遺産分割はどのように進めればよい?

遺産分割の流れと注意点について弁護士が解説します

相続人が一人しかいない場合や被相続人がすべての遺産について遺言書で遺産分割の方法を定めている場合などは別ですが、遺産相続の場面では基本的に遺産分割の手続きを避けて通れません。そこで、ここでは遺産分割の流れについて解説していきたいと思います。

遺産分割のおおまかな流れ

遺産分割とは、被相続人の遺された財産を相続人間でどのように分けるのかを決めることをいいます。

遺産分割のおおまかな流れは以下のとおりです。

  1. 相続人調査
  2. 相続財産調査
  3. 遺言書調査
  4. 遺産分割協議
  5. (遺産分割協議が調わない場合)遺産分割調停
  6. (遺産分割調停が調わない場合)遺産分割審判
  7. 財産移転

以下で一つずつ見ていきましょう。

① 相続人調査

遺産分割を進める前提として相続人の調査は必須です。

なぜなら、遺産分割が終わった後で相続人に漏れが見つかった場合、その遺産分割はすべて無効になるからです。

また、そもそも相続人調査をしていないと、遺産分割をしても預金の払戻しや不動産の移転登記ができません。

そこで、遺産分割をするに当たってはまず相続人として誰がいるのかを確定させるための調査が必要不可欠です。

相続人調査については、以下の関連記事で詳しく解説をしておりますので、こちらをご参照ください。

関連記事:「相続人はどうやって調べればいい?

② 相続財産調査

遺産分割をするためには、分割の対象となる財産の調査も必要です。

相続人のように漏れがあれば無効になるというわけではないのですが、遺産分割が終わった後で新たな財産が見つかった場合、改めてその財産について協議を行わなければならないなど非常に面倒です。

また、遺産分割においては、遺産全体として何があるかを踏まえて協議を行うので、後で新たな財産が出てくると遺産分割の妥当性や公平性が害されてしまうおそれもあります。

相続放棄をすべきか否かを検討するためにも遺産の全体像を把握しておくことは必要ですから、相続財産の調査も欠かさず行うようにしましょう。

相続財産調査については、以下の関連記事で詳しく解説しておりますので、こちらをご参照ください。

関連記事:「相続財産の調査はどのようにすればよいか?

③ 遺言書調査

遺産分割の方法は遺言書の有無によって大きく異なります。

例えば、遺言書がなければ民法で定められた割合に従って遺産を分割しますが、遺言書に遺産分割の割合が指定されていた場合は、その指定された割合に従って遺産を分割することになります。

また、分割の割合だけではなく、具体的にどの遺産を誰に承継させるかまで遺言書に定められていた場合は、その指定どおりに遺産を分割します。

このように遺言書の有無やその内容によって遺産分割の様相は大きく異なりますので、遺言書が存在するか否かについても調査は必須といえるでしょう。

遺言書の調査方法については、以下の関連記事で詳しく解説しておりますので、こちらをご参照ください。

関連記事:「身内の遺産を相続することになったら何をすればいいの?

④ 遺産分割協議

相続人、相続財産、遺言書の有無がわかったらいよいよ相続人間で遺産分割の方法について協議をしていきます。

相続分は法律や遺言書で定められているのになぜ協議が必要かというと、遺産には預貯金や株式、動産、不動産などさまざまな財産が含まれており、誰がどの財産を引き継ぐのかを決めなければならないからです。

例えば、遺産として預貯金1000万円と不動産1000万円があり、これを二人の子どもAとBで分けるとします。「数字上は同じ価値なんだからAが預貯金、Bが不動産とかでいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、預貯金と不動産では資産の流動性が全く異なるので、AもBも預貯金が欲しいと思うかもしれません。

このように相続分や資産の価額というのはあくまで数字上の話でしかなく、実際の遺産分割では各相続人の具体的な要求や利害を調整しながら、誰がどの遺産を引き継ぐのかを話し合うことが必要になります(だからこそ遺産分割は揉めるのです!)。

