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慰謝料以外の損害は不倫相手に請求できる?―不倫によって発生する様々な損害が請求可能かどうか弁護士が解説します
配偶者が不倫をした場合、不倫相手に対して精神的苦痛についての慰謝料を請求することができます。
ですが、不倫に起因して発生する損害には様々なものがあり、必ずしも精神的苦痛に限られるわけではありません。
ここでは慰謝料以外の損害について、不倫相手に請求することができるのか、過去の裁判例などに基づいて解説していきたいと思います。
不倫慰謝料=精神的苦痛の損害賠償
「配偶者が不倫をした場合、不倫相手に対して慰謝料を請求できる」というのは法律に詳しい人でなくても、広く知られた知識だと思います。
では、その法律的な根拠は何でしょうか?
民法には以下のような規定があります。
第709条(不法行為) 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
これは「不法行為に基づく損害賠償責任」について定めた規定であり「意図的に(故意)あるいは不注意(過失)によって他人に損害を与えた場合、その損害を賠償しなさい」という内容の規定です。
例えば、交通事故によって怪我をした場合、治療費や休業損害、慰謝料など様々な損害を相手に請求できますが、その根拠となるはこの民法709条です。
不倫慰謝料を請求できるのも、同じくこの民法709条が根拠規定となっているのであり、不倫が不法行為として他人に損害を与える行為であるから、その損害の賠償を相手に請求できるということになるのです。
そして、民法709条における「損害」には、精神的損害とそれ以外の損害があり、特に精神的損害に関する賠償のことを「慰謝料」といいます。
したがって、「不倫慰謝料」とは、不倫によって被った精神的苦痛についての損害賠償ということになります(不倫慰謝料の相場などについては、不倫・不貞慰謝料の相場と証拠というコラムでも詳しく解説しておりますので、そちらもご参照ください)。
ですが、交通事故の場合に治療費や休業損害など精神的損害以外の様々な損害が発生するのと同じように、不倫の場合も、精神的損害以外の種々の損害が発生することがあります。
では、不倫の場合、交通事故と同じように、それら精神的損害以外の損害についても相手に賠償請求ができるのでしょうか?
以下では、この点について各損害ごとに見ていきたいと思います。
慰謝料以外の損害賠償の可否
探偵(興信所)の調査費用
配偶者の不倫が疑われる場合でも決定的な証拠がない場合は、探偵(興信所)に依頼して証拠を集めることも多いでしょう。
では、探偵(興信所)に依頼した場合の費用は「損害」として、相手に賠償請求ができるのでしょうか?
これについては、認める裁判例と一部を認める裁判例、否定する裁判例があります。
【認める裁判例】
・東京地裁平成28年11月30日
Xは、Aの行動からその不貞を疑ったが、Aがこれを否定したため、やむなく興信所に調査を依頼したものであり、その結果、Yがその相手方であることを突き止めることができたのであるから、そのためにXが興信所に支払った費用は、Yの不法行為と相当因果関係のある損害というべきである。
Xは、興信所にその費用として77万7600円を支払ったこと、調査は2日にわたって行われていることが認められ、同額は不相当に高額とまではいえないから、Yは、Xに対して、その全額を賠償すべきである。
【一部を認める裁判例】
・東京地裁平成29年4月27日
Xは、調査費用として304万4609円を要したと主張する。確かに、Xの提出する写真や精算書によれば、Xが本件調査を依頼し、YとAとの関係について写真撮影がされたことは認められるものの、本件調査を依頼した時点では、YとAはまだ再開しておらず、Yとの関係で平成27年1月からの調査が必要であったとはいえず、どのような調査が行われたのかの内容も不明であり、その支払いもXのみにおいて行ったのかは明らかではない。これらの事情からすると、本件不貞行為と相当因果関係のある調査費用を20万円と認めるのが相当である。
【否定する裁判例】
・東京地裁平成28年6月3日
調査費用については、これにより得られる調査報告書その他調査結果はいわば証拠収集の手段でしかなく、行為としての調査も弁護士費用のように法律上資格等による制限がなされているものではなく、代替的な性質のものであることに鑑みれば、Xにとって重要であったとしても、不法行為と相当因果関係のある損害とは認められない。
◉解説
以上のように、調査費用を損害として認める裁判例、認めない裁判例、その中間として一部を認める裁判例があります。
もっとも、実務上は、調査費用が全額認められることは少ないといえるでしょう。
配偶者が不倫を否定しており、他に有力な証拠もないなど、探偵に依頼する必要性が高かったといえる場合であれば、調査費用の一部が認められることもありますが、その場合でも実際に認められるのは実際にかかった費用の1割程度です。
治療費
不倫によって精神的苦痛を被り、それによってうつ病や適応障害等の精神的な疾病を発症した場合、その治療費等を請求することは可能でしょうか?
