男女問題QA

Q1 探偵(興信所)の調査費用も不倫相手側に支払義務がありますか?

基本的には探偵(興信所)の調査費用全額について支払義務が認められることはありません。

調査費用については、過去の裁判例でも争われており、不貞行為と調査費用との間の因果関係が争点とされてきました。

それらの裁判例を見ても、多額の調査費用について全額の賠償を命じた裁判例は見当たりません。

他方で、調査費用の一部について賠償義務を命じた裁判例は散見されます。それらの裁判例でも賠償義務が認められるのは実際に支出した調査費用の10%程度とされていることが多いようです。

判断の枠組みとしては、その調査費用の支出が不貞行為の立証に必須であったか否かによって請求の可否が決まります。したがって、探偵(興信所)に依頼せずとも不貞行為の存在が立証可能である場合は、調査費用の支払義務は否定されることになるでしょう。

また、たとえ調査費用の請求自体は認められたとしても、賠償義務の対象となるのは相当な額に制限されることになります。

Q2 弁護士費用も不倫相手側に支払義務がありますか?

実際にかかった弁護士費用全額について、支払義務が認められることはありません。

なお、判決になった場合は慰謝料の10%が弁護士費用として上乗せされることになります。

例えば、慰謝料として100万円が認められた場合、その10%である10万円が弁護士費用として加算され、実際の認容額は110万円になるということです。

Q3 不倫が原因で精神的に追い詰められ会社を休みました。休業損害は請求できますか?

休業損害の請求はできません。

かなり昔の裁判例(大阪地裁昭和39年6月29日)に休業損害の賠償義務を認めたものがありますが、近時の裁判例では休業損害について賠償義務を認めているものは見当たりません。実務上も休業損害の賠償義務について認められることはありません。

Q4 不貞行為で子供たちも精神的苦痛を受けました。子供たちからも不倫相手に慰謝料請求できますか?

子供からの慰謝料請求はできません。

この点については、すでに実務上固まっている最高裁判例(最高裁昭和54年3月30日判決)があり、この判例では夫婦の子が不貞行為によって損害を受けたとしても、その損害と不貞行為との間に因果関係は認められないとして、子からの請求を退けています。

その理由として最高裁は「父親がその未成年の子に対し愛情を注ぎ、監護、教育を行うことは、他の女性と同棲するかどうかにかかわりなく、父親自らの意思によって行うことができるのであるから、他の女性との同棲の結果、未成年の子が事実上父親の愛情、監護、教育を受けることができず、そのため不利益を被ったとしても、そのことと右女性の行為との間には相当因果関係がない」と述べています。

このように子供からの慰謝料請求それ自体は法律的に認められていませんが、未成年の子供がいることは、親が不倫相手に行う慰謝料請求の増額理由になり得ます。

Q5 内縁関係の場合であっても不貞相手に慰謝料の支払義務はありますか?

実際に内縁と言える関係があり、かつその存在について不倫相手が知っていた場合は慰謝料の支払義務が認められます。

もっとも、内縁関係は法律婚のように線引きが明確ではありませんので、同居期間の長さや結納の有無、婚約の有無、両親への挨拶の有無、住民票上の住所地が同じであるか否か、対外的に夫婦であると表明しているか否か(例えば、続柄に「内夫」や「内妻」と記載した書面があるか否か)など、さまざまな事情によって内縁関係と認められるか否かが判断されます。

したがって、これらの事情から内縁と呼べる関係が存在することが大前提ですし、かつ、これらの事情を不倫相手も知った上で関係を持ったことを立証しなければなりませんので、実際上はかなりハードルが高いと言わざるを得ません。

Q6 不貞発覚後に配偶者や不貞相手との会話内容を黙って録音しても問題ありませんか?

問題ありません。

不貞発覚後に配偶者や不倫相手と話をする際、会話内容を証拠として保全するために録音をしておくことはよくあります。

録音を秘密裏に行ったとしても法的な責任が生じることはありませんし、録音行為に違法性は認められませんので、録音データが違法収集証拠として証拠能力を否定される(証拠として使えない)ということもないでしょう。つまり、証拠としても完全に有効ということです。

Q7 証拠収集のために録音しても問題ないですか?

