らしめた場合」は、離婚慰謝料を請求できると判示しています。
ただ、このような場合は極めて例外的な場合に限られるであろうと思われます。
このように、現在の実務では、離婚慰謝料を相手に請求することはできないとされています。もっとも、不貞を原因として夫婦が離婚した場合、個別の損害として賠償請求をすることはできないものの、離婚によって精神的苦痛が大きくなったとして不貞自体慰謝料は増額されることになります。

名古屋市・伏見駅から徒歩1分の好立地にある当事務所では、企業法務から離婚や相続、交通事故まで、日常のさまざまなお悩みに寄り添ったサポートを行っています。
岡崎市、豊田市、豊橋市など愛知県内全域はもちろん、三重県・岐阜県の広い地域で対応。
不貞慰謝料や相続、刑事事件は相談料無料。リモート相談にも可能。事前予約で夜間・休日も対応いたします。
わかりやすく丁寧な対応で、法律をもっと身近に感じていただけるよう心がけています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
不倫(不貞)の証拠は自分で集められる?探偵を使わずに不倫(不貞)の証拠を集める方法について弁護士が解説します
- 配偶者が不倫をしているかもしれないので証拠を集めたい
- 不倫の証拠は自分で集められる?
- 不倫の証拠を集めるためには探偵に依頼しないといけない?
- 探偵に依頼しないで証拠を集める方法は?
このコラムではそのようなお悩みをお持ちの方にために、不倫の証拠を集める方法についてわかりやすく解説していきたいと思います。

そもそも「不倫(不貞)」とは何か?
不倫(不貞)の証拠を集めるといっても、そもそも何が「不倫(不貞)」にあたるのかがわからなければ、適切に証拠を集めることができません。
実際、「不倫の証拠が取れた」としてご相談いただいたものの、不倫(不貞)の意味をきちんと理解できていなかったために、弁護士が見たら有用な証拠がほとんどなかったという事例はたくさんあります。
そこでまず、目標を見失わないために、「不倫(不貞)とは何か?」ついて解説しておきたいと思います。
なお、ここまで「不倫(不貞)」という記載の仕方をしていますが、「不倫」と「不貞」は同じ意味です。
一般には「不倫」という言葉が使われることが多いでしょうが、法律の世界では民法の条文(770条1項1号)で「不貞な行為」という文言が使われていることから、それに従って「不貞」ないし「不貞行為」と呼ぶのが通常です。
以下では皆様になじみのある「不倫」の方で統一したいと思います。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、「不倫」というのはズバリ「配偶者以外の異性との性交渉」のことをさします。
したがって「性交渉」がないと不倫とは呼べません。そして、ここでいう「性交渉」とは「性交または性交類似行為」のことを指します。
「性交」というのは、姦淫行為のことで、もっとくだけた言い方をするといわゆる「本番行為」のことです。
「性交類似行為」は、姦淫行為以外でそれに類似する行為であり具体的には、口淫、手淫などがそれに当たります。
なお、キスについては、一般にそれだけでは不倫にあたらないとされています。
このように、不倫とは肉体関係の存在が前提となるのであり、例えば二人で食事に行くとか、頻繁に電話やLINEをしているというだけでは不倫にはあたりません。
ですので、集めるべき証拠は性交渉があったことを示すものでなければならず、そこがゴールになるということを意識していただく必要があります。言い換えれば、単に親密な交際関係にあることを証明しても、性交渉の存在を証明できない限り不倫の証明にはならないということです(なお、単なる親密交際関係であっても、それ自体が不倫の存在を推認させる一つの事情になり得ます。ただ、それだけで不倫の証明をするというのは難しく、位置付けとしてはあくまで「補完証拠」といったところです)
不倫の証拠は自分で集められる?それとも探偵に依頼すべき?