遺産分割を円滑に進めるためには、弁護士が間に入って適切に交通整理を行うことが不可欠といえるでしょう。

遺産分割協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成し、相続人全員で署名、押印します。

遺産分割協議書の作成方法や注意点については、以下の関連記事で詳しく解説しておりますので、こちらをご参照ください。

関連記事:「遺産分割協議書の書き方

⑤(遺産分割協議が調わない場合)遺産分割調停

遺産分割協議で合意に至らなかった場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を行います。

調停というのは家庭裁判所での話し合いであり、調停委員と呼ばれる人たち(通常2名)が間を取り持ってくれます。

あくまで話し合いによる解決を目指す手続きなので、相続人全員の合意に至らない場合は、調停が不成立となり、遺産分割審判に移行します。

⑥(遺産分割調停が調わない場合)遺産分割審判

調停が不成立となれば自動的に遺産分割審判に移行します。

審判では、調停と異なり、裁判官が具体的な遺産分割の方法について強制的に判断してくれます。「判決」と同じようなものだと理解していただいて構いません。

協議、調停を経て相続人間の話し合いではどうしても解決しない場合は、このように裁判官が判断してくれるという制度になっているわけです。

⑦ 資産の移転

協議や調停、審判によって具体的な分割方法が決まったら、預貯金の払戻しや不動産の移転登記など、実際に資産を移転する手続きを行います。

その際は、遺産分割協議書や調停調書、審判書が必要になりますので、なくさないように注意してください(もっとも、調停調書と審判書は裁判所に請求すれば再発行してくれます)。

遺産分割の具体的な方法

これまで遺産分割の手続きについて解説してきましたが、ここでは遺産分割の内容面、つまり実際に遺産を分割する際の方法としてどのようなものがあるのかを解説していきます。

以下では、現物分割、代償分割、換価分割について解説しますが、これらは遺産分割協議だけでなく、調停、審判でも採用されています。

また、実際の遺産分割の場面ではどれか一つが選ばれるということはあまりなく、現物分割、代償分割、換価分割を複雑に組み合わせながら、各相続人の利害を調整していくことが多いといえるでしょう。

① 現物分割

現物分割とは、文字どおり、遺産を現物のまま分割することです。

例えば、土地と建物は妻が取得し、預貯金は長男と次男が半分ずつ取得する、などが現物分割にあたります。

複数の遺産があり、うまく計算の帳尻を合わせることができる場合は現物分割も有効な方法です(もちろん、相続人全員がその分割方法に同意することが前提です)。

また、例えば広大で均質な土地が遺産となっている場合などは、各相続人が相続分に応じた面積の土地を取得するといった方法もありうるでしょう。

しかし、都会のそれほど大きくない土地と建物しか相続財産がないという場合はどうすべきでしょうか?

これを相続人に応じた面積で分割してしまうと、土地が小さくなりすぎてしまい、価値が下がってしまいます。

他方、相続人全員の共有とした場合、使用や管理、処分の際に面倒です。

そこで、このような場合は、次の代償分割や換価分割が有効な方法になります。

② 代償分割

代償分割とは、特定の相続人が遺産の現物を取得する代わりに、相続分を超えてしまった部分について金銭(代償金)で精算するという分割方法です。

例えば、被相続人Aが1000万円の土地と建物を残して死亡しました。相続人はAの子XとYです。遺産分割協議の結果、Xがその土地建物を取得することになりました。この場合、Xが代償金として500万円をYに支払うことで、双方の取り分を均等にするというのが代償分割です(もっとも、実際には不動産よりも現預金の方が資産としての有用性が高いので、代償金を若干ディスカウントすることも多いです)。

③ 換価分割

換価分割とは、遺産の現物を売却などによって換価し、得られた金銭を分割するという方法です。

先ほどの例でXもYも不動産の取得を望まなかった場合、不動産を1000万円で売却してしまい、売得金を500万円ずつで分割するのが換価分割です(もっとも、売却には仲介手数料などの経費がかかるので、実際に手元に残る金額は若干減るのが通常です)。

遺産分割は弁護士に相談を

遺産分割は各種の調査や遺産分割協議書の作成など、手続面で高度な専門知識が必要になるとともに、実際に分割方法を決めるにあたっても、相続人間の複雑な利害を調整しながら交渉していかなければなりません。

本人どうしでの交渉では感情面の対立もあり、紛争が錯綜、長期化するおそれが大きいといえるでしょう。

遺産分割を円滑に進めていくためには、弁護士の介入が必要です。

遺産分割でお困りの方は早めのご相談をおすすめします。

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