刑事事件はどのように進んでいくのか?刑事事件の流れについて弁護士がわかりやすく解説します

ここでは、刑事事件の一般的な流れについて、在宅事件(身柄拘束されていない事件)と身柄事件(身柄拘束されている事件)に分けて解説していきたいと思います。

刑事事件の流れ図

刑事事件の流れを図にまとめると以下のようになります。

刑事事件の流れ

上の図を踏まえて、以下で順番に解説していきます。

犯罪事実の認知

刑事事件は警察によって犯罪事実が認知されることから始まります(なお、実際には犯罪事実がない場合もあるので、厳密には「犯罪と疑われる事実」というのが正確でしょうが、ここでは便宜上「犯罪事実」と表現します)。

警察が犯罪事実を認知するきっかけ(捜査の端緒)は、被害申告、告訴、告発、通報、自首、職務質問、マスコミ報道などさまざまです。

警察からの接触

警察は犯罪事実を認知した後、犯罪事実の内容や被疑者(犯罪を行ったと疑われる人)を特定するための捜査を行います。

捜査の結果、被疑者が実際に犯罪を行った疑いがあると判断すれば、警察は取調べを行うために被疑者に接触します。

その際、逃亡や証拠隠滅を防止するために被疑者の身柄を確保する必要があると判断した場合、警察は被疑者を逮捕します。被疑者が逮捕された事件のことを身柄事件といいます。

他方、警察が身柄の確保までは必要ないと判断した場合は、逮捕せず、在宅での捜査となります。この場合は在宅事件といいます。

以下では、在宅事件、身柄事件の順番で、一般的な流れを解説していきます。

在宅事件の場合

警察での取調べ

在宅事件の場合、被疑者は警察からの呼び出しに応じて警察署に出頭し、取調べを受けます。警察からは「⚪︎⚪︎日の⚪︎時に警察署に来てください」などと電話で呼び出されることが多いです。その日、仕事などで都合が悪ければ別日で調整してくれることも多いですが、出頭しない期間が長期に及ぶと逮捕される可能性もあるので注意が必要です。

何度か取調べをした後、警察は事件を検察庁に送致します。これを書類送検といいます。

検察官による処分決定

警察から書類送検を受けた検察官は、通常、自分でも被疑者を呼び出して取調べを行います。

被疑者の取調べを行った検察官は、それまでの捜査記録や取調べの結果などを踏まえて事件を起訴するか不起訴にするかを判断します。

検察官において、犯罪事実を立証できる十分な証拠がないと判断した場合、または、証拠は揃っているものの情状面を考慮して被疑者に処罰を与える必要がないと判断した場合は、事件を不起訴にします。

不起訴になればそこで事件は終結です。当然刑罰を受けることも前科がつくこともありません。

他方、被疑者の犯罪事実を立証できる証拠が十分あり、かつ、被疑者に対して刑罰を与えるのが相当であると判断した場合は、検察官は事件を起訴します。

起訴された場合は、裁判が始まります。なお、起訴されると「被疑者」から「被告人」と呼ばれるようになります。

起訴されると刑事裁判を受けることになり、刑罰を科されて前科がつく可能性が高くなるので、この段階で弁護士から不起訴処分とするよう検察官を説得することが重要になります。

裁判所での審判

検察官の起訴には①正式起訴と②略式起訴の2種類があり、②略式起訴の場合は簡易裁判所の裁判官が書面審査だけで判断します。したがって、実際に裁判所に行ったりする必要はありません。なお、略式起訴の場合は必ず罰金刑になります。したがって、法定刑に罰金刑が定められていない犯罪については、略式起訴となることはありません。

他方、正式起訴の場合は、正式な刑事裁判が行われることとなり、裁判所に出廷して、裁判官の面前で審理を受けることになります。

刑事裁判では、被告人が犯罪を行ったか否か、行ったとすればどのような刑罰を科すのが妥当から審理、判断されます。

裁判官が証拠を検討し、被告人が犯罪を行ったことが立証されていると判断すれば、有罪判決とし、被告人に一定の刑罰を科します。

他方、被告人が犯罪を行ったことが十分に立証できていないと判断した場合、裁判所は無罪判決を出します。

身柄事件の場合

身柄事件の流れについては「ご家族が逮捕された方へ」というコラムで詳細に解説しておりますので、そちらもご参照ください。

逮捕

被疑者を逮捕した警察は、その取調べを行い、48時間以内に被疑者を釈放するか、検察庁に送致するかを決めなければなりません。

軽微な事件などはここで釈放されることもあります。その場合は、それ以降在宅事件に切り替わります。

他方、検察庁への送致が必要であると警察が判断した場合、身柄とともに事件が検察庁に送致(送検)されます。

検察庁での取調べ(弁解録取)