【認める裁判例】
・東京地裁平成28年2月1日
Xの心療内科への通院が、本件不貞を知ったことによることは明らかであるから、Yは、治療費及び交通費の合計3万6320円をXに対して賠償すべき義務を負うほか、Xが医師から長期の通院を要する旨伝えられていることを踏まえると、少なくとも、将来1年間分の治療費として6万2263円をXに対し支払うべき義務を負うと認められる。
【否定する裁判例】
・東京地裁平成28年11月8日
一方配偶者の不貞行為により他方配偶者が精神的衝撃を受けたとしても、それを原因としてうつ病に罹患するのが通常であるとはいえないから、治療費、通院交通費、休業損害、後遺障害による逸失利益、通院慰謝料及び後遺症慰謝料が、AとYとの不貞行為との間に相当因果関係がある損害とは認められない。
◉解説
治療費等についても肯定例と否定例がありますが、認められることは実務上極めて稀有といえます。
実際にうつ病などの精神疾病を発症したとしても、不貞との因果関係が必ずしも医学的に明らかでないこと、仮に因果関係があったとしても、不貞行為によって通常生じる損害とはいえないことがその理由です。
ただし、精神的な疾病を発症したことは、個別の損害として認められるのは難しくても、慰謝料の増額理由にはなり得るでしょう。
転居費用
自宅が不倫の現場になっていたなどして、転居を余儀なくされた場合、その転居費用を不倫相手に請求できるでしょうか?
これについて肯定した裁判例は見当たりません。
否定した裁判例は以下のとおりです。
【否定する裁判例】
・東京地裁平成28年8月30日
Xは、Y及びAの不貞行為によって引越しをせざるを得なかったとして、引越し費用30万7400円も相当因果関係ある損害として主張している。
しかしながら、Y及びAの不貞行為があったからといって必然的にXが転居しなければならなくなるものとはいえず、Y及びAの不貞行為とXの転居費用との間に相当因果関係があるとはいえない。
◉解説
不貞行為がきっかけで転居することになったとしても、必ずしも不貞行為と因果関係があるとはいえず、転居費用を不倫相手に請求することはできないといえるでしょう。
弁護士費用
不倫相手に慰謝料請求をするにあたり弁護士に依頼をした場合、その弁護士費用は相手に請求できるのでしょうか?
これについて実務の運用はすでに固まっており、訴訟をした場合、弁護士費用以外の損害の1割が不倫と因果関係のある損害として認められるということになります。
ですから、例えば、弁護士費用以外の損害額が200万円として認められた場合、弁護士費用は20万円までがこれと因果関係のある損害として認められ、最終的な認容額は220万円になるということです。
離婚慰謝料
不倫によって離婚をした場合、不倫自体によって発生した慰謝料(不倫自体慰謝料)の他に、離婚したことによって発生した慰謝料(離婚慰謝料)も請求できるのでしょうか?
