「犯罪を犯してしまって逮捕されないか不安で仕方がない」
「警察に呼び出しを受けて捕まるかもしれない」
万引きや盗撮などの犯罪を犯してしまい、突然警察が家に来て逮捕されるのではないかご不安を抱えている方もいらっしゃるかと思います。また、場合によっては、すでに警察から呼び出しを受けておりその場で逮捕されることを心配している方もいるでしょう。
ここでは、そのような方達のために、逮捕されるのはどのような場合か、逮捕されるとどうなるのか、また逮捕を避けるためにはどのような方法があるのかをご紹介したいと思います。
このページの目次
そもそもどのような場合に逮捕されるのか?
逮捕の要件とは
警察が独自の判断で好き勝手に国民を逮捕できてしまうと、重大な人権侵害につながってしまいます。そこで、刑事訴訟法という法律で、警察が国民を逮捕できるのはどのような場合かを定めています。
なお、ここでいう「逮捕」とは、現行犯人(現に犯行を行っているか、犯行を行い終わって間がない犯人)を逮捕する場合の「現行犯逮捕」ではなく、逮捕状に基づいて執行される「通常逮捕」のことです。「後日逮捕」という場合もこの「通常逮捕」を意味しているとお考えください。
逮捕の要件ですが、①犯罪の嫌疑があること、②逃亡、証拠隠滅のおそれがあること、です。
①は当たり前ですね。犯罪を犯した嫌疑が何もないのに逮捕することは当然できません。
重要なのは、②です。そもそも、逮捕や勾留といった捜査段階での身体拘束は、逃亡や証拠隠滅を防ぐためにあるものです。
よく、逮捕や勾留による身柄拘束を犯罪に対する制裁のようなイメージで捉えている人がいますが、それは勘違いだということです。
ですので、逃亡や証拠を隠滅する可能性がない場合は逮捕できないということになっています。
後述するとおり、弁護士に依頼して、逃亡や罪証隠滅のおそれがないことを警察に伝えて説得することが重要になります。
逮捕されるまでの流れは?
逮捕は、①警察による犯罪事実の認知→②個人の特定→③逮捕状の発付→④逮捕状の執行、という順番で行われます。
①警察による犯罪事実の認知
①については、色々なパターンが考えられますが、よくあるのは被害者による告訴や被害申告、目撃者による通報、警察官の職務質問などです。また、近年ではSNSによる拡散によって警察が犯罪事実を認知することも増えてきています。
②個人の特定
どのような場合に個人が特定されるのでしょうか?
よくあるのは、車のナンバーやクレジットカード、交通系ICカードを利用したことによって個人を特定されるパターンです。
近年では街中のいたるところに防犯カメラが設置されており、警察の解析技術も年々向上してきているので、それらの事情がなかったとしても個人を特定される可能性が非常に高いと考えるべきでしょう。
③逮捕状の発付
警察は個人を特定したら、逮捕すべきか否かを検討し、逮捕すべきと判断した場合は、裁判所に逮捕状を請求します。
請求を受けた裁判所において、逮捕要件をみたしていると判断した場合は、逮捕状を発付します。
もっとも、裁判所が警察の逮捕状請求を却下することはほとんどなく、実際上、逮捕するか否かは警察の判断に委ねられているといえるでしょう。ですので、後述しますが、逮捕されないためには弁護士を入れて警察を説得ことが重要といえます。
④逮捕状の執行
逮捕状の発付を受けた警察は、その逮捕状に基づいて逮捕を執行します。逮捕状には発付から一週間という有効期限が付けられているので、警察はその期間内に逮捕しなければなりません。
よくあるのは、警察が突然家に来てその場で逮捕されるパターン、警察から任意同行を求められ警察署内で逮捕されるパターン、警察から呼び出しを受け、出頭したところ逮捕されるパターンなどがあります。
警察はどのような事情を考慮して逮捕するのか?
警察が逮捕するか否かを決める際はどのような事情を考慮するのでしょうか?
先ほども述べたとおり、逮捕とは、逃亡や証拠隠滅を防止するための制度です。ですので、逃亡や証拠隠滅のおそれがどの程度あるのかを個別の事情に照らして判断することになります。
具体的には、犯罪事実の重大性や主な物的証拠の収集がすでに完了しているか否か、本人と被害者との関係性(面識の有無等)、監督を約束している家族や知人がいるか否か、本人が定職についているか否か、本人の態度、弁護人の有無などの事情が考慮の要素になります。
きちんと本人を監督し、示談交渉などにあたることができる私選弁護人をつけているか否かは、警察が逮捕するかどうかを決める上でも重要視されますので、早期に弁護士に依頼されることをお勧めします。
後日逮捕までの期間は?
