不貞行為(いわゆる不倫)が発覚し、弁護士や裁判の場で「嘘をついてしまおうか」と考えたことはありませんか。しかし、弁護士や裁判所に対して嘘をつくことは、慰謝料の増額や法的制裁につながる深刻なリスクをはらんでいます。
本記事では、不貞行為で弁護士に嘘をついた場合のリスク、そしてすでに嘘をついてしまった場合の対処法まで、弁護士監修のもとわかりやすく解説します。
このページの目次
不貞行為で弁護士に嘘をつくとどうなる?
不貞行為の問題が発覚した際、弁護士や裁判所に対して事実を隠したり、嘘の内容を話したりするケースがあります。しかし、嘘をつくことは状況を改善するどころか、むしろ事態をさらに悪化させるリスクが高い行為です。具体的には次の3つのリスクがあります。
- 慰謝料の支払金額が増額するおそれがある
- 弁護士との信頼関係が崩れ適切な弁護を受けられなくなる
- 過料に処せられる可能性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
慰謝料の支払金額が増額するおそれがある
裁判において嘘の陳述をしていたことが発覚した場合、裁判官の心証(印象)が著しく悪化します。裁判の判断には裁判官の心証が大きく影響するため、嘘が発覚すること自体が不利な評価につながります。
その結果、嘘をついていたと認定されれば、慰謝料が増額されるおそれがあります。慰謝料の額は不貞行為の悪質性や期間・経緯などをもとに総合的に判断されますが、虚偽陳述はその「悪質性」を高める要素と見なされる可能性があります。証拠が存在するにもかかわらず嘘をつくことは得策ではありません。
弁護士との信頼関係が崩れ適切な弁護を受けられなくなる
弁護士は依頼者から提供された情報をもとに、訴訟戦略や主張の組み立てを行います。そのため、依頼者から嘘の情報を伝えられた場合、弁護方針そのものが誤った前提で組み立てられることになります。
後から嘘であることが発覚すれば弁護方針の修正が必要になり、裁判の対応が後手に回るリスクがあります。また、弁護士との信頼関係が崩れると、依頼者の利益を最大化するための適切な弁護が受けられなくなる可能性があります。
弁護士には弁護士法第23条に基づく守秘義務があり、職務上知り得た依頼者の秘密を第三者に漏らすことは法律で禁じられています。正直に話しても外部に漏れる心配はないため、包み隠さず事実を伝えることが大切です。
過料に処せられる可能性がある
民事裁判の当事者尋問では、原則として宣誓の手続きが行われます。宣誓をしたうえで虚偽の陳述をした場合、民事訴訟法第209条第1項の規定により、裁判所から10万円以下の過料が科される可能性があります。
なお、過料は刑事罰(前科)ではありませんが、裁判所による公的な制裁として記録に残ります。また、過料は偽証罪とは異なります。偽証罪は当事者ではなく「証人(第三者)」に適用される犯罪ですが、当事者については過料の対象となる点に注意が必要です。近年では悪質なケースで実際に適用される事例も増えています。
不貞裁判で話した内容が嘘だとバレる理由
「証拠がなければ嘘をついても大丈夫」と考えるのは危険です。不貞裁判では複数の経路から事実が明らかになる可能性があります。主なルートは以下の3つです。
- 不倫相手が証拠を保存している
- 探偵の調査報告書が提出される
- 不倫当事者の供述も証拠として扱われる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
不倫相手が証拠を保存している
不倫相手が、二人の関係を示す証拠をすでに保存しているケースは少なくありません。具体的には以下のようなものが挙げられます。
| 種類 | 具体例 |
|---|---|
| メッセージ履歴 | LINEやメールのトーク画面のスクリーンショット、肉体関係を示す会話内容 |
| 写真・動画 | 二人で撮影した写真、共有アルバムに保存された画像 |
| 宿泊・外出の記録 | ホテルの領収書、クレジットカードの利用明細、旅行の予約確認メール |
| 位置情報・移動記録 | カーナビの走行履歴、不倫相手の自宅や待ち合わせ場所の記録 |
| 音声・念書 | 不貞を認める会話の録音、誓約書や念書 |
これらは不倫相手が慰謝料請求などの場面で裁判所に提出することがあります。「どうせ証拠はない」と思っていても、メッセージや領収書といった日常的なデータが複数組み合わさることで、裁判所に不貞行為が強く推認されるケースがあります。自分は「ない」と主張していても、相手が証拠を持ち出した瞬間に虚偽陳述が露呈するため、証拠がないという前提で嘘をつくことは非常にリスクの高い行為です。
探偵の調査報告書が提出される
不貞行為を疑った配偶者が、弁護士に相談する前の段階で探偵(調査会社)に依頼しているケースは多くあります。探偵の調査報告書には、二人が密会している写真、行動記録、ホテルへの出入りを示す記録などが詳細に記載されており、裁判において有力な証拠として提出されることがあります。
適切な手続きで収集された調査報告書は、裁判所において証拠能力を認められやすいとされています。「証拠はないはず」と思っていても、配偶者がすでに動いているケースは十分に想定されます。
不倫当事者の供述も証拠として扱われる
不倫相手が別途、証言や陳述書を裁判所に提出する可能性があります。不倫相手と自分の供述が食い違った場合、どちらかが虚偽を述べていると裁判所に判断されます。複数の供述・証拠を照らし合わせた際に矛盾が生じると、裁判官は虚偽の陳述をした側の主張全体に対して信用性を失います。
つまり、嘘の陳述をすると慰謝料の増額だけでなく、その後の主張すべての信頼性が損なわれるリスクがあるということです。当事者同士で口裏を合わせることも、偽証教唆などの問題につながるため避けるべきです。
不貞裁判で友人に嘘の証言をしてもらうことは可能?
