刑事事件の公訴時効は何年?犯罪別一覧と時効がない罪を解説

刑事事件の公訴時効は何年?犯罪別一覧と時効がない罪を解説

「自分が関わった事件はもう時効なのか」「いつまで逮捕される可能性があるのか」と不安を感じている方は少なくありません。

刑事事件の時効には、検察官が起訴できる期限である「公訴時効」と、確定した刑罰の執行期限である「刑の消滅時効」の2種類があります。

本記事では、犯罪別の公訴時効年数を一覧表で整理したうえで、時効が停止するケースや制度が存在する理由まで、わかりやすく解説します。

刑事事件における公訴時効とは?

刑事事件における公訴時効とは?

公訴時効とは、犯罪が行われてから一定の期間が経過すると、検察官がその事件を起訴(公訴提起)できなくなる制度です。根拠となるのは刑事訴訟法第250条で、犯罪ごとの法定刑に応じて時効期間が定められています。

時効が完成すると、裁判所は「免訴」の判決を下すことになり(刑事訴訟法第337条4号)、有罪・無罪の判断がされないまま裁判が打ち切られます。つまり、時効成立後は、たとえ犯人が特定されていたとしても刑事裁判で罪を問うことができません。

参考:法務省「刑法及び刑事訴訟法 参照条文

公訴時効と消滅時効(刑の時効)の違い

公訴時効と消滅時効(刑の時効)の違い

「時効」という言葉は同じでも、公訴時効と消滅時効(刑の時効)はまったく別の制度です。公訴時効は起訴の期限であるのに対し、消滅時効は裁判で確定した刑罰を執行できる期限を意味します。

公訴時効 消滅時効(刑の時効)
意味 検察官が起訴できる期限 確定した刑の執行ができる期限
根拠法令 刑事訴訟法第250条 刑法第31条・第32条
起算点 犯罪行為が終わった時 刑の言い渡しが確定した時
実務上の適用 頻繁に問題となる ほとんど適用されない

実務上、刑が確定すればすみやかに執行されるため、消滅時効が成立するケースはきわめて稀です。

一般的に「刑事事件の時効」といえば、公訴時効を指すと考えてよいでしょう。

刑事事件の公訴時効は何年?

刑事事件の公訴時効は何年?

公訴時効の年数は、犯罪の法定刑の重さによって決まります。大きく分けると、次の3つの区分で整理できます。

  • 人を死亡させていない犯罪の公訴時効
  • 人を死亡させた犯罪の公訴時効
  • 公訴時効がない犯罪

それぞれ詳しく見ていきましょう。

人を死亡させていない犯罪(窃盗・詐欺・傷害など)の公訴時効

人を死亡させていない犯罪の公訴時効は、刑事訴訟法第250条第2項に定められています。 法定刑の上限が重いほど時効期間も長くなる仕組みです。

法定刑の上限 時効期間 主な犯罪例
死刑にあたる罪 25年 外患誘致罪など
無期の拘禁刑にあたる罪 15年 通貨偽造罪など
長期15年以上の拘禁刑にあたる罪 10年 傷害罪・強盗罪など
長期15年未満の拘禁刑にあたる罪 7年 窃盗罪・詐欺罪・横領罪など
長期10年未満の拘禁刑にあたる罪 5年 業務上過失傷害罪など
長期5年未満の拘禁刑または罰金にあたる罪 3年 暴行罪・名誉毀損罪など
拘留または科料にあたる罪 1年 軽犯罪法違反など

たとえば、詐欺罪の法定刑は10年以下の拘禁刑なので、公訴時効は7年です。犯罪が行われた日から7年が経過すると、検察官は起訴できなくなります。

人を死亡させた犯罪(傷害致死・危険運転致死など)の公訴時効

人を死亡させた犯罪については、2010年4月27日の法改正で公訴時効が大幅に延長されました。刑事訴訟法第250条第1項に基づき、以下の時効期間が適用されます。

法定刑の上限 時効期間 主な犯罪例
無期の拘禁刑にあたる罪 30年 不同意性交等致死罪など
長期20年の拘禁刑にあたる罪 20年 傷害致死罪・危険運転致死罪など
上記以外の拘禁刑にあたる罪 10年 過失運転致死罪・業務上過失致死罪など

この改正は、被害者遺族から「時の経過によっても処罰を求める気持ちは消えない」という強い声が上がったことが大きなきっかけです。

なお、改正時点ですでに時効が完成していた事件には適用されませんが、公訴時効が完成していない事件には改正後の期間が適用されます。

公訴時効がない犯罪

2010年の法改正により、人を死亡させた罪のうち、法定刑に死刑が含まれる犯罪については公訴時効が撤廃されました。具体的には、殺人罪・強盗殺人罪・強盗不同意性交等致死罪などが該当します。

改正前は殺人罪にも25年の公訴時効がありましたが、現在は何年経過しても起訴が可能です。また、最高裁判所は2015年12月3日の判決で、時効撤廃を改正前の事件にさかのぼって適用することについても合憲と判断しています。

刑事事件の公訴時効はなぜ存在するのか?

