不貞慰謝料の示談書(合意書)はどうやって書けばいい?-示談書の書き方と文例について弁護士がわかりやすく解説します

 配偶者が不貞(不倫)をしてしまい、その不貞相手と示談をする場合、口頭の合意だけでは合意された内容が形として残らないので、後々のトラブルを招いてしまうリスクがあります。

 そこで、相手と合意をする場合、きちんと合意内容を示談書(合意書)という形で残しておく必要があります。

 といっても、法律に詳しくない人が一から示談書を作ろうとしても、何をどのように書いてよいのかわからないのが通常でしょう。

 ここでは、そのような方のために示談書の書き方について解説するとともに、サンプルとなる文例(雛形)をお示ししたいと思います。

そもそも示談とは?

「示談」というのは、慰謝料の金額などについて当事者間で取り決めをして、不貞慰謝料に関する争いを終結させることをいいます。

交通事故などでもよく「示談」という言葉を使いますが、不貞の場合も意味合いは同じです。

つまり、不貞をされた配偶者(被害者)と不貞をした相手方(加害者)が慰謝料の金額などについて話し合い、お互いに合意をして争いを終わらせることです

一言でいえば「話し合いによる解決」ですね。

もちろん、話し合いでは合意が成立せず、解決しないこともあります。その場合は被害者側が訴訟を提起して裁判所に判断してもらうことになります。

なお「示談」と似た言葉に「和解」というものがありますが、どちらも意味は同じです。

示談書を作成するメリットは?

示談をする際は単なる口頭での合意だけではなく、示談書(合意書)を作成しておくべきです。

示談書を作成するメリットは以下のとおりです。

①慰謝料の支払いを求める際の証拠となる

当事者間で合意をして示談書を作成すれば、示談書に記載された期間内に相手方から慰謝料の支払いがなされることがほとんどです。

しかし、まれに相手方が約束を守らず、合意書どおりに慰謝料を支払ってこないこともあります。

特に慰謝料が分割払いになっている場合などは、途中で支払いが途切れるということも一定数あります。

そのような場合、合意書を作成しておけば、それが証拠となり、裁判などで相手に慰謝料を支払うよう請求することができます。

②慰謝料以外の約束も明確になり、相手に守らせることができる

示談をする際には慰謝料以外にも、配偶者との接触禁止やそれを破った場合の違約金などについて合意をすることが多いです。

ところが、それらが口頭だけの合意だと、形に残らないので、相手が約束を反故にするリスクが高くなります。

そこで、示談書という形で約束事を明確にしておくことで、相手がその約束を守ってくれることが期待できますし、万が一相手が約束を反故にした場合は、違約金請求などの際の証拠とすることができます。

③争いが蒸し返されない

示談書には「清算条項」という条項を必ず付けます。

清算条項とは、「これで争いは終了したので、お互いこれ以上の請求はできませんよ」ということを確認する規定です。

清算条項を設けておくことで、同じ紛争が蒸し返されることが防げます。

これはどちらかというと、慰謝料を請求されていた側にとってメリットのある規定といえるでしょう。

示談書に記載すべきこと

それでは、以下で示談書に何を書くべきかについて解説していきます。

適宜、文例をお示ししますので、参考にしていただければと思います。

冒頭部分

●(以下「甲」という。)と●(以下「乙」という。)は、本日、乙が甲の妻である●(以下「丙」という。)と不貞行為に及んだ件(以下「本件」という。)について、甲の乙に対する慰謝料請求事件(以下「本件」という。)について、以下のとおり合意した。