さて、目標が定まったところで、以下では具体的な証拠収集の方法について解説していきたいと思います。
ここで、最初に考える必要があるのが探偵に依頼するか、自分で集めるかという問題です。
探偵に依頼するメリットは、確実な証拠写真が取れる可能性が高いということです。
探偵は不倫調査を生業としているので、当然、ノウハウを持っていますし、素人ではなかなか用意できない機材も揃えています。
ですので、それらを用いて確実な証拠写真を押さえてくれる可能性は高いといえます。
ですが、探偵に依頼するとかなりの費用(数十万円〜100万円程度)がかかってしまいます。また、探偵に依頼したからといって確実に証拠が取れるわけでもなく、費用をかけたものの空振りに終わったということもよくあります。
そこで、探偵には頼らず、自分で証拠収集に挑戦するという選択肢もあります。
自分で証拠を集めることができれば、探偵に依頼した場合に発生するような高額な費用は当然かかりません。
ですが、探偵のようなノウハウも機材もない中で、探偵が撮影するような確実な証拠写真を撮るのはなかなか難しいところでしょう。
また、自分で証拠収集に挑戦することで、相手に察知されてしまうリスクも高いところです。
ですので、探偵に依頼するか否かは上記のようなメリットとデメリットを考慮して判断していただくことになります。
おすすめとしては、まず最初に安価でかつ低リスクに価値の高い証拠を集める方法にトライしていただき、それがダメな場合は探偵に依頼することを検討するという順番で進めるのが良いのではないかと思います。
探偵に依頼せずとも簡単に有力な証拠が取れるのであれば、高い費用をかけて探偵に依頼する必要は最初からありません。なので、まずはそういった方法を試してみるべきです(具体的には、後述する、LINE等のチェックです)。
ですが、そういった方法を試みても証拠を集めることができない場合は、状況を打開するために探偵に依頼することも検討した方がよいでしょう。
とはいっても、「数十万円の費用かけてまで探偵に依頼する余裕はないよ」という方も多いのではないかと思います。
そこで、以下では、探偵を使わずに証拠を集めるという道を選択した場合、どのような方法があるかをご紹介したいと思います。
なお、不倫の証拠については不倫・不貞慰謝料の相場と証拠でも詳しく解説しておりますので、そちらもご参照ください。
探偵を使わない証拠収集の具体的な方法
LINE、メール、SNSのやり取り
LINEやメール、SNSで性交渉の存在を示唆するようなやり取りは非常に価値の高い証拠になります。
基本的にはそれのみで不貞の立証ができると考えていただいても大丈夫なほどです。
先ほど、まずは安価でかつ低リスクに価値の高い証拠を集める方法にトライすべきだと述べましたが、ここでいう安価でかつ低リスクに価値の高い証拠を集める方法というのは、まさにLINE等のチェックです。
夫婦であればスマホの暗証番号を共有していることも多いので、その場合は隙を見てチェックすることも可能でしょう。あるいは、スマホの画面を開いたまま寝落ちしている隙にチェックして不倫が発覚したというケースも時々あります。
暗証番号がわからない場合は、配偶者がアンロックする際の指の動きを見て推認するという方法もありますが、ご存知のとおり、スマホの暗証番号を複数回間違って入力するとロックがかかってしまうので要注意です。
また、スマホ自体の暗証番号がわからなくても、他のデバイス(PC、タブレット、スマートウォッチ等)と同期しており、そこからLINE等を見ることができたという事例もあるので、心当たりがある場合は試してみてはいかがでしょうか?