「犯罪を犯してから後日逮捕されるまでどれくらいの期間があるのか」「どれくらいの期間が経てば逮捕される心配がなくなるのか」といった点が気になる人もいらっしゃるかと思います。
この点については、数日で逮捕されることもあれば、数年後に逮捕されるということもあり得ます。
逮捕までの期間は、警察がどの段階で犯罪事実を認知するのか、また裏取り捜査や個人の特定にどの程度の時間がかかるのかなどの事情によってバラバラです。
殺人などの重大犯罪を除けば、時効が定められているので、時効期間が過ぎれば逮捕される心配はなくなりますが、それまでは可能性がなくなるわけではないということですね。
もっとも、軽微な犯罪であれば、半年以上経ってから逮捕されるということはあまりないかと思います。その場合は、そもそも警察が犯罪を認知していないか個人を特定できなかったという可能性が高いでしょう。しかし、万引きでも数年経ってから逮捕されたという事例もありますので、絶対に安心できるというわけではありません。
逮捕されるとどうなるのか?
もしも警察に逮捕されてしまった場合、警察署の中にある留置場というところに入れられてしまいます。その後、最大で23日間身柄を拘束された状態で警察や検察から取り調べなどを受けることになります。
捜査段階だけでも、1か月近く社会から隔絶された状態に置かれてしまい、仕事や学校など社会生活に重大な支障を来してしまうことになりますので、早期に弁護士に依頼して逮捕を避けるための対応が必要といえるでしょう。
なお、逮捕されてしまった後の流れについては、こちらのページでも詳しく解説しておりますので、参考にしてください。
関連記事:「ご家族が逮捕された方へ」
逮捕を避けるためにすべきこととは?弁護士に依頼するメリット
それでは、逮捕を避けるためには何をすべきでしょうか?
くどいようですが、逮捕とは逃亡や証拠隠滅を防ぐための制度です。
ですので、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを警察に対して説得的に伝えることが重要になります。具体的には、以下のような対応が考えられます。
自首(まだ警察の呼び出しを受けていない場合)
逮捕の可能性を下げる最も有効な手段は、弁護士とともに自首をすることです。
警察署に自ら出頭して捜査に協力する姿勢を示すことで、逮捕の可能性を大きく下げることができるでしょう。
また、本人をしっかりと監督し、警察との連絡窓口になったり被害者との示談交渉に当たったりすることができる弁護士と一緒に出頭することでその効果はより強まります。自首の手配や警察との調整などを自身で行うことも難しいですので、弁護士を入れて自首をすることをお勧めします。
身元引受人の存在
本人の身近で監督できる人の存在も重要です。
具体的には、両親や配偶者などの親族(特に同居している場合)が最も望ましいですが、難しいようでしたら、婚約者や交際相手、友人、会社の同僚などといった選択肢もあり得るところです。
また、そのような人が全くいない場合は、弁護人が身元引受人になることもあります(もっとも、警察から親族等の身元引受人を用意するよう求められることもあります)。
身元引受人になってくれる人が見つかった場合は、「身元引受書」という書面に署名押印してもらって警察署に提出することになります。身元引受書の準備は弁護士にお任せください。
誓約書の提出
本人が証拠隠滅をしないことや被害者に接触しないこと、現場に近寄らないこと、逃亡しないこと、警察からの出頭要請には速やかに応じることなどを誓約した「誓約書」を警察に提出することも有効です。誓約書のご準備につきましても、弁護士にご相談くさい。
早期の示談交渉
被害者がいる事件では、早期に被害者との示談交渉を開始することで、自身の罪を認めてその賠償に努めている姿勢を警察に伝えることができます。また、その結果、早期に示談ができた場合、警察においても、逮捕の必要性が大幅に低下したと判断されます。
ですので、早期に示談交渉を始めることは、逮捕を避ける上でも非常に有効です。
他方、被害者と直接接触してしまうと、警察に証拠隠滅を疑われてしまうおそれもあるので、示談交渉を希望する場合は、弁護士に依頼する必要があります。
弁護士による説得
先ほども解説したとおり、警察はさまざまな事情を考慮して逮捕するかどうかを判断しています。ですので、その事件に関する具体的な事情を踏まえて逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを警察に対して説得的に説明する必要があります。
そこで、弁護士が意見書を提出するなどして、逮捕せず、在宅で捜査を進めるよう警察を説得することが非常に重要です。
逮捕されることが心配な方は、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。