これについては、最高裁の判例があります。
最高裁の判例は、下級審(地裁や高裁)との裁判例とは格が違い、ある論点について一度最高裁が判例を出した場合、それ以降、実務はその判断に従って運用されることになります。
さて、離婚慰謝料についての判例(最高裁平成31年2月19日)は「夫婦が離婚をするに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが、協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても、離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である」として、不貞と離婚との因果関係を否定して、離婚慰謝料についての賠償責任を否定しました。
もっとも、最高裁も全ての場合に離婚慰謝料が否定されるとは述べておらず「当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦の離婚をやむを得なきに至らしめた場合」は、離婚慰謝料を請求できると判示しています。
ただ、このような場合は極めて例外的な場合に限られるであろうと思われます。
このように、現在の実務では、離婚慰謝料を相手に請求することはできないとされています。もっとも、不貞を原因として夫婦が離婚した場合、個別の損害として賠償請求をすることはできないものの、離婚によって精神的苦痛が大きくなったとして不貞自体慰謝料は増額されることになります。
不倫(不貞)の証拠は自分で集められる?探偵を使わずに不倫(不貞)の証拠を集める方法について弁護士が解説します
- 配偶者が不倫をしているかもしれないので証拠を集めたい
- 不倫の証拠は自分で集められる?
- 不倫の証拠を集めるためには探偵に依頼しないといけない?
- 探偵に依頼しないで証拠を集める方法は?
このコラムではそのようなお悩みをお持ちの方にために、不倫の証拠を集める方法についてわかりやすく解説していきたいと思います。
そもそも「不倫(不貞)」とは何か?
不倫(不貞)の証拠を集めるといっても、そもそも何が「不倫(不貞)」にあたるのかがわからなければ、適切に証拠を集めることができません。
実際、「不倫の証拠が取れた」としてご相談いただいたものの、不倫(不貞)の意味をきちんと理解できていなかったために、弁護士が見たら有用な証拠がほとんどなかったという事例はたくさんあります。
そこでまず、目標を見失わないために、「不倫(不貞)とは何か?」ついて解説しておきたいと思います。
なお、ここまで「不倫(不貞)」という記載の仕方をしていますが、「不倫」と「不貞」は同じ意味です。
一般には「不倫」という言葉が使われることが多いでしょうが、法律の世界では民法の条文(770条1項1号)で「不貞な行為」という文言が使われていることから、それに従って「不貞」ないし「不貞行為」と呼ぶのが通常です。
以下では皆様になじみのある「不倫」の方で統一したいと思います。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、「不倫」というのはズバリ「配偶者以外の異性との性交渉」のことをさします。
したがって「性交渉」がないと不倫とは呼べません。そして、ここでいう「性交渉」とは「性交または性交類似行為」のことを指します。
「性交」というのは、姦淫行為のことで、もっとくだけた言い方をするといわゆる「本番行為」のことです。
「性交類似行為」は、姦淫行為以外でそれに類似する行為であり具体的には、口淫、手淫などがそれに当たります。
なお、キスについては、一般にそれだけでは不倫にあたらないとされています。
このように、不倫とは肉体関係の存在が前提となるのであり、例えば二人で食事に行くとか、頻繁に電話やLINEをしているというだけでは不倫にはあたりません。
ですので、集めるべき証拠は性交渉があったことを示すものでなければならず、そこがゴールになるということを意識していただく必要があります。言い換えれば、単に親密な交際関係にあることを証明しても、性交渉の存在を証明できない限り不倫の証明にはならないということです(なお、単なる親密交際関係であっても、それ自体が不倫の存在を推認させる一つの事情になり得ます。ただ、それだけで不倫の証明をするというのは難しく、位置付けとしてはあくまで「補完証拠」といったところです)
不倫の証拠は自分で集められる?それとも探偵に依頼すべき?