証拠となるやり取りを見つけた際は、(LINEの場合)テキストデータとして自分のスマホに転送したり、その画面自体を自分のスマホで撮影するなどして証拠化しておくとよいでしょう。
性交渉の場面や不倫相手とのやり取りを記録した音声、動画
性交渉の場面を記録した音声や動画は極めて有力な証拠になります。
例えば、自宅で不貞行為に及んでいるような場合であれば、自宅の発見されにくい場所に盗聴器などを仕込んでおくとよいでしょう(なお、性交渉の場面を撮影する行為は、盗撮として犯罪に該当してしまうおそれがあるので、控えておいた方が無難です)。
こちらが所有している車の中で行為に及んでいる場合も同様に車の中に盗聴器を仕込んでおくことは容易だと思われます。
なお、その場合はドライブレコーダーなどに映像、音声が残っている可能性もあるので、確認してみることをおすすめします。
ホテルや相手の家で行為に及んでいる場合は、配偶者のカバンや持ち物に小型の盗聴器を仕込んでおく方法が考えられます。最近の盗聴器は極めて小型化しているので発覚のリスクは小さくなっています。
それでもやはり盗聴器を仕込んだことが発覚してトラブルになるリスクは避けられませんので、その点は考慮に入れて検討すべきでしょう。
上記のような方法で音声や動画の記録を収集した結果、性交渉の場面そのものではなくとも、不倫相手との会話の内容を録音することができ、その中で性交渉の存在を前提とするやり取りがされているということもよくありますが、それも極めて有力な証拠となります。
また、ご丁寧に配偶者が不貞相手との性交渉の場面を撮影していることもままあります。
スマホをチェックすることが可能であれば、写真、動画フォルダも確認してみるべきでしょう。
位置情報
配偶者の位置情報も証拠の一つにはなります。
ですが、どうしても誤差がありますし、例えば「配偶者がラブホテルにいた」という位置情報だけだと、配偶者が不倫していたことは推認できても、相手が誰かわからないので、不倫相手に慰謝料請求する際の証拠としてはあまり価値がありません。
証拠収集の方法としては、配偶者のカバンなどにGPSを仕掛けることが考えられますが、発覚のリスクが避けられない上、上述のとおり、あまり証拠としての価値も高くないので、コスパ的にそこまでおすすめはできません。
利用する場面は、「配偶者が本当に不倫をしているか確かめたい」という場合や、後述する写真を押さえるための手段として用いる場合に限定されるでしょう。
なお、配偶者のスマホに位置情報アプリが入っている場合は、その履歴をチェックするという方法もあり得ます。
ラブホテルや相手の自宅の出入りの写真
これは基本的に探偵の領分であり、素人が確実な写真を押さえるというのは至難の業です。
また、トライした結果、相手に察知されて尻尾を出さなくなるというリスクもありえます。
それでもチャレンジしたい場合は、まず配偶者のカバンや自動車にGPSを設置してその動きを把握するところから始めるべきでしょう。
尾行するという方法もありますが、自分でやっても発覚のリスクは高いので、配偶者と面識のない友人などにお願いする必要がありますし、素人が備考をしても失尾してしまう可能性が高いでしょう。
ですので、おすすめはGPSの設置ですが、当然これも発覚のリスクは避けられません。
配偶者の位置情報から特定の場所での不倫が疑われる場合、そこで張り込みをします。
ラブホテルであれば、二人で入っている場面か出てくる場面のいずれかがあれば十分です。
他方、不倫相手の自宅などの場合、滞在していた時間や時間帯も重要なので、「入」と「出」の両方が必要です。ですから、入ってから出てくるまで張り込む必要があります。
さらに、夜間であれば当然周囲は暗いので、普通のカメラだと顔が識別できる写真を撮ることはできません。したがって、きちんと撮影するためには暗視カメラが必要でしょう。
また、当然、ある程度離れた場所から撮影する必要がありますが、その場合は望遠カメラも必要でしょう。
配偶者の自白
配偶者の自白は極めて価値の高い証拠になります。
証拠収集にトライした結果、何となくそれっぽい証拠は集まったものの、決定打まではないという場合、最後の手段として配偶者にこれまで集めた証拠を突きつけて自白を迫ります。
