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法律事務所から赤い封筒が届いたら?確認すべきことや対処法を解説

2026-08-05

法律事務所から赤い封筒が届いたら?確認すべきことや対処法を解説

法律事務所から突然赤い封筒が届くと、「これは何?」「無視していいの?」と不安になる方が多いのではないでしょうか。

赤い封筒は、未払いの借金に関する最終段階の督促である可能性が高く、放置すると裁判や差し押さえに発展するおそれがあります。一方で、時効の援用という方法により返済義務がなくなるケースもあるため、正しい知識をもって対処することが重要です。

本記事では、赤い封筒の意味や届く理由から無視した場合のリスクまで、具体的な対処法をわかりやすく解説します。

法律事務所から届く赤い封筒とは

法律事務所から届く赤い封筒とは

法律事務所から届く赤い封筒は、借金の返済を求める最終段階の催告書が入っていることが一般的です。通常、未払いの債務がある場合、債権者はまず白い封筒で通知を送り、それでも反応がなければ黄色い封筒、最終的に赤い封筒へと段階が上がっていきます。

赤い封筒は、法的な手続き(裁判や強制執行)に移行する直前であることを意味しているため、届いた時点で早急に内容を確認し対応することが大切です。

なお、封筒の色自体に法的な決まりがあるわけではありませんが、多くの法律事務所や債権回収会社がこのような色分けの方法を採用しています。

法律事務所から赤い封筒が届いたらまず確認すべきこと

法律事務所から赤い封筒が届いたらまず確認すべきこと

赤い封筒が届いたら、慌てず次の2点を確認しましょう。

  • 差出人と書類の種類を確認する
  • 届いた理由を把握する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

差出人と書類の種類を確認する

最初に確認すべきは、封筒に記載されている差出人の名称です。法律事務所名が記載されている場合は、日本弁護士連合会の「弁護士検索」で実在する事務所かどうかを調べましょう。存在しない事務所名であれば、架空請求の可能性があります。

次に、同封されている書類の種類を確認します。たとえば「催告書」は支払いを促す通知、「督促状」はより強い催促、「通告書」は法的手続きへの移行を予告する書類です。書類の種類によって緊急度が異なるため、どの段階の通知なのかを把握することが重要です。

参考:日本弁護士連合会「弁護士検索

届いた理由を把握する

赤い封筒が届く主な理由は、過去の借入やクレジットカードの未払い債権が法律事務所に回収委託されたケースです。たとえば、消費者金融やクレジットカード会社が自社で回収できなかった債権を、法律事務所や債権回収会社(サービサー)に委託して請求してくることがあります。

また、債権譲渡により、元々の借入先とは異なる会社名で届くことも少なくありません。「身に覚えがない」と思っても、家族名義の借入の保証人になっていた場合や、何年も前の借金が原因であることもあるため、書類の内容を丁寧に確認することが大切です。

法律事務所からの赤い封筒を無視するとどうなるか

法律事務所からの赤い封筒を無視するとどうなるか

赤い封筒を無視し続けると、段階的に深刻な事態へと発展します。具体的には次の3つのリスクがあります。

  • 裁判所からの訴状や支払督促が届く
  • 給与や預貯金の差し押さえを受ける
  • 遅延損害金が増え続ける

それぞれ詳しく見ていきましょう。

裁判所からの訴状や支払督促が届く

法律事務所からの催告を無視し続けると、債権者は裁判所を通じた法的手続きに移行します。具体的には、簡易裁判所から「支払督促」が届くことがあります。これは裁判所の書記官が債務者に対して金銭の支払いを命じる制度です。

支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てなければ、仮執行宣言が付与され、強制執行が可能な状態になります。また、裁判所からの特別送達を無視して欠席すると、相手側の主張がそのまま認められる「欠席判決」が下されるおそれがあります。

参考:裁判所「支払督促

参考:法務省「督促手続について

給与や預貯金の差し押さえを受ける

判決や仮執行宣言が確定すると、債権者は強制執行を申し立てることができます。差し押さえの対象になるのは、給与や預貯金口座などです。

給与の場合、税金等を差し引いた手取り額の4分の1(手取りが44万円を超える場合は33万円を除いた全額)が差し押さえの対象になります。

預貯金口座については、差押命令が届いた時点の残高がそのまま対象になるため、生活資金が突然引き出せなくなるケースもあります。

参考:裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)

遅延損害金が増え続ける

赤い封筒を放置している間も、元金に対する遅延損害金は日々加算されていきます。遅延損害金の利率は、消費者金融やクレジットカードの場合、年14.6%〜20.0%程度に設定されていることが一般的です。

