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不倫慰謝料請求を受けた場合の対処法
- 不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されたけどどうすればいいの?
- 突然弁護士から通知書が届いたけど連絡すべき?
- 慰謝料を減額してほしい
不倫相手の配偶者から慰謝料請求をされた場合、「早く終わらせたい」「大ごとにしたくない」という気持ちから安易にその請求に応じてしまう方もいらっしゃいますが、それはNGです。
慰謝料請求を受けた場合、そもそも慰謝料を支払うべき理由があるかどうか、理由があるとしても相手の請求額が適正妥当なものであるかどうか(減額交渉が可能かどうか)、などチェックすべき点がいくつかあり、それに応じて採るべき対応方法も異なってきます。
ここでは、慰謝料請求を受けた場合にどのように対処すべきかについて解説していきたいと思います。
1 不倫慰謝料請求を受けた場合の流れ
① 相手との交渉
相手が慰謝料請求をしてくる場合、いきなり訴訟を起こしてくるということはほとんどありません。
通常はまず裁判外で相手と交渉を行い、そこで合意ができれば合意書を締結するなどして事件は終結します。
他方、交渉でお互いに合意ができず決裂した場合は、訴訟(裁判)に移ります。
② 訴訟(裁判)
交渉が決裂すると、通常、相手(請求者)の方から訴訟を提起してくるので、これに対応することになります。
訴訟とは、当事者双方が事件について主張、立証を行い、それを踏まえて裁判所が最終的な判断(判決)を下す手続きです。
もっとも、判決になる前に裁判所が主導して和解について話し合うことが一般的な流れであり、ここで和解ができれば判決前に事件は終結します(実際、ほとんどの事件は和解で終結しています)。
他方、和解ができなければ、裁判所がそれまでの双方の主張立証を踏まえて判決を出すことになります。
2 不倫慰謝料請求を受けた場合にすべきこと
① 慰謝料を支払うべき理由があるかどうか確認する
そもそも不倫をした場合になぜ慰謝料を払わないといけないかというと、不倫が民法で定められている不法行為(民法709条)に該当するからです。
したがって、そもそもこの不法行為の成立要件を満たしていなければ、慰謝料を支払う義務はないということになります。
ですので、慰謝料請求を受けた場合、まずは不法行為の成立要件を満たしているか否かをチェックする必要があります。
具体的には、以下のような事情がある場合は、不法行為が成立しない可能性があります。
性交渉がなかった場合
基本的に不貞行為とは、既婚者と性交渉を持つことなので、性交渉がない場合は、原則として、不法行為に当たらず、慰謝料を支払う義務は発生しません。
なお、ここでいう「性交渉」とは性交または性交類似行為のことをいうのであり、手淫や口淫は含まれますが、単に手を繋ぐ、ハグをするといった行為は含まれません。キスは微妙なところですが、含まれないという考え方が一般的です。
相手が既婚者であると知らなかった場合
不法行為は「故意または過失」があった場合にのみ成立します。
したがって、性交渉をもった相手が既婚者であることを知らなかった場合は、この「故意または過失」が否定され、慰謝料の支払い義務を免れる可能性があります。
LINEやメールで相手が独身であること前提とするようなやり取りがあれば、既婚者であることを知らなかった有力な証拠となるでしょう。
不貞行為の時点で相手夫婦の婚姻関係が破綻していた場合
不法行為は、相手方の権利や利益を侵害した場合に成立します。
この点、不倫があった時点で相手夫婦の婚姻関係がすでに破綻していたような場合であれば、相手方に侵害されるような権利や利益がそもそも存在しなかったということになるので、慰謝料を支払う必要はありません(最高裁平成8年3月26日)。
どのような場合に「破綻」が認められるかという明確な基準があるわけではありませんが、長期間別居をしているような場合であれば、破綻が認められやすいといえるでしょう。
もっとも、必ずしも別居が必要というわけではなく、上記の最高裁判例でも「別居にいたっていなくても、破綻を肯定すべき事案は存する」と述べているので、不倫があった時点の夫婦の関係性に照らして具体的に判断していくほかないでしょう。
② 相手方の請求額が妥当な金額かどうか確認する
慰謝料を支払うべき法的な理由がある場合であっても、相手の請求額が必ずしも妥当な金額であるとは限りません。
不貞慰謝料の金額については、明確な基準や計算式があるわけではありませんが、過去の裁判例の蓄積から一定の相場が形成されており、相場を超えるような金額を請求されている場合は、減額の交渉をすべきでしょう。
なお、慰謝料相場において最も影響が大きいのは、相手夫婦が離婚や別居をしているか否かです。
おおまかな相場感ですが、離婚している場合で200万円前後、離婚はしていないものの別居をしている場合で150万円前後、離婚も別居もしていない場合で100万円前後になることが多いです。
もちろん、それのみで決まるわけではなく、不貞行為の期間・回数、相手夫婦の婚姻期間、不貞行為の時点での相手夫婦の夫婦関係、不貞行為に至る経緯、不貞配偶者との関係性などの事情によっても大きく金額は増減します。
また、不貞配偶者に対する求償権を放棄することで慰謝料の金額を大幅に下げられる可能性もあります。
慰謝料の相場や求償権の放棄については、以下のコラムで詳しく解説しておりますので、こちらをご参照ください。
関連記事:「不倫・不貞慰謝料の相場と証拠」、「不倫慰謝料の求償権とは」
③ ①、②を踏まえて相手と交渉する
①、②で検討したことを踏まえて相手と交渉します。
具体的には、慰謝料を支払う理由がないのであれば、相手からの請求を拒否するという対応が考えられます。
他方、実際に不貞行為をしており、慰謝料を支払う理由はあるものの、相手の請求額が相場より高い場合は、減額交渉を試みることになります。
どのような対応をとるべきかは、具体的な事実関係や証拠状況などを踏まえた高度な状況判断が必要になってきます。
ご自身で対応されるのは容易ではないかと思いますので、プロの弁護士に依頼されることをお勧めします。
3 慰謝料請求を受けた場合にやってはいけないこと
① 相手の請求に安易に応じない
まず、相手の請求に安易に応じてはいけません。この点はすでにご説明差し上げてきたとおりです。
相手から突然示談書を差し出されたとしても、絶対に署名押印をしてはいけません。署名押印してしまうと、後で示談書の効力を否定することは困難になります。
口頭でも請求に応じる旨返答してはいけません。会話を録音されていた場合、請求に応じる旨返答していることで合意が成立したと判断されるおそれがあります。
② そもそも相手との直接交渉を避ける
また、そもそもとして相手との直接交渉自体を控えるべきでしょう。
相手との交渉の中で不用意な発言をしてしまうと、それが後で不利益に利用されてしまうリスクが高いです。「何を言ってもよくて、何を言ってはいけないか」を瞬時に判断しながら相手と交渉するというのは容易ではありません。
相手との直接交渉は避け、取り返しのつかない事態になる前に弁護士に依頼されることをお勧めします。
4 慰謝料請求を受けたらすぐにご相談ください
不倫慰謝料を請求された場合、具体的な事実関係や証拠状況を踏まえてどのような対応をすべきなのかを検討し、相手と交渉していかなければなりません。
これをご自身でなさることはなかなかに困難な作業かと思われます。
また、相手と直接交渉をすることは精神的にも負担が大きく、大きな重荷になってしまうでしょう。
弁護士にご依頼いただければ、専門的な知識、経験に基づき、あなたに変わって相手と交渉いたします。
慰謝料請求を受けた際は早めに弁護士に相談されることをお勧めします。