裁判で不倫が確実に立証できる程度の証拠がなくても、それなりに不倫があったことを推認させるような証拠があれば、配偶者が観念して自白してくることも多いです。
その場合、確実にその場面を録音しておくようにしてください。
また、配偶者に自筆の念書を書かせることができればなお良いでしょう。
まとめ
以上、探偵を使わずに証拠を集める方法をご紹介してきましたが、何がどの程度有力な証拠になるのかはなかなか法律に詳しくない人には判断が難しいところかと思います。
証拠収集の方法やそもそもどのような証拠を集めればよいのかお悩みの際は、プロである弁護士にご相談することをおすすめします。

名古屋市・伏見駅から徒歩1分の好立地にある当事務所では、企業法務から離婚や相続、交通事故まで、日常のさまざまなお悩みに寄り添ったサポートを行っています。
岡崎市、豊田市、豊橋市など愛知県内全域はもちろん、三重県・岐阜県の広い地域で対応。
不貞慰謝料や相続、刑事事件は相談料無料。リモート相談にも可能。事前予約で夜間・休日も対応いたします。
わかりやすく丁寧な対応で、法律をもっと身近に感じていただけるよう心がけています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
不貞慰謝料の示談書(合意書)はどうやって書けばいい?-示談書の書き方と文例について弁護士がわかりやすく解説します
配偶者が不貞(不倫)をしてしまい、その不貞相手と示談をする場合、口頭の合意だけでは合意された内容が形として残らないので、後々のトラブルを招いてしまうリスクがあります。
そこで、相手と合意をする場合、きちんと合意内容を示談書(合意書)という形で残しておく必要があります。
といっても、法律に詳しくない人が一から示談書を作ろうとしても、何をどのように書いてよいのかわからないのが通常でしょう。
ここでは、そのような方のために示談書の書き方について解説するとともに、サンプルとなる文例(雛形)をお示ししたいと思います。

そもそも示談とは?
「示談」というのは、慰謝料の金額などについて当事者間で取り決めをして、不貞慰謝料に関する争いを終結させることをいいます。
交通事故などでもよく「示談」という言葉を使いますが、不貞の場合も意味合いは同じです。
つまり、不貞をされた配偶者(被害者)と不貞をした相手方(加害者)が慰謝料の金額などについて話し合い、お互いに合意をして争いを終わらせることです。
一言でいえば「話し合いによる解決」ですね。
もちろん、話し合いでは合意が成立せず、解決しないこともあります。その場合は被害者側が訴訟を提起して裁判所に判断してもらうことになります。
なお「示談」と似た言葉に「和解」というものがありますが、どちらも意味は同じです。
示談書を作成するメリットは?
示談をする際は単なる口頭での合意だけではなく、示談書(合意書)を作成しておくべきです。
示談書を作成するメリットは以下のとおりです。
①慰謝料の支払いを求める際の証拠となる
当事者間で合意をして示談書を作成すれば、示談書に記載された期間内に相手方から慰謝料の支払いがなされることがほとんどです。
しかし、まれに相手方が約束を守らず、合意書どおりに慰謝料を支払ってこないこともあります。
特に慰謝料が分割払いになっている場合などは、途中で支払いが途切れるということも一定数あります。
そのような場合、合意書を作成しておけば、それが証拠となり、裁判などで相手に慰謝料を支払うよう請求することができます。
②慰謝料以外の約束も明確になり、相手に守らせることができる
示談をする際には慰謝料以外にも、配偶者との接触禁止やそれを破った場合の違約金などについて合意をすることが多いです。
ところが、それらが口頭だけの合意だと、形に残らないので、相手が約束を反故にするリスクが高くなります。
そこで、示談書という形で約束事を明確にしておくことで、相手がその約束を守ってくれることが期待できますし、万が一相手が約束を反故にした場合は、違約金請求などの際の証拠とすることができます。
③争いが蒸し返されない
示談書には「清算条項」という条項を必ず付けます。