刑事事件の公訴時効はなぜ存在するのか?

「犯罪者が時間の経過で罪を逃れるのはおかしい」と感じる方もいるかもしれません。しかし、公訴時効には法的な合理性があり、主に次の3つの理由から制度が維持されています。

  • 時間経過により証拠が散逸し、事実認定が困難になるから
  • 社会的な処罰感情が時間とともに薄れるから
  • 長年にわたる社会生活の安定を尊重すべきとされるから

それぞれ詳しく見ていきましょう。

時間経過により証拠が散逸し事実認定が困難になるから

時間が経つほど、物的証拠は劣化・紛失し、目撃者の記憶もあいまいになっていきます。 こうした状態で裁判を行えば、証拠不十分のまま有罪とされる「冤罪」のリスクが高まります。

公訴時効は、正確な事実認定ができなくなった段階で無理に裁判を行うことを防ぎ、被告人の権利を守る役割も果たしているのです。

社会的な処罰感情が時間とともに薄れるから

犯罪が発生した直後は社会全体に「犯人を罰してほしい」という強い感情がありますが、年月の経過とともにその感情は少しずつ薄れていきます。こうした考え方は「応報感情の減衰」と呼ばれ、刑事政策の分野で広く認められている理論です。

最高裁判所も、公訴時効制度の趣旨について「処罰の必要性と法的安定性の調和を図ること」にあると示しています。

長年にわたる社会生活の安定を尊重すべきとされるから

犯行後、長期間にわたって逮捕されずに生活してきた人には、家庭や仕事など社会的なつながりが形成されています。そのような現状を突然覆すことは、本人だけでなく周囲にも大きな影響を与えます。

法律は、長い時間をかけて築かれた生活の安定にも一定の保護を与えるべきだという考え方に基づき、時効という制度を設けています。また、限られた捜査資源を新しい事件に集中させるという実務上の要請もあります。

刑事事件の公訴時効が停止・延長されるケース

刑事事件の公訴時効が停止・延長されるケース

公訴時効は、常に一定のペースで進行するわけではありません。一定の条件を満たすと時効のカウントが一時的に止まる(停止する)ケースがあります。具体的には、次の3つの場合です。

  • 犯人が国外にいる場合(海外逃亡)
  • 共犯者が裁判を受けている場合
  • 性犯罪の被害者が18歳未満の場合

それぞれ詳しく見ていきましょう。

犯人が国外にいる場合(海外逃亡)

刑事訴訟法第255条第1項により、犯人が国外にいる期間中は公訴時効の進行が停止します。これは逃亡目的かどうかに関係なく、一時的な海外渡航であっても適用されます(最高裁平成21年10月20日決定)。

たとえば、公訴時効が7年の詐欺罪で、犯行の翌年に犯人が5年間海外に滞在した場合、その5年間は時効がカウントされません。帰国後に残りの時効期間が再開するため、「海外に逃げれば時効が成立する」という考えは誤りです。

共犯者が裁判を受けている場合

共犯者のうち一人が起訴されると、その裁判が続いている間は、他の共犯者に対する公訴時効も停止します(刑事訴訟法第254条第2項)。

たとえば、AとBが共謀して犯罪を行い、Aだけが先に逮捕・起訴された場合、Aの裁判が続いている間はBの時効も進みません。これは、共犯者の一部だけが時効で逃れることを防ぐための規定です。

性犯罪の被害者が18歳未満の場合

2023年7月13日の刑法改正により、性犯罪の公訴時効には2つの大きな変更が加えられました。

まず、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪などの性犯罪について、公訴時効が従来よりそれぞれ5年延長されました。さらに、被害者が18歳未満の場合、被害者が18歳に達するまでの期間は時効の進行が停止する特例が設けられています(刑事訴訟法第250条第3項・第4項)。

具体的には、15歳の被害者が不同意性交等の被害を受けた場合、18歳までの3年間は時効が停止するため、時効期間は「3年+15年=18年」となります。これは、幼少期の被害者が成長して自ら被害を訴えられるようになるまでの期間を考慮した規定です。