たとえば、元金50万円を5年間放置した場合、年利14.6%であれば遅延損害金だけで約36万円以上になる計算です。放置期間が長くなるほど返済額が膨らむため、早い段階で対応を検討することが重要です。

赤い封筒を送ってきた法律事務所へ自分で連絡する際の注意点

赤い封筒を送ってきた法律事務所へ自分で連絡する際の注意点

赤い封筒が届いた後、自分で差出人の法律事務所に連絡しようと考える方もいるでしょう。ただし、安易に連絡すると不利になる場合があるため注意が必要です。

とくに避けるべきなのは、電話口で「払います」「分割にしてください」といった発言をすることです。このような発言は「債務の承認」にあたり、すでに成立していた可能性のある時効がリセット(更新)されるおそれがあります。

連絡する前にまず、最終返済日がいつだったかを確認し、時効の可能性がないかを検討しましょう。判断がつかない場合は、先に弁護士や司法書士に相談してから対応するのがもっとも安全な方法です。

法律事務所から届いた赤い封筒への対応を弁護士・司法書士に相談するメリット

法律事務所から届いた赤い封筒への対応を弁護士・司法書士に相談するメリット

赤い封筒への対応を自分で行うのが不安な場合は、弁護士や司法書士に相談することで問題をスムーズに解決できる可能性が高まります。

大きなメリットの一つが、受任通知の送付により、債権者からの直接的な取り立てが止まることです。貸金業法第21条第1項第9号では、弁護士や司法書士が債務処理を受任したことを書面で通知した場合、正当な理由なく債務者へ直接取り立てることが禁止されています。

また、時効援用の可否を正確に判断してもらえるため、自分で連絡して時効をリセットしてしまうリスクも避けられます。 相談のタイミングは赤い封筒が届いた直後が理想的です。放置するほど選択肢が狭まるため、早めの相談をおすすめします。

参考:e-Gov法令検索「貸金業法

法律事務所からの赤い封筒に関する相談先の選び方

法律事務所からの赤い封筒に関する相談先の選び方

弁護士や司法書士に相談しようと決めても、どの事務所に依頼すればよいか迷う方は多いでしょう。 相談先を選ぶ際は、次の3つのポイントを確認することが大切です。

  • 債務整理の実績が豊富である
  • 費用体系が明確である
  • 初回相談が無料である

それぞれ詳しく見ていきましょう。

債務整理の実績が豊富である

相談先を選ぶ際にもっとも重視すべきなのは、時効援用や任意整理などの債務整理に関する実績が豊富かどうかです。

とくに、債権回収会社との交渉経験が豊富な事務所であれば、スムーズな解決が期待できます。「赤い封筒」「債権回収」などのキーワードで情報発信をしている事務所は、この分野に力を入れている可能性が高いでしょう。

費用体系が明確である

依頼前に、着手金・成功報酬・実費といった費用の内訳が明確に提示されるかどうかも大切なポイントです。「費用は事件終了後にお伝えします」というような事務所は避けるのが無難です。

具体的には、相談時に見積書や料金表を提示してくれる事務所が信頼できます。追加費用が発生する条件(裁判に移行した場合など)も事前に確認しておくことで、後からのトラブルを防げます。

初回相談が無料である

多くの弁護士事務所・司法書士事務所では、債務整理に関する初回相談を無料で受け付けています。まずは無料相談を活用し、複数の事務所を比較したうえで依頼先を決めるとよいでしょう。

なお、弁護士と司法書士では対応できる範囲が異なります。法務大臣の認定を受けた司法書士は、訴訟の目的となる物の価額が140万円以下の事件について代理業務を行えますが、それを超える場合は弁護士への依頼が必要です。

相談時にご自身の債務額を伝え、どちらに依頼すべきかを確認しましょう。

参考:法務省「司法書士の簡裁訴訟代理等関係業務の認定

法律事務所から身に覚えがない赤い封筒が届いた場合の対応

法律事務所から身に覚えがない赤い封筒が届いた場合の対応

身に覚えのない赤い封筒が届いた場合、まず疑うべきは架空請求の可能性です。法務省では、「法務省管轄支局 国民訴訟通達センター」などの名称を使った架空請求が多発していると注意喚起しています。

本物の訴状は裁判所から「特別送達」で届き、郵便職員が手渡しするのが原則です。普通郵便やはがきで届いた場合は、架空請求の可能性が高いため、記載された電話番号には絶対に連絡しないでください。

ただし、実際には忘れていた借入金や、家族名義の保証債務が原因であるケースもあります。身に覚えがないからといって放置するのではなく、消費生活センター(消費者ホットライン188)や弁護士に確認を取ることが大切です。

参考:法務省「法務省の名称等を不正に使用した架空請求により被害が発生しています

参考:消費者庁「架空請求にご注意ください!