清算条項とは、「これで争いは終了したので、お互いこれ以上の請求はできませんよ」ということを確認する規定です。
清算条項を設けておくことで、同じ紛争が蒸し返されることが防げます。
これはどちらかというと、慰謝料を請求されていた側にとってメリットのある規定といえるでしょう。
示談書に記載すべきこと
それでは、以下で示談書に何を書くべきかについて解説していきます。
適宜、文例をお示ししますので、参考にしていただければと思います。
冒頭部分
●(以下「甲」という。)と●(以下「乙」という。)は、本日、乙が甲の妻である●(以下「丙」という。)と不貞行為に及んだ件(以下「本件」という。)について、甲の乙に対する慰謝料請求事件(以下「本件」という。)について、以下のとおり合意した。
どの合意書でもそうですが、通常、合意書の冒頭にその合意書が何について書かれたものであるのかを簡潔に示す冒頭文を付けます。
謝罪条項
乙は、甲に対し、甲の妻である丙と不貞行為に及んだことを認め、深く謝罪する。
不倫の示談書では、通常、一番最初に不貞行為を行なった事実を認めて謝罪するといった内容の謝罪条項を設けることが多いです。
法的な効力は特にありませんが、不貞をした側が事実を認めて謝意を伝えるということで不貞をされた被害者の心情に配慮するという意味合いのある規定です。
慰謝料(解決金)の金額に関する条項
乙は、甲に対し、本件の慰謝料(解決金)として、金●万円の支払義務があることを認める。
慰謝料の金額は示談書の中核といえるでしょう。
この条項では慰謝料の金額を明示するとともに、相手方においてその支払い義務があることを確認する旨記載します。
慰謝料の支払いに関する条項
乙は、甲に対し、前項の金員を令和●年●月●日限り、甲が指定する次の口座に振り込む方法によって支払う。振込手数料は乙の負担とする。
●銀行●支店 普通 ●名義(口座番号●)
慰謝料が一括支払いの場合は上記のような内容で足りますが、分割払いの場合は少し修正が必要です。以下に一例を示しておきます。
乙は、甲に対し、以下のとおり分割して、甲が指定する次の口座に振り込む方法によって支払う。振込手数料は乙の負担とする。
●銀行●支店 普通 ●名義(口座番号●)
⑴ 令和●年●月限り金●万円
⑵ 令和●年●月から令和●年●月まで、毎月末日限り金●万円ずつ
期限の利益喪失と遅延損害金に関する条項(分割払いの場合)
乙が前項の分割金の支払いを2回以上怠り、その額が●万円に達した場合、当然に期限の利益を喪失し、乙は、甲に対し、第●項の金員から既払額を控除した残金及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日から支払済まで年●%の遅延損害金を直ちに支払う。
慰謝料が分割払いの場合、分割金の支払いの支払いが万が一滞った場合の規定を設けておくことが多いです(そうすることで不払いを避ける効果も期待できます)。
具体的には「不払いがあった場合は残金を一括で払いなさい」という条項(期限の利益喪失条項)と「遅延損害金も併せて支払なさい」という条項(遅延損害金条項)を盛り込みます。
なお、上記の文例中「第●項の金員」となっている部分は、慰謝料(解決金)の金額に関する条項のことです。
求償権の放棄に関する条項
乙は、前項の給付をしたことを原因として丙に対して求償しない。
不貞は不貞相手と不貞配偶者の二人で行う不法行為ですから、当然、二人とも慰謝料を支払う義務を負います。
ですから、どちらか一方が一人で慰謝料の全額を支払った場合、もう一方に対して自分が支払った分のうちの一定割合(多くの場合は半分)を返してもらうよう請求できます。
これを求償権といいます(求償権については不倫慰謝料の求償権とはというコラムで詳細に解説しておりますので、そちらをご参照ください。)。
この求償権が残ったままだと、後日の争いを招いてしまうおそれもあるので、3者間の権利関係を一括で清算するために、不貞相手が不貞配偶者への求償権を放棄する旨合意することがあります。
その場合は、上記の文例のような規定を設けておきます。
接触禁止と違約金条項
乙は、甲に対し、本示談書締結日以降、面会、電話、メール、LINE、SNSその他方法の如何を問わず、丙との連絡、接触を試みないことを約束する。