録音の方法によります。

例えば、自動車内にボイスレコーダーを設置し、配偶者と不貞相手との会話の内容や性交渉の様子を録音したとしても、法的な責任に問われることはありません。

また、そこで得られた証拠も有効なものと扱われます。

違法な手段によって収集された証拠(違法収集証拠)については、証拠能力が認められない(証拠として使えない)場合もあるのですが、それは証拠収集の手段が反社会性の高いものであった場合のみです。

車内にボイスレコーダーを設置して会話内容や性交渉の様子を録音する程度では反社会性が高いとまではいえず、証拠能力が否定されることはないでしょう。配偶者の鞄の底にボイスレコーダーを設置していたような場合も同様です。

これに対して、別居中の配偶者の家や不貞相手の家に忍び込んでボイスレコーダーを設置したような場合は、反社会性が高いといえ、録音データの証拠能力が否定される可能性が高くなるでしょう。

Q8 不貞の有無を確認するために配偶者のスマホやパソコンを勝手に見ても問題ないですか?

基本的には問題ありませんが、目的や方法にもよります。

配偶者と不貞相手とのLINEでのやり取りなどは、不貞行為の重要な証拠となるので、配偶者のスマホをこっそり見て、そこで得た情報をのちに不貞の証拠とすることは一般によく行われています。

よくあるパターンとしては以下のような事例が挙げられます。

  • 配偶者が寝落ちしている間に開きっぱなしになっていたスマホを見た
  • スマホにロックがかかっていたものの、暗証番号が夫婦間で共有されていたので、ロックを解除してスマホを見た
  • スマホにロックがかかっていたが、記念日などあり得そうな番号を入力したところ解除されたので、スマホを見た

上記のような事例について、①そこで集められた証拠が証拠として有効か否かと②法的な責任を問われるおそれがあるか否かに分けて説明します。

まず、①ですが、いずれの場合も、そこで得られた証拠について、証拠能力が否定される(証拠として使えない)可能性は極めて低いといえます。逆にいえば、証拠としては有効に扱われる可能性が高いといえるでしょう。

次に②ですが、厳密にいえば、上記のような行為はプライバシー権侵害や不正アクセス防止法違反(勝手にアプリにログインした場合など)に当たる可能性があります。もっとも、実際の事案でそれらが問題なとあることはほとんどありません。

というのも、プライバシー権の侵害といっても、侵害されたのはあくまで配偶者のプライバシーであり、不貞相手にはあまり関係がないので、不貞相手側でこの点を主張する利益がありませんし、不正アクセス防止法の点についてもあくまで夫婦間でスマホをみた(アプリにログインした)というにすぎない事件で警察が動くことは考えにくいからです。

とはいっても、程度問題ですので、目的が不当であったり、度がすぎた行動をとってしまった場合は、問題になる可能性も完全には否定できません。

Q9 不倫相手の年収によって慰謝料の金額は変わりますか?

変わりません。

不倫慰謝料の金額は、離婚の有無や婚姻期間の長さ、不貞の期間、回数などの事情によって増減しますが、不倫相手の資力は考慮要素に含まれませんので、相手の年収によって慰謝料の金額が変わるということはありません。

Q10 慰謝料請求の時効について教えて

不倫相手に対する慰謝料請求権の消滅時効は、不貞行為の存在と不倫相手を知ったときから3年です(民法724条1号)。

あくまで「知ったとき」が基準となるのであり、不貞行為のときから3年というわけではありません。

なお、配偶者に対する慰謝料請求については、離婚後6か月を経過するまでは時効が成立しないとされているので(民法159条)、不貞を知ってから3年経過したとしても、慰謝料請求ができる可能性があります。

以上に対して、不貞行為のときから20年が経過すれば、(不貞を知っていたか否かにかかわらず)慰謝料請求をすることはできなくなります(民法724条2号)。

Q11 判決が出たのに相手が慰謝料を払ってこない場合はどうすればいいですか?

慰謝料の支払いを命じる判決が出たにもかかわらず、相手がそれを無視して慰謝料を払ってこないということもままあります。

このような場合は、相手の資産(預貯金や給与債権)を差し押さえて強制的にお金を回収することになります。これを強制執行といいます。

なお、相手に財産がない場合や相手がどこに資産を有しているのかわからないような場合は、強制執行ができないこともあります。

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