さて、目標が定まったところで、以下では具体的な証拠収集の方法について解説していきたいと思います。
ここで、最初に考える必要があるのが探偵に依頼するか、自分で集めるかという問題です。
探偵に依頼するメリットは、確実な証拠写真が取れる可能性が高いということです。
探偵は不倫調査を生業としているので、当然、ノウハウを持っていますし、素人ではなかなか用意できない機材も揃えています。
ですので、それらを用いて確実な証拠写真を押さえてくれる可能性は高いといえます。
ですが、探偵に依頼するとかなりの費用(数十万円〜100万円程度)がかかってしまいます。また、探偵に依頼したからといって確実に証拠が取れるわけでもなく、費用をかけたものの空振りに終わったということもよくあります。
そこで、探偵には頼らず、自分で証拠収集に挑戦するという選択肢もあります。
自分で証拠を集めることができれば、探偵に依頼した場合に発生するような高額な費用は当然かかりません。
ですが、探偵のようなノウハウも機材もない中で、探偵が撮影するような確実な証拠写真を撮るのはなかなか難しいところでしょう。
また、自分で証拠収集に挑戦することで、相手に察知されてしまうリスクも高いところです。
ですので、探偵に依頼するか否かは上記のようなメリットとデメリットを考慮して判断していただくことになります。
おすすめとしては、まず最初に安価でかつ低リスクに価値の高い証拠を集める方法にトライしていただき、それがダメな場合は探偵に依頼することを検討するという順番で進めるのが良いのではないかと思います。
探偵に依頼せずとも簡単に有力な証拠が取れるのであれば、高い費用をかけて探偵に依頼する必要は最初からありません。なので、まずはそういった方法を試してみるべきです(具体的には、後述する、LINE等のチェックです)。
ですが、そういった方法を試みても証拠を集めることができない場合は、状況を打開するために探偵に依頼することも検討した方がよいでしょう。
とはいっても、「数十万円の費用かけてまで探偵に依頼する余裕はないよ」という方も多いのではないかと思います。
そこで、以下では、探偵を使わずに証拠を集めるという道を選択した場合、どのような方法があるかをご紹介したいと思います。
なお、不倫の証拠については不倫・不貞慰謝料の相場と証拠でも詳しく解説しておりますので、そちらもご参照ください。
探偵を使わない証拠収集の具体的な方法
LINE、メール、SNSのやり取り
LINEやメール、SNSで性交渉の存在を示唆するようなやり取りは非常に価値の高い証拠になります。
基本的にはそれのみで不貞の立証ができると考えていただいても大丈夫なほどです。
先ほど、まずは安価でかつ低リスクに価値の高い証拠を集める方法にトライすべきだと述べましたが、ここでいう安価でかつ低リスクに価値の高い証拠を集める方法というのは、まさにLINE等のチェックです。
夫婦であればスマホの暗証番号を共有していることも多いので、その場合は隙を見てチェックすることも可能でしょう。あるいは、スマホの画面を開いたまま寝落ちしている隙にチェックして不倫が発覚したというケースも時々あります。
暗証番号がわからない場合は、配偶者がアンロックする際の指の動きを見て推認するという方法もありますが、ご存知のとおり、スマホの暗証番号を複数回間違って入力するとロックがかかってしまうので要注意です。
また、スマホ自体の暗証番号がわからなくても、他のデバイス(PC、タブレット、スマートウォッチ等)と同期しており、そこからLINE等を見ることができたという事例もあるので、心当たりがある場合は試してみてはいかがでしょうか?