法律事務所から赤い封筒が届いた場合のよくある質問

法律事務所から赤い封筒が届いた場合のよくある質問

赤い封筒と黄色い封筒は何が違うのか

一般的に、黄色い封筒は督促の初期〜中間段階で使用されることが多く、赤い封筒は法的手続きへの移行が近い最終段階を意味する傾向があります。

ただし、封筒の色に法的な定義はなく、あくまで法律事務所や債権回収会社ごとの運用によるものです。色にかかわらず、中身の書類の内容をしっかり確認し、適切な対応を取ることが大切です。

家族に届いた赤い封筒を代わりに対応できるか

原則として、債務に関する手続きは本人でなければ対応できません。家族が代わりに法律事務所に連絡しても、個人情報保護の観点から情報開示を受けられないことがほとんどです。

もし本人に代わって対応が必要な場合は、委任状を作成したうえで弁護士や司法書士に正式に依頼する方法が確実です。なお、亡くなった家族宛に届いた場合は相続債務の問題となるため、相続放棄(家庭裁判所への申述が必要、原則3か月以内)の検討も含め、早急に専門家へ相談しましょう。

まとめ

まとめ

法律事務所から届く赤い封筒は、借金の返済を求める最終段階の通知であり、放置すると裁判所を通じた法的手続きや給与・預貯金の差し押さえに発展するおそれがあります。届いたらまず差出人と書類の種類を確認し、身に覚えがない場合も架空請求と決めつけず、消費生活センターや弁護士・司法書士に早めに相談することが大切です。

とくに、最終返済日から5年以上が経過している場合は時効の援用が認められる可能性もあるため、自分で債権者に連絡する前に専門家の判断を仰ぎましょう。

名古屋H&Y法律事務所は、お客様に「本気で寄り添う」をモットーにする法律事務所です。所属する弁護士は多種多様な事件を多数解決してきた実績を有しており、お客様のニーズに合わせた解決策の提示が可能です。ウェブ会議や電話会議を利用したリモート相談にも対応しておりますので、お気軽にご連絡ください。

法律事務所から手紙が届いたら?無視のリスクと正しい対応を解説

2026-08-05

法律事務所から手紙が届いたら?無視のリスクと正しい対応を解説

ある日突然、法律事務所から手紙が届いたら、誰でも驚きや不安を感じるものです。「何かのトラブルに巻き込まれたのだろうか」「無視しても大丈夫だろうか」と、さまざまな疑問が頭をよぎるのではないでしょうか。

結論から言えば、法律事務所からの手紙は絶対に無視してはいけません。放置すると訴訟や財産の差し押さえにまで発展するおそれがあります。

この記事では、法律事務所から手紙が届いた場合に確認すべきポイントについて詳しく解説します。

法律事務所から手紙が届いたらまず確認すべき3つのポイント

法律事務所から手紙が届いたらまず確認すべき3つのポイント

法律事務所から手紙が届いたとき、焦って行動する前にまず確認してほしいことがあります。具体的には以下の3つです。

  • 差出人(法律事務所名・担当弁護士名)の確認
  • 手紙の種類の確認(普通郵便・内容証明郵便・特別送達)
  • 記載されている内容(要求事項・回答期限)の把握

それぞれ詳しく見ていきましょう。

差出人(法律事務所名・担当弁護士名)を確認する

まず、封筒や書面に記載されている法律事務所名と弁護士名が実在するかを確認しましょう。なぜなら、架空の事務所名を名乗った詐欺や架空請求のケースもあるためです。

確認方法は簡単で、日本弁護士連合会(日弁連)の「弁護士検索」を利用すれば、登録されている弁護士かどうかをすぐに調べられます。検索システムでは、弁護士の氏名や事務所名から基本情報を確認できます。

もし検索結果に該当する弁護士が見つからない場合は、詐欺の可能性を疑い、最寄りの消費生活センターや警察に相談することをおすすめします。

参考:日本弁護士連合会「弁護士情報提供サービス ひまわりサーチ

手紙の種類を確認する(普通郵便・内容証明郵便・特別送達)

法律事務所からの手紙は、送付方法によって緊急度や法的な意味合いが大きく異なります。主な種類と特徴は以下のとおりです。

種類 特徴 緊急度
普通郵便 通知や連絡の初期段階で使われることが多い 低〜中
内容証明郵便 「いつ・誰が・どんな内容を送ったか」を郵便局が証明する制度。法的手段の前段階として送られる 中〜高
特別送達 裁判所からの書類を届ける方法で、郵便局員が直接手渡しする。訴訟や調停がすでに始まっている

