刑事事件における示談金の相場

刑事事件を起こしてしまった場合、被害者のいる事件では示談をしていることが非常に重要です。

ここではそもそも刑事事件における「示談」とは何であるのか、また、それぞれの事件類型における示談金の相場がどれくらいかを解説したいと思います。なお、示談については、次の関連記事でも詳しく記載しておりますので、こちらもご参照ください。

関連記事:「示談で解決するには?

そもそも「示談」とは?

民事の示談と刑事の示談?

「示談」という言葉を聞いたことはあっても、その正確な意味についてご存知の方はあまり多くはないのではないでしょうか。

示談というのは、刑事事件だけに限らず、交通事故や不倫などの民事事件でも多く使われる言葉ですが、広い意味では「損害賠償について当事者間で協議を行い、合意をして解決すること」をいいます。

簡単にいえば、一方の責任で他方に損害を与えてしまった場合に、その損害をどのように穴埋め(賠償)するかを話し合って解決をすることです

刑事事件における「示談」もこのような意味で用いられることに間違いはないのですが、刑事事件の場合はもう少し違った意味合いを含むことが多いです

刑事事件の示談とは?

では、刑事事件の示談がどういう意味かというと、ザックリいえば「お金を払って許してもらう」ということです。この「許してもらう」という要素が刑事事件では非常に重要であり、その点が民事事件とは異なるところです。

つまり、交通事故や不倫などの民事事件では、発生した損害の穴埋めこそが重要であり、双方の関心の対象もその点に絞られます。

「30万円の損害が発生したので、30万円を支払って解決しましょう」というのが民事事件における示談であり、それ以上の意味はありません。

当事者の「気持ち」が重要でないとは言いませんが、示談書にその点が記載されることは通常ありません(仮に記載しても法的に意味のあるものではありません)。

他方、刑事事件における示談では、被害者の「許す」という意思表示こそが最も重要です。なぜなら、検察官も裁判官も被害者の気持ち、すなわち「被害感情」を非常に重要視するからです

ですので、以下で解説する「示談」も単に発生した損害を賠償する場合の示談でなく、被害者に「許してもらう」場合の示談、すなわち示談書に「許す」「刑事処分を求めない」などの文言を設ける場合の示談を意味するとお考えください。

被害者に許してもらう以上、発生した損害の賠償(穴埋め)だけではなく、それにプラスして金銭を支払う必要があるので、単なる賠償金よりも高額になる可能性があります。

示談をするとどうなる?

では、示談をすることでどのようなメリットがあるのでしょうか?

先ほども述べたとおり、検察官や裁判官は被害者の気持ち(=被害感情)をとても重要視します。

ですので、検察官が「起訴か不起訴か」を決める段階では、示談をしていることで、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります

特に、痴漢・盗撮、不同意わいせつ、窃盗、詐欺、横領、暴行、傷害などの個人に対する犯罪では、初犯であれば、示談をすることで不起訴処分になる可能性がかなり高くなるといえるでしょう。

さらに、逮捕されている身柄事件の場合、示談をすることで早期に釈放される可能性も高くなります

また、もしも起訴されて裁判になってしまっても、被害者と示談をしているという事実は裁判所の量刑判断においてとても重要視されます。ですので、示談によって執行猶予がついたり、刑期が大きく短くなったりします

このように、刑事事件において示談をすることには、非常に大きなメリットがあるといえるでしょう。

示談金の相場はどれくらい?

では、示談金の相場はどれくらいでしょうか?以下では、それぞれの事件類型ごとに示談金の相場を見ていきたいと思います(なお、以下で述べるのはあくまで一般的な相場であり、交渉の結果によっては実際の示談金が相場の範囲外になることもあります)。

痴漢、盗撮

電車内や駅構内、ショッピングモール、路上等での痴漢、盗撮の示談金は概ね20万円〜50万円程度です。なお、風俗での盗撮も、同程度です。

実際は30万円程度になることが多いですが、被害者が未成年であったり、被害感情が強い場合は50万円近くになることもあります。

不同意わいせつ(痴漢以外)

ホテルや居室内、自動車内等で無理やりわいせつ行為をした場合など、痴漢以外の不同意わいせつ罪の示談金は概ね30〜100万円程度です。

なお、不同意わいせつの結果、被害者が怪我をしていた場合(不同意わいせつ致傷)は、150万円〜200万円程度になることもあります。

不同意性交

相手の意思に反して姦淫を行う不同意性交の示談金は、100万円〜300万円程度です。

被害者に与える苦痛は非常に大きく、悪質性が高い場合や被害者が怪我をしてしまった場合(不同意性交致傷)などは、150万円〜500万円程度になることもあります。

淫行条例(青少年保護育成条例)違反

18歳未満の未成年と性交渉を行った場合、各都道府県の青少年保護育成条例違反に該当することになりますが、示談金は30〜50万円程度です。被害者の年齢や行為の回数などによっても金額は変わってきます。

万引き、置き引き、自転車窃盗

被害額+5〜20万円程度が相場です。

空き巣(侵入窃盗)

被害額+5〜30万円程度が相場です。住居に侵入している分、万引きなどに比べると若干高額になる可能性があります。

詐欺、横領

被害額+5〜30万円程度です。

高齢者を狙ったオレオレ詐欺や被害額が高額に及ぶ場合などは、被害者に与える迷惑の程度が大きく、高額化する可能性があります。

器物損壊

被害額(損壊した物の評価額)+5〜10万円程度です。

暴行、傷害

被害者を怪我させない暴行罪の示談金は10〜20万円程度です。

他方、被害者が怪我をした場合は、傷害罪に該当することになりますが、その場合の示談金は怪我の程度によって大きく異なってきます。

全治1、2週間程度の軽微な傷害であれば、10〜30万円程度ですが、傷害の程度が大きく、被害者に後遺障害が残ってしまった場合は、被害者の逸失利益(怪我をしていなければ将来得られたであろう利益)も賠償しなければならないので、100万円〜300万円程度になることもあります(被害者が失明したり、半身不随になるなど、後遺障害の程度が非常に大きい場合は、これを大幅に超えた金額になる可能性もあります)。

交通事故、ひき逃げ(救護義務違反)

発生した物的損害、人的損害の程度によって大きく変わってくるので、具体的な数字をお示しするのは難しいところですが、物損で5万円〜30万円程度、人損のうち後遺症が発生しないもので10〜100万円程度、後遺障害が発生するもので100万円〜数千万円程度、死亡事故の場合で数千万円〜1億円程度です。

実際に発生した損害を合算して示談金を決定することになりますが、任意保険に加入している場合は、保険会社が被害者との示談交渉にあたることになるでしょう。なお、保険会社の示談交渉では、被害弁償のみに焦点が当てられることが多いので、被害者に「許してもらう」ために別途示談交渉を行う必要がある場合もあります。

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