証拠となるやり取りを見つけた際は、(LINEの場合)テキストデータとして自分のスマホに転送したり、その画面自体を自分のスマホで撮影するなどして証拠化しておくとよいでしょう。
性交渉の場面や不倫相手とのやり取りを記録した音声、動画
性交渉の場面を記録した音声や動画は極めて有力な証拠になります。
例えば、自宅で不貞行為に及んでいるような場合であれば、自宅の発見されにくい場所に盗聴器などを仕込んでおくとよいでしょう(なお、性交渉の場面を撮影する行為は、盗撮として犯罪に該当してしまうおそれがあるので、控えておいた方が無難です)。
こちらが所有している車の中で行為に及んでいる場合も同様に車の中に盗聴器を仕込んでおくことは容易だと思われます。
なお、その場合はドライブレコーダーなどに映像、音声が残っている可能性もあるので、確認してみることをおすすめします。
ホテルや相手の家で行為に及んでいる場合は、配偶者のカバンや持ち物に小型の盗聴器を仕込んでおく方法が考えられます。最近の盗聴器は極めて小型化しているので発覚のリスクは小さくなっています。
それでもやはり盗聴器を仕込んだことが発覚してトラブルになるリスクは避けられませんので、その点は考慮に入れて検討すべきでしょう。
上記のような方法で音声や動画の記録を収集した結果、性交渉の場面そのものではなくとも、不倫相手との会話の内容を録音することができ、その中で性交渉の存在を前提とするやり取りがされているということもよくありますが、それも極めて有力な証拠となります。
また、ご丁寧に配偶者が不貞相手との性交渉の場面を撮影していることもままあります。
スマホをチェックすることが可能であれば、写真、動画フォルダも確認してみるべきでしょう。
位置情報
配偶者の位置情報も証拠の一つにはなります。
ですが、どうしても誤差がありますし、例えば「配偶者がラブホテルにいた」という位置情報だけだと、配偶者が不倫していたことは推認できても、相手が誰かわからないので、不倫相手に慰謝料請求する際の証拠としてはあまり価値がありません。
証拠収集の方法としては、配偶者のカバンなどにGPSを仕掛けることが考えられますが、発覚のリスクが避けられない上、上述のとおり、あまり証拠としての価値も高くないので、コスパ的にそこまでおすすめはできません。
利用する場面は、「配偶者が本当に不倫をしているか確かめたい」という場合や、後述する写真を押さえるための手段として用いる場合に限定されるでしょう。
なお、配偶者のスマホに位置情報アプリが入っている場合は、その履歴をチェックするという方法もあり得ます。
ラブホテルや相手の自宅の出入りの写真
これは基本的に探偵の領分であり、素人が確実な写真を押さえるというのは至難の業です。
また、トライした結果、相手に察知されて尻尾を出さなくなるというリスクもありえます。
それでもチャレンジしたい場合は、まず配偶者のカバンや自動車にGPSを設置してその動きを把握するところから始めるべきでしょう。
尾行するという方法もありますが、自分でやっても発覚のリスクは高いので、配偶者と面識のない友人などにお願いする必要がありますし、素人が備考をしても失尾してしまう可能性が高いでしょう。
ですので、おすすめはGPSの設置ですが、当然これも発覚のリスクは避けられません。
配偶者の位置情報から特定の場所での不倫が疑われる場合、そこで張り込みをします。
ラブホテルであれば、二人で入っている場面か出てくる場面のいずれかがあれば十分です。
他方、不倫相手の自宅などの場合、滞在していた時間や時間帯も重要なので、「入」と「出」の両方が必要です。ですから、入ってから出てくるまで張り込む必要があります。
さらに、夜間であれば当然周囲は暗いので、普通のカメラだと顔が識別できる写真を撮ることはできません。したがって、きちんと撮影するためには暗視カメラが必要でしょう。
また、当然、ある程度離れた場所から撮影する必要がありますが、その場合は望遠カメラも必要でしょう。
配偶者の自白
配偶者の自白は極めて価値の高い証拠になります。
証拠収集にトライした結果、何となくそれっぽい証拠は集まったものの、決定打まではないという場合、最後の手段として配偶者にこれまで集めた証拠を突きつけて自白を迫ります。
裁判で不倫が確実に立証できる程度の証拠がなくても、それなりに不倫があったことを推認させるような証拠があれば、配偶者が観念して自白してくることも多いです。
その場合、確実にその場面を録音しておくようにしてください。
また、配偶者に自筆の念書を書かせることができればなお良いでしょう。
まとめ
以上、探偵を使わずに証拠を集める方法をご紹介してきましたが、何がどの程度有力な証拠になるのかはなかなか法律に詳しくない人には判断が難しいところかと思います。
証拠収集の方法やそもそもどのような証拠を集めればよいのかお悩みの際は、プロである弁護士にご相談することをおすすめします。
不貞慰謝料の示談書(合意書)はどうやって書けばいい?-示談書の書き方と文例について弁護士がわかりやすく解説します
配偶者が不貞(不倫)をしてしまい、その不貞相手と示談をする場合、口頭の合意だけでは合意された内容が形として残らないので、後々のトラブルを招いてしまうリスクがあります。
そこで、相手と合意をする場合、きちんと合意内容を示談書(合意書)という形で残しておく必要があります。
といっても、法律に詳しくない人が一から示談書を作ろうとしても、何をどのように書いてよいのかわからないのが通常でしょう。
ここでは、そのような方のために示談書の書き方について解説するとともに、サンプルとなる文例(雛形)をお示ししたいと思います。
そもそも示談とは?