前項の規定に違反した場合、乙は、甲に対し、違約金として違反行為1回につき●万円支払う。
不貞の示談書には不貞相手と不貞配偶者が二度と接触しないよう、接触禁止に関する文言を入れることもよくあります。
また、その約束が守られることを担保するために、約束を破った場合の違約金に関する条項を入れることもあります。
口外禁止条項
甲及び乙は、本示談書締結日以降、口頭、書面、電話、インターネットへの投稿その他方法の如何を問わず、本件に関する事実関係を第三者にみだりに公開、伝達しないことを約束する。
不貞に関する事実を口外しないことがお互いの利益にもなるとして、口外禁止条項を盛り込むことも実際は多いです。
清算条項
甲及び乙は、本合意書に定めるもののほか、本件に関し何らの債権債務のないことを相互に確認する。
先程も少し説明したとおり、示談書には争いが終了し、お互いに権利義務がないことを確認するための清算条項を設けます。
清算条項は、紛争の解決を担保するために必ず示談書に盛り込みます。

名古屋市・伏見駅から徒歩1分の好立地にある当事務所では、企業法務から離婚や相続、交通事故まで、日常のさまざまなお悩みに寄り添ったサポートを行っています。
岡崎市、豊田市、豊橋市など愛知県内全域はもちろん、三重県・岐阜県の広い地域で対応。
不貞慰謝料や相続、刑事事件は相談料無料。リモート相談にも可能。事前予約で夜間・休日も対応いたします。
わかりやすく丁寧な対応で、法律をもっと身近に感じていただけるよう心がけています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
ベンナビ刑事事件に弊所が掲載されました
当事務所所属の弁護士藪内博之が株式会社アシロが運営する弁護士ポータルサイト「ベンナビ」に掲載中です。
▼掲載中ページ

名古屋市・伏見駅から徒歩1分の好立地にある当事務所では、企業法務から離婚や相続、交通事故まで、日常のさまざまなお悩みに寄り添ったサポートを行っています。
岡崎市、豊田市、豊橋市など愛知県内全域はもちろん、三重県・岐阜県の広い地域で対応。
不貞慰謝料や相続、刑事事件は相談料無料。リモート相談にも可能。事前予約で夜間・休日も対応いたします。
わかりやすく丁寧な対応で、法律をもっと身近に感じていただけるよう心がけています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
不動産を相続した場合の登記ってどうすればいいの?―相続登記について弁護士がわかりやすく解説します
そもそも「登記」って何?
不動産の「登記」とは、不動産の状況や権利関係を公に示すために、公的な帳簿である不動産登記簿にそれらの情報を記録し、公開する制度のことです。
よく不動産の「名義」という言葉をお聞きになることがあるかと思いますが、そこでいう「名義」とはこの登記の名義のことを指しています。
不動産登記簿は法務局で調整、管理されており、全国の不動産に関する情報を誰でも見ることが可能です。
登記がなぜ必要か?
なぜ不動産を登記する必要があるかというと、登記をしておかないと不動産に対する権利を第三者に対抗することができないからです。
どういうことかというと、例えばAさんがBさんから甲不動産を購入したとします。しかし、Aさんは甲不動産の所有権取得について登記をしていませんでした。
そうしたところ、Bさんが別のCさんに甲不動産を売ってしまい(二重売買)、Cさんは甲不動産の所有権取得を登記しました。
この場合、Aさんは最初に甲不動産を購入し、Bさんに購入代金を支払っているにもかかわらず、甲不動産の所有権を取得できず、甲不動産はCさんのものとなってしまうのです。
このように不動産に対する権利を保全するためには登記をしなければならず、これをしておかないと、知らぬ間に自分の権利を失ってしまうおそれがあるのです。
そして、これは遺産分割によって不動産を取得した場合も同様です。
後述するように昨今になって相続登記は義務化されていますが、それは別にしても不動産を相続によって取得した場合は必ず登記をするようにしましょう。
相続登記はどうすればいいの?