どの合意書でもそうですが、通常、合意書の冒頭にその合意書が何について書かれたものであるのかを簡潔に示す冒頭文を付けます。

謝罪条項

乙は、甲に対し、甲の妻である丙と不貞行為に及んだことを認め、深く謝罪する。

不倫の示談書では、通常、一番最初に不貞行為を行なった事実を認めて謝罪するといった内容の謝罪条項を設けることが多いです。

法的な効力は特にありませんが、不貞をした側が事実を認めて謝意を伝えるということで不貞をされた被害者の心情に配慮するという意味合いのある規定です。

慰謝料(解決金)の金額に関する条項

乙は、甲に対し、本件の慰謝料(解決金)として、金●万円の支払義務があることを認める。

慰謝料の金額は示談書の中核といえるでしょう。

この条項では慰謝料の金額を明示するとともに、相手方においてその支払い義務があることを確認する旨記載します。

慰謝料の支払いに関する条項

乙は、甲に対し、前項の金員を令和●年●月●日限り、甲が指定する次の口座に振り込む方法によって支払う。振込手数料は乙の負担とする。

 ●銀行●支店 普通 ●名義(口座番号●)

慰謝料が一括支払いの場合は上記のような内容で足りますが、分割払いの場合は少し修正が必要です。以下に一例を示しておきます。

乙は、甲に対し、以下のとおり分割して、甲が指定する次の口座に振り込む方法によって支払う。振込手数料は乙の負担とする。

 ●銀行●支店 普通 ●名義(口座番号●)

 令和●年●月限り金●万円

⑵ 令和●年●月から令和●年●月まで、毎月末日限り金●万円ずつ

期限の利益喪失と遅延損害金に関する条項(分割払いの場合)

乙が前項の分割金の支払いを2回以上怠り、その額が●万円に達した場合、当然に期限の利益を喪失し、乙は、甲に対し、第●項の金員から既払額を控除した残金及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日から支払済まで年●%の遅延損害金を直ちに支払う。

慰謝料が分割払いの場合、分割金の支払いの支払いが万が一滞った場合の規定を設けておくことが多いです(そうすることで不払いを避ける効果も期待できます)。

具体的には「不払いがあった場合は残金を一括で払いなさい」という条項(期限の利益喪失条項)と「遅延損害金も併せて支払なさい」という条項(遅延損害金条項)を盛り込みます。

なお、上記の文例中「第●項の金員」となっている部分は、慰謝料(解決金)の金額に関する条項のことです。

求償権の放棄に関する条項

乙は、前項の給付をしたことを原因として丙に対して求償しない。

不貞は不貞相手と不貞配偶者の二人で行う不法行為ですから、当然、二人とも慰謝料を支払う義務を負います。

ですから、どちらか一方が一人で慰謝料の全額を支払った場合、もう一方に対して自分が支払った分のうちの一定割合(多くの場合は半分)を返してもらうよう請求できます。

これを求償権といいます(求償権については不倫慰謝料の求償権とはというコラムで詳細に解説しておりますので、そちらをご参照ください。)。

この求償権が残ったままだと、後日の争いを招いてしまうおそれもあるので、3者間の権利関係を一括で清算するために、不貞相手が不貞配偶者への求償権を放棄する旨合意することがあります。

その場合は、上記の文例のような規定を設けておきます。

接触禁止と違約金条項

乙は、甲に対し、本示談書締結日以降、面会、電話、メール、LINE、SNSその他方法の如何を問わず、丙との連絡、接触を試みないことを約束する。

前項の規定に違反した場合、乙は、甲に対し、違約金として違反行為1回につき●万円支払う。

不貞の示談書には不貞相手と不貞配偶者が二度と接触しないよう、接触禁止に関する文言を入れることもよくあります。

また、その約束が守られることを担保するために、約束を破った場合の違約金に関する条項を入れることもあります。

口外禁止条項

甲及び乙は、本示談書締結日以降、口頭、書面、電話、インターネットへの投稿その他方法の如何を問わず、本件に関する事実関係を第三者にみだりに公開、伝達しないことを約束する。

不貞に関する事実を口外しないことがお互いの利益にもなるとして、口外禁止条項を盛り込むことも実際は多いです。

清算条項

甲及び乙は、本合意書に定めるもののほか、本件に関し何らの債権債務のないことを相互に確認する。

先程も少し説明したとおり、示談書には争いが終了し、お互いに権利義務がないことを確認するための清算条項を設けます。

清算条項は、紛争の解決を担保するために必ず示談書に盛り込みます。

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