送致を受けた検察官は、被疑者の取調べを行います。送致後最初に行われる取調べを弁解録取といいます。

その結果を踏まえて検察官は、被疑者を引続き身柄拘束(勾留)するか釈放するかを、送致から24時間以内に判断しなければなりません。

検察官は勾留の必要がないと判断した場合は、被疑者を釈放します。その場合、それ以降は在宅事件に切り替わります。

他方、勾留が必要と判断した場合、検察官は裁判所に勾留請求をします。

検察官が勾留請求をする前に弁護士から意見書を提出するなどして、身柄を釈放するよう検察官を説得することが重要です。

裁判所での勾留質問

検察官からの勾留請求を受けた裁判所では、裁判官が被疑者と面談して、事件についてさまざまな質問をします。これを勾留質問といいます。時間はだいたい10分程度です。

勾留質問をした裁判官はその内容や捜査資料を踏まえて、被疑者を勾留するかどうかを判断します。

裁判官が勾留の必要がないと判断すれば、そこで被疑者を釈放します。その場合は、そこで在宅事件に切り替わります。

他方、勾留の必要があると判断した場合は、裁判官は勾留決定を出し、被疑者の身柄を10日間拘束します。なお、勾留はさらに10日間まで延長されることがあるので、勾留期間は最長で20日間になります。

勾留質問に際して、弁護士が裁判官に意見書を提出するなどして勾留しないよう説得することが重要です。

また、もしも勾留されてしまった場合でも、準抗告という不服申立てを行うことが可能です。準抗告が認められると、勾留決定は取消され、被疑者の身柄は釈放されることになります。

勾留されても諦めずに、最後まで身柄解放に向けた弁護活動を行なっていく必要があります。

勾留

勾留された場合は、最長で20日間身柄を拘束されてしまいます。

その間、警察や検察は被疑者を起訴するか不起訴にするかを判断するための証拠を収集します。

検察官による処分決定

検察官は勾留期間中に収集された証拠を踏まえて、被疑者を起訴にするか不起訴にするか判断します。

検察官が犯罪事実を立証できる十分な証拠がないと判断した場合や、証拠は揃っているものの、情状面を考慮して被疑者に刑罰を科す必要がないと判断した場合、検察官は事件を不起訴にします。

不起訴になれば、事件はそこで終結します。刑罰を受けることも前科がつくこともありません。

他方、被疑者の犯罪事実を立証できる証拠が十分あり、かつ、被疑者に対して刑罰を科すのが相当であると検察官が判断した場合は、起訴されることになります(起訴されると「被疑者」から「被告人」と呼ばれるようになります)。

起訴には①正式起訴(公判請求)と②略式起訴の2種類があり、②略式起訴の場合は簡易裁判所の裁判官が書面審査だけで判断します。したがって、実際に裁判所に行ったりする必要はありません。また、略式起訴の場合はそこで釈放され、それ以上身柄が拘束されることはありません。なお、略式起訴では必ず罰金刑になります。

他方、正式起訴(公判請求)の場合は、刑事ドラマなどでよく見るような通常の刑事裁判が行われることとなり、裁判所に出頭して、裁判官の面前で審理を受けなければなりません。

起訴されると刑罰を科されて前科がつく可能性が高くなるので、この段階で弁護士から不起訴処分とするよう検察官を説得することが重要になります。

保釈請求

正式起訴(公判請求)されると判決が出るまでの間さらに身柄の拘束が続きます。身柄を解放してもらうためには保釈請求が必要になります。

保釈とは、一定の金銭(保釈保証金)を人質代わりとして裁判所に納め、その代わりに身柄を解放してもらうという制度です。裁判所に納めた保釈保証金は、逃亡や証拠隠滅をせずに裁判が終われば全額戻ってきます。保釈保証金の金額は通常の事件で数百万円程度になりますが、用意できない場合は保釈保証支援協会から借入れをすることが可能です。

裁判所が保釈を認めれば、保釈保証金の納付後に身柄が解放されます。

裁判所での審判

刑事裁判では、被告人による犯罪事実の有無や、被告人に課すべき刑罰の程度(量刑)が審理、判断されます。

裁判官が証拠を検討し、被告人による犯罪事実が立証されていると判断すれば、裁判官は有罪判決を下し、被告人に一定の刑罰を科します。

他方、被告人による犯罪が確実に立証できていないと判断した場合は、無罪判決を出します。

刑事事件は早めに弁護士に相談を

刑事事件で被疑者や被告人という立場に立たされるのは肉体的、精神的な苦痛、不安が極めて大きく、非常に過酷なことです。

身柄の解放や不起訴処分の獲得、執行猶予付き判決の獲得などにより、そのような苦痛、不安から解放されるためには経験のある弁護士が早い段階で弁護活動を開始する必要があります。

刑事事件はスピードが命です。

もしも、被疑者や被告人の立場に立たされた場合は、早期に弁護士にご相談ください。

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