不動産登記は、登記申請書に必要書類を添付して法務局に提出することで行います。
もっとも、相続登記は、①遺産分割による相続登記、②法定相続分による共同相続登記、③共同相続登記後の遺産分割に基づく登記、④(相続人への)遺贈による登記などのパターンが考えられ、そのいずれであるかよって申請書の記載事項や必要書類などが異なります。
以下でそれぞれのパターンごとに解説していきたいと思います。
①遺産分割による相続登記
・申請人
通常、相続登記は登記権利者(権利を取得した人)と登記義務者(権利を譲渡した人)の共同で申請しなければなりません。
例えば、不動産の売買だと、売主と買主が共同で申請する必要があります。
しかし、遺産分割による相続登記の場合は、不動産を取得した相続人が単独で所有権移転登記を申請することができます(不動産登記法63条2項)。
・日付及び登記原因
登記申請書には登記原因(登記をする理由となった法的な原因)とその日付を記載しなければなりません。
遺産分割によって不動産を取得した場合、相続開始時に遡って不動産を取得するとみなされるため(民法909条)、申請書に記載する登記原因日付は相続開始日になります。
また、登記原因は「相続」です。
・登録免許税
固定資産税評価額の0.4%
・管轄法務局
不動産の所在地を管轄する法務局に申請書を提出しなければなりません。
・添付書類
ⅰ 登記原因証明情報
不動産登記の申請をする際は、登記原因の存在を証明する資料を添付資料として提出しなければなりません。
遺産分割による相続登記の場合は、被相続人との相続関係を示すために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等と相続人の現在の戸籍謄本が必要になります。
なお、法務局で承認を受けた法定相続情報一覧図を戸籍一式に代えることも可能です。
以上に加えて、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑登録証明書も登記原因証明情報として提出する必要があります。
なお、調停や審判による分割の場合は、調停調書や審判書を提出しなければなりませんが、この場合は、戸籍一式や相続人の印鑑登録証明書は基本的に不要となります。
ⅱ 住所証明書
不動産取得者である相続人の住民票を提出します。
ⅲ 委任状
司法書士等に登記申請を委任した場合は、委任状を添付しなければなりません。
ⅳ その他
その他、不動産の固定資産税評価額がわかる資料と被相続人の本籍地の記載のある住民票の除票を添付するのが登記実務となっています。
前者は登録免許税の計算をするため、後者は被相続人と登記名義人の同一性を確認するために必要であるといわれています。
②法定相続分による共同相続登記
・申請人
被相続人の死亡により相続は開始したものの遺産分割はまだ成立していないという段階において、不動産を含む遺産は相続人たちが法定相続分に応じて共有していることになります。
この共有状態について登記するのが「法定相続分による共同相続登記」です。
この登記は各相続人が単独で申請することが可能です。
・日付及び登記原因
登記原因の日付は相続開始日、登記原因は「相続」となります。
・添付書類、登録免許税、管轄法務局
添付資料は①で挙げたものから遺産分割協議書(または調停調書、審判書)と印鑑登録証明書を除いたものです。
登録免許税、管轄法務局は①と同じです。
③共同相続登記後の遺産分割に基づく登記
・意義
②の登記をした後で遺産分割が成立したことによって不動産を取得した場合の登記のことを指します。
・申請人
従来、不動産を取得した相続人と他の相続人が共同で「持分全部移転登記」を申請する必要があるとされていましたが、法改正により令和5年4月1日からは単独での「所有権更正登記」が可能になりました。