「示談」というのは、慰謝料の金額などについて当事者間で取り決めをして、不貞慰謝料に関する争いを終結させることをいいます。
交通事故などでもよく「示談」という言葉を使いますが、不貞の場合も意味合いは同じです。
つまり、不貞をされた配偶者(被害者)と不貞をした相手方(加害者)が慰謝料の金額などについて話し合い、お互いに合意をして争いを終わらせることです。
一言でいえば「話し合いによる解決」ですね。
もちろん、話し合いでは合意が成立せず、解決しないこともあります。その場合は被害者側が訴訟を提起して裁判所に判断してもらうことになります。
なお「示談」と似た言葉に「和解」というものがありますが、どちらも意味は同じです。
示談書を作成するメリットは?
示談をする際は単なる口頭での合意だけではなく、示談書(合意書)を作成しておくべきです。
示談書を作成するメリットは以下のとおりです。
①慰謝料の支払いを求める際の証拠となる
当事者間で合意をして示談書を作成すれば、示談書に記載された期間内に相手方から慰謝料の支払いがなされることがほとんどです。
しかし、まれに相手方が約束を守らず、合意書どおりに慰謝料を支払ってこないこともあります。
特に慰謝料が分割払いになっている場合などは、途中で支払いが途切れるということも一定数あります。
そのような場合、合意書を作成しておけば、それが証拠となり、裁判などで相手に慰謝料を支払うよう請求することができます。
②慰謝料以外の約束も明確になり、相手に守らせることができる
示談をする際には慰謝料以外にも、配偶者との接触禁止やそれを破った場合の違約金などについて合意をすることが多いです。
ところが、それらが口頭だけの合意だと、形に残らないので、相手が約束を反故にするリスクが高くなります。
そこで、示談書という形で約束事を明確にしておくことで、相手がその約束を守ってくれることが期待できますし、万が一相手が約束を反故にした場合は、違約金請求などの際の証拠とすることができます。
③争いが蒸し返されない
示談書には「清算条項」という条項を必ず付けます。
清算条項とは、「これで争いは終了したので、お互いこれ以上の請求はできませんよ」ということを確認する規定です。
清算条項を設けておくことで、同じ紛争が蒸し返されることが防げます。
これはどちらかというと、慰謝料を請求されていた側にとってメリットのある規定といえるでしょう。
示談書に記載すべきこと
それでは、以下で示談書に何を書くべきかについて解説していきます。
適宜、文例をお示ししますので、参考にしていただければと思います。
冒頭部分
●(以下「甲」という。)と●(以下「乙」という。)は、本日、乙が甲の妻である●(以下「丙」という。)と不貞行為に及んだ件(以下「本件」という。)について、甲の乙に対する慰謝料請求事件(以下「本件」という。)について、以下のとおり合意した。
どの合意書でもそうですが、通常、合意書の冒頭にその合意書が何について書かれたものであるのかを簡潔に示す冒頭文を付けます。
謝罪条項
乙は、甲に対し、甲の妻である丙と不貞行為に及んだことを認め、深く謝罪する。
不倫の示談書では、通常、一番最初に不貞行為を行なった事実を認めて謝罪するといった内容の謝罪条項を設けることが多いです。
法的な効力は特にありませんが、不貞をした側が事実を認めて謝意を伝えるということで不貞をされた被害者の心情に配慮するという意味合いのある規定です。
慰謝料(解決金)の金額に関する条項
乙は、甲に対し、本件の慰謝料(解決金)として、金●万円の支払義務があることを認める。
慰謝料の金額は示談書の中核といえるでしょう。
この条項では慰謝料の金額を明示するとともに、相手方においてその支払い義務があることを確認する旨記載します。