「友人に証人になってもらい、有利な証言をしてもらえばよい」と考える方もいるかもしれません。しかし、これは友人を重大な法的リスクにさらす行為であり、依頼した自分自身も処罰の対象になり得ます。以下に詳しく説明します。
嘘の証言を頼むと偽証罪に問われるリスクがある
偽証罪とは、刑法第169条に定める犯罪で、法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をした場合に成立します。法定刑は3月以上10年以下の懲役と、非常に重い刑罰が設けられています。
重要なのは「虚偽の陳述」の定義です。判例上、客観的な事実とずれているかどうかではなく、証人自身の記憶に反する陳述をした場合に偽証罪が成立するとされています。つまり、「自分の記憶と違うことを述べる」だけで成立するため、少し違う言い方をすれば大丈夫、という考えは通用しません。
民事裁判でも偽証罪が成立する
偽証罪は刑事裁判だけでなく、民事裁判の証人にも適用されます。不貞行為をめぐる慰謝料請求は民事裁判ですが、証人として宣誓したうえで虚偽の証言をすれば、友人も偽証罪に問われます。
さらに、嘘の証言を依頼した側(あなた)も、刑法上の「教唆犯」として処罰の対象になり得ます。最高裁の判例でも、他人に虚偽の陳述をするよう教唆した場合は偽証教唆罪が成立するとされています。友人に助けを求めるつもりが、友人を犯罪に巻き込む結果になりかねないため、絶対に避けるべきです。
不貞行為で弁護士に嘘をついてしまった場合の対処法
「すでに弁護士や裁判で嘘をついてしまった」という場合でも、適切な対処を取ることで状況を改善できる可能性があります。重要なのは、できるだけ早く行動することです。
具体的には、以下の対処をとりましょう。
- 判決確定前に嘘を訂正する
- 弁護士に正直に話し直す
それぞれ詳しく解説します。
判決確定前に嘘を訂正する
偽証罪では、刑法第170条に「裁判が確定する前または懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽または免除することができる」と規定されています。つまり、判決が確定する前に自ら虚偽であることを認めれば、刑の減免につながる可能性があります。
また、訂正のタイミングが早ければ早いほど、裁判所の心証に与える悪影響を最小限に抑えられます。「もう遅い」とあきらめる前に、まずは依頼している弁護士に速やかに相談してください。
弁護士に正直に話し直す
弁護士に嘘をついてしまった場合、まず依頼している弁護士に対して正直に話し直すことが最善の対処法です。弁護士は弁護士法第23条の守秘義務を負っており、依頼者から聞いた情報を正当な理由なく外部に漏らすことは法律上禁じられています。正直に話し直しても不利益が生じることはありません。
嘘をつき続けた場合、弁護方針の誤りが積み重なり、裁判で致命的な矛盾が生じるリスクが高まります。一方、早期に事実を打ち明ければ、弁護士はその情報をもとに最善の弁護戦略を組み直すことができます。依頼者の利益を守るために動くのが弁護士の役割であるため、遠慮せずに相談しましょう。
不貞行為の弁護士相談でよくある嘘に関するQ&A
慰謝料を請求され、不倫はしていないと嘘をつき続けたらどうなる?
相手が証拠を持っている状況で嘘をつき続けることは、非常に危険です。証拠と矛盾する主張を続ければ、裁判所からの心証が悪化し、慰謝料の増額につながるおそれがあります。
また、嘘の陳述が悪質と判断されれば、過料の制裁も科される可能性があります。証拠がある場合、否認し続けることはかえって不利になるため、弁護士に実態を正確に伝えたうえで、認める部分・争う部分を整理して対処することが得策です。
依頼した弁護士に嘘を話してしまったが、正直に話した方がいい?
結論として、正直に話し直す方が得策です。弁護士は依頼者の情報をもとに裁判戦略を組み立てるため、嘘の情報が起点になると方針全体が誤った方向に進んでしまいます。
また、弁護士法第23条により、弁護士には依頼者の秘密を守る義務があります。依頼者が不利な事実を打ち明けたとしても、弁護士がそれを相手方や第三者に漏らすことは原則として許されません。安心して事実を伝え、弁護士と連携して最善の対応を取りましょう。
嘘の証言をした証人が自白したらどうなる?
嘘の証言をした証人が裁判確定前に自白した場合、刑法第170条の規定により、偽証罪の刑が減軽または免除される可能性があります。誤審を防ぐという目的から、自白には法律上のメリットが与えられています。
一方、嘘の証言を依頼した側(当事者)については、偽証教唆罪が成立する可能性があります。証人が自白すれば、依頼した事実も明らかになりやすくなるため、教唆犯として処罰されるリスクも高まります。友人に嘘の証言を頼むことは、あらゆる面で自身の立場を悪化させる行為です。
まとめ
不貞行為をめぐる問題で弁護士や裁判の場で嘘をつくことは、慰謝料の増額・過料の制裁・偽証罪のリスクなど、さらなる不利益を招く可能性があります。「証拠がないから大丈夫」と思っていても、不倫相手の証拠・探偵の報告書・当事者の供述など複数の経路から事実は露呈します。もし弁護士にすでに嘘を話してしまっていても、判決確定前であれば訂正することで状況を改善できる場合があります。
守秘義務を持つ弁護士に正直に事実を伝え、最善の対応を一緒に考えることが、問題解決への最短ルートです。
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