したがって、同日以降は、不動産を取得した相続人が単独で登記申請をすることができます。
・日付及び登記原因
登記原因の日付は遺産分割の成立日、登記原因は「遺産分割」となります。
・添付資料
ⅰ 登記原因証明情報
遺産分割協議書と相続人全員の印鑑登録証明書が必要になります。
なお、調停や審判による分割の場合は、調停調書、審判書を提出しますが、その際は印鑑登録証明書の提出は不要です。
ⅱ 住所証明書
申請者の住民票を提出します。
ⅲ 委任状
司法書士等に登記申請を依頼する場合は、委任状が必要です。
・登録免許税
不動産の個数×1000円
・管轄法務局
管轄の法務局は①、②と同じで不動産の所在地を管轄する法務局です。
④(相続人への)遺贈による登記
・申請者
従来、遺贈の場合については、受遺者と他の相続人との共同申請が必要とされていましたが、法改正により、令和5年4月1日以降は、相続人への登記の場合は受遺者による単独登記が可能になりました。
・日付及び登記原因
登記原因の日付は遺言者が死亡した日です。また、登記原因は「遺贈」となります。
・添付資料
ⅰ 登記原因証明情報
まず、遺言書が必要になります。
公正証書遺言や遺言書保管制度によって法務局で保管されていた遺言書を除いて、家庭裁判所での検認を経ているものでなければなりません。
また、死亡の事実の記載のある遺言者の戸籍謄本等及び受遺者の戸籍謄本等も登記原因証明情報として必要になります。
ⅱ住所証明書
受遺者の住民票の写しを提出します。
ⅲ 委任状
司法書士等に登記申請を依頼する場合は、委任状が必要です。
ⅳ その他
その他、不動産の固定資産税評価額がわかる資料と被相続人の本籍地の記載のある住民票の除票を添付するのが登記実務となっています。
不動産登記の義務化
令和6年4月1日から不動産登記の義務化制度がスタートしました。
これにより、相続によって不動産を取得した人は、相続開始があったことを知り、かつ、不動産を取得したことを知った日から3年以内に所有権移転登記の申請をしなければならなくなりました。
正当な理由がないのに登記を怠った場合は10万円以下の過料に処せられます。
なお、遺産分割協議がまとまらないなどの理由で登記申請ができない場合は、登記名義人について相続が開始した旨と自身がその相続人である旨を法務局に申し出ることによって、登記申請の義務を履行したものと扱われます(相続人申告登記制度)。
その後、遺産分割協議が成立した場合は、成立の日から3年以内に所有権移転登記を申請しなければなりません。
司法書士との連携態勢
不動産登記は司法書士の守備範囲であり、弁護士が登記手続きについて隅々まで知識を有しているわけではありません。
もっとも、遺産の中に不動産が含まれている場合、遺産分割や遺言書の作成をするにあたっては、常にその後の登記手続きのことも視野に入れておく必要があります。
そこで、登記のことも踏まえながら遺産分割や遺言書の作成を適切に行うためには、弁護士と司法書士の協力関係が必須です。
名古屋H&Y法律事務所では登記の専門家である司法書士をご紹介させていただくとともに、司法書士との密な連携体制に基づくリーガルサービスを提供させていただきます。
遺産相続や遺言書の作成のことでお困りの際はぜひお気軽にお声がけください。

名古屋市・伏見駅から徒歩1分の好立地にある当事務所では、企業法務から離婚や相続、交通事故まで、日常のさまざまなお悩みに寄り添ったサポートを行っています。
岡崎市、豊田市、豊橋市など愛知県内全域はもちろん、三重県・岐阜県の広い地域で対応。
不貞慰謝料や相続、刑事事件は相談料無料。リモート相談にも可能。事前予約で夜間・休日も対応いたします。
わかりやすく丁寧な対応で、法律をもっと身近に感じていただけるよう心がけています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