慰謝料の支払いに関する条項
乙は、甲に対し、前項の金員を令和●年●月●日限り、甲が指定する次の口座に振り込む方法によって支払う。振込手数料は乙の負担とする。
●銀行●支店 普通 ●名義(口座番号●)
慰謝料が一括支払いの場合は上記のような内容で足りますが、分割払いの場合は少し修正が必要です。以下に一例を示しておきます。
乙は、甲に対し、以下のとおり分割して、甲が指定する次の口座に振り込む方法によって支払う。振込手数料は乙の負担とする。
●銀行●支店 普通 ●名義(口座番号●)
⑴ 令和●年●月限り金●万円
⑵ 令和●年●月から令和●年●月まで、毎月末日限り金●万円ずつ
期限の利益喪失と遅延損害金に関する条項(分割払いの場合)
乙が前項の分割金の支払いを2回以上怠り、その額が●万円に達した場合、当然に期限の利益を喪失し、乙は、甲に対し、第●項の金員から既払額を控除した残金及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日から支払済まで年●%の遅延損害金を直ちに支払う。
慰謝料が分割払いの場合、分割金の支払いの支払いが万が一滞った場合の規定を設けておくことが多いです(そうすることで不払いを避ける効果も期待できます)。
具体的には「不払いがあった場合は残金を一括で払いなさい」という条項(期限の利益喪失条項)と「遅延損害金も併せて支払なさい」という条項(遅延損害金条項)を盛り込みます。
なお、上記の文例中「第●項の金員」となっている部分は、慰謝料(解決金)の金額に関する条項のことです。
求償権の放棄に関する条項
乙は、前項の給付をしたことを原因として丙に対して求償しない。
不貞は不貞相手と不貞配偶者の二人で行う不法行為ですから、当然、二人とも慰謝料を支払う義務を負います。
ですから、どちらか一方が一人で慰謝料の全額を支払った場合、もう一方に対して自分が支払った分のうちの一定割合(多くの場合は半分)を返してもらうよう請求できます。
これを求償権といいます(求償権については不倫慰謝料の求償権とはというコラムで詳細に解説しておりますので、そちらをご参照ください。)。
この求償権が残ったままだと、後日の争いを招いてしまうおそれもあるので、3者間の権利関係を一括で清算するために、不貞相手が不貞配偶者への求償権を放棄する旨合意することがあります。
その場合は、上記の文例のような規定を設けておきます。
接触禁止と違約金条項
乙は、甲に対し、本示談書締結日以降、面会、電話、メール、LINE、SNSその他方法の如何を問わず、丙との連絡、接触を試みないことを約束する。
前項の規定に違反した場合、乙は、甲に対し、違約金として違反行為1回につき●万円支払う。
不貞の示談書には不貞相手と不貞配偶者が二度と接触しないよう、接触禁止に関する文言を入れることもよくあります。
また、その約束が守られることを担保するために、約束を破った場合の違約金に関する条項を入れることもあります。
口外禁止条項
甲及び乙は、本示談書締結日以降、口頭、書面、電話、インターネットへの投稿その他方法の如何を問わず、本件に関する事実関係を第三者にみだりに公開、伝達しないことを約束する。
不貞に関する事実を口外しないことがお互いの利益にもなるとして、口外禁止条項を盛り込むことも実際は多いです。
清算条項
甲及び乙は、本合意書に定めるもののほか、本件に関し何らの債権債務のないことを相互に確認する。
先程も少し説明したとおり、示談書には争いが終了し、お互いに権利義務がないことを確認するための清算条項を設けます。
清算条項は、紛争の解決を担保するために必ず示談書に盛り込みます。