交際相手・婚約者が実は既婚者なのに独身と偽っていた。慰謝料請求したい。

独身だと思っていた彼が実は既婚者だった。何か請求できないの?

1 交際相手に対して慰謝料請求できる場合があります

交際相手が独身だと思い、結婚を見据えて交際をしていた(肉体関係あり)場合には、交際相手に対して慰謝料請求できる場合があります。

また、結婚する気がないのに結婚するとうそをつかれていた場合も慰謝料請求できる場合があります。

実際、貞操権が侵害されたとして慰謝料請求を認めた裁判例は以下のように述べています。

「女性が、その情交関係を結んだ動機が主として男性の詐言を信じたことに原因している場合において、男性側の情交関係を結んだ動機その詐言の内容程度およびその内容についての女性の認識等諸般の事情を斟酌し、右情交関係を誘起した責任が主として男性にあり、女性の側におけるその動機に内在する不法の程度に比し、男性の側における違法性が著しく大きいものと評価できるときには、女性の男性に対する貞操等の侵害を理由とする慰藉料請求は許容されるべきであり、」(最判昭和44年9月26日)

つまり、肉体関係を持つに至る動機として、交際相手が嘘をつき、これを信じた場合には、その経緯やうその内容等の様々な経緯を考慮して、慰謝料請求が認められる場合もある、としました。

交際相手が独身だと思っていたら既婚者だった場合に、どのような場合でも慰謝料が請求できるわけではありませんが、交際期間が長期に及んでいた場合や将来結婚の約束をしていた場合などは慰謝料が請求できる可能性があります。

なお、貞操権侵害の慰謝料の額については、不貞慰謝料の場合とは同様に考えられない場合もありますが、交際期間が数年単位に及んでいる場合や結婚の約束をしていた場合であれば、100万円前後が認められることも十分あります。また、相手の子を妊娠していた場合は、精神的苦痛やその他の損害の程度が極めて大きく、200万円を超える額が認められた裁判例もあります。

2 貞操権侵害の証拠には何がある?

貞操権侵害の証拠とは、すなわち①相手が独身であると偽っていたこと、②相手と肉体関係を持ったことを示す証拠のことです。

①については、LINEやメールで相手が独身であることを前提とするようなやり取りがされていれば、有力な証拠になります。

また、既婚者であることが判明した際のやり取りも重要です。相手男性が実は結婚していたことを打ち明ける内容のやり取りは、それまで独身であると偽っていたことを前提とするものなので、極めて重要です。

既婚者であると判明した際に、相手男性を糾弾するようなメッセージを送っている場合や、逆に相手男性からの謝罪のメッセージが届いていた場合も有力な証拠となるでしょう。

さらに、将来の結婚を仄めかすようなやり取りも、独身と偽っていたことの証拠となり得ます。もっとも、これについては「現在の妻と離婚した上で結婚する」という趣旨にも受け取れるので、どのような文脈でそのようなやり取りがされていたかが重要になってくるでしょう。

その他には、相手男性が自分と一緒に写っている写真で結婚指輪をしていないことなども一つの状況証拠となり得ます。

②の証拠も、同じくLINEやメールでのやり取りで肉体関係があったことを前提とするやり取りがされていれば、有力な証拠になります。

その他には日記や手帳の記載、ホテルの領収書、妊娠中絶の同意書などが証拠となり得ます。

3 弁護士へまず相談することをお勧めします

既婚者の不倫の場合とは異なる複雑な内容の判断が必要となります。一概にも言い切れない点もありますので、まずは弁護士に詳細な事情をご相談いただき、慰謝料を求めることができるのか、慰謝料の額はどの程度なのかの分析をすることをお勧めします。


関連ページ

既婚者と知らなかったのに奥さんから慰謝料を請求された!

keyboard_arrow_up

0522537288 問い合わせバナー 法律相談について