参考:内閣府男女共同参画局「共同参画 2023年9月号

刑の消滅時効(刑の時効)とは

刑の消滅時効(刑の時効)とは

刑の消滅時効とは、裁判で刑が確定した後、一定期間その刑が執行されなかった場合に、刑罰の執行権が消滅する制度です(刑法第31条・第32条)。公訴時効が「起訴の期限」であるのに対し、消滅時効は「刑の執行の期限」である点が異なります。

刑の種類 消滅時効の期間
死刑 30年
無期の拘禁刑 20年
10年以上の有期の拘禁刑 15年
3年以上10年未満の拘禁刑 10年
3年未満の拘禁刑 5年
罰金 3年
拘留・科料・没収 1年

ただし、実務上は刑が確定すればすみやかに執行されるため、消滅時効が適用されるケースはほとんどありません。消滅時効が問題となりうるのは、在宅起訴されて実刑判決を受けた被告人が、収容前に逃亡した場合など、きわめて例外的な場面に限られます。

刑事事件の時効後でも賠償請求はできる?民法上の時効との関係

刑事事件の時効後でも賠償請求はできる?民法上の時効との関係

刑事事件の公訴時効が成立しても、民事上の損害賠償請求権がただちに消滅するわけではありません。刑事の時効と民事の時効はまったく別の制度だからです。

民法第724条によると、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は次のとおりです。

  • 被害者が損害と加害者を知った時から3年(人の生命・身体を害する不法行為は5年)
  • 不法行為の時から20年

たとえば、傷害事件の公訴時効(10年)が成立した後でも、被害者が加害者を知ってから5年以内であれば、民事訴訟で損害賠償を請求できる可能性があります。

参考:法務省「事件や事故に遭われた方へ(損害賠償請求権に関するルール変更)

刑事事件の公訴時効に関するよくある質問

刑事事件の公訴時効に関するよくある質問

公訴時効の起算日はいつか

公訴時効は、「犯罪行為が終わった時」から進行します(刑事訴訟法第253条第1項)。 たとえば傷害罪なら暴行によってケガの結果が発生した時点、詐欺罪なら被害者からお金を受け取った時点が起算日となります。

監禁罪のような継続犯の場合は、犯罪行為が完全に終了した時点(被害者が解放された時点)から時効が進行します。また、時効の計算では初日を1日目として数える「初日算入」のルールが適用される点にも注意が必要です(刑事訴訟法第55条第1項ただし書き)。

時効完成直前でも逮捕されることはあるか

時効が完成する前であれば、どのタイミングでも逮捕・起訴される可能性があります。時効の残り日数が少なくても、捜査機関が証拠を確保できれば逮捕に踏み切ることは十分にあり得ます。

実際に、時効成立の直前に被疑者が特定され、駆け込みで逮捕・起訴に至った事例も報道されています。「あと少しで時効だから大丈夫」という考えは危険であり、時効前に自首すれば刑が減軽される可能性もあります(刑法第42条)。

公訴時効と告訴期限(親告罪の告訴期間)はどう違うか

公訴時効と告訴期限は混同されやすいですが、まったく別の概念です。公訴時効は「検察官が起訴できる期限」、告訴期限は「被害者が告訴できる期限」を指します。

告訴が必要な犯罪(親告罪)では、告訴期間内に告訴がなければ検察官は起訴できません。一方、非親告罪では告訴がなくても検察官の判断で起訴が可能であり、公訴時効のみが期限となります。

時効が完成した後も民事上の責任は残るか

刑事事件の公訴時効が完成しても、民事上の損害賠償責任は別途存続している可能性があります。

前述のとおり、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者が損害と加害者を知った時から3年(生命・身体の侵害は5年)、または不法行為の時から20年で時効にかかります。刑事の時効と民事の時効は起算点も期間も異なるため、刑事で時効が成立していても民事での請求が可能なケースは少なくありません。

まとめ

まとめ

刑事事件の公訴時効は犯罪の法定刑に応じて1年〜30年に設定されており、殺人罪など法定刑に死刑が含まれる犯罪については2010年の法改正で撤廃されています。犯人が海外にいる場合や共犯者が裁判中の場合には時効が停止するため、時間が経てば必ず逃れられるわけではありません。

また、刑事の時効が成立しても民事上の賠償責任が残る可能性があるため、被害者・加害者いずれの立場であっても、時効に関する不安がある場合は早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

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