特に特別送達で届いた場合は、すでに法的手続きが進行していることを意味しますので、すぐに対応が必要です。

参考:日本郵便「内容証明

参考:裁判所「民事執行

記載されている内容(要求事項・回答期限)を正確に把握する

手紙の本文を落ち着いて読み、何を求められているのかを正確に把握しましょう。よくある記載内容としては、金銭の支払い要求、特定の行為の停止要求、謝罪の要求などがあります。

とくに重要なのが回答期限の確認です。「本書面到達後14日以内にご回答ください」といった期限が設けられていることが多く、期限を過ぎると相手方が次の法的手段に進む根拠となりえます。

書面を読んだら、日付・要求内容・期限をメモに残しておくと、後から弁護士に相談する際にスムーズです。

なぜ法律事務所から手紙が届くのか?よくある5つの理由

なぜ法律事務所から手紙が届くのか?よくある5つの理由

法律事務所から手紙が届く理由はさまざまですが、代表的なものは以下の5つです。

  • 借金の督促や債権回収の代行(受任通知)
  • 離婚問題や不倫の慰謝料請求に関する通知
  • 相続手続きや遺産分割協議に関する連絡
  • 交通事故や近隣トラブルなどの損害賠償請求
  • 詐欺・架空請求

それぞれ詳しく見ていきましょう。

借金の督促や債権回収の代行(受任通知)

消費者金融やクレジットカード会社などの債権者が、弁護士に債権回収を委任した場合に届くのが「受任通知」です。この通知が届いた時点で、今後の連絡窓口は債権者本人ではなく、代理人である弁護士事務所に変わります。

受任通知を受け取ったからといって、ただちに裁判になるわけではありません。まずは弁護士を通じた交渉の段階です。この段階で対応すれば、分割払いや減額の交渉ができる可能性があります

離婚問題や不倫の慰謝料請求に関する通知

配偶者が弁護士に依頼し、離婚の協議や慰謝料の請求を内容証明郵便で送ってくるケースです。また、不倫の当事者として、交際相手の配偶者側から慰謝料を請求される場合もあります。

いずれの場合も感情的にならず、書面の内容を正確に理解したうえで、自分側の弁護士に相談することが大切です。

相続手続きや遺産分割協議に関する連絡

他の相続人が弁護士を代理人として、遺産分割の協議を申し入れてくるケースです。たとえば、疎遠だった親族が亡くなり、突然相続人としての手紙が届くこともあります。

また、遺言書が存在する場合は、遺言執行者として選任された弁護士から通知が届くこともあります。いずれも放置すると相続手続きが滞り、他の相続人との関係が悪化する原因になります。

交通事故や近隣トラブルなどの損害賠償請求

交通事故の被害者側が弁護士を立て、示談交渉を進めるために通知を送ってくるケースです。また、近隣住民との騒音や境界に関するトラブルで、相手方が弁護士を介入させる場合もあります。

損害賠償請求の書面が届いた場合は、相手の主張内容と請求金額を確認し、自分にも過失があるのかどうかを冷静に見極めることが重要です。

身に覚えがない場合は詐欺・架空請求の可能性

届いた手紙にまったく心当たりがない場合は、詐欺や架空請求を疑いましょう。具体的には、実在しない法律事務所名を名乗っている、振込先が個人名義の口座になっている、連絡先が携帯番号のみ、といった特徴が見られます。

絶対に記載された連絡先に電話をしたり、指定された口座に振り込んだりしないでください。まずは先述の日弁連「弁護士検索」で弁護士の実在を確認し、不審な場合は警察や消費生活センターに相談しましょう。

法律事務所からの手紙を無視・放置するリスク

法律事務所からの手紙を無視・放置するリスク

「怖いから見なかったことにしよう」と手紙を放置してしまうのは、もっとも避けるべき対応です。無視・放置した場合に起こりうるリスクは、主に以下の3つです。

  • 訴訟を提起され、裁判に発展する
  • 強制執行により給与や財産を差し押さえられる
  • 交渉の余地がなくなり不利な条件を受け入れることになる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

訴訟を提起され、裁判に発展する可能性がある

内容証明郵便による通知を無視し続けると、相手方は次の手段として訴訟を提起する可能性が高くなります。訴状が届いても対応しなかった場合、民事訴訟法第159条の規定により、相手方の主張をすべて認めたものとみなされ(擬制自白)、相手の請求どおりの判決が下されるおそれがあります。

つまり、自分の言い分を主張する機会を自ら放棄してしまうことになるのです。たとえ相手の請求に不当な点があったとしても、裁判に出なければ反論できません。

参考:e-Gov法令検索「民事訴訟法

強制執行により給与や財産を差し押さえられる

裁判で判決が確定した後も支払いに応じなければ、相手方は裁判所に強制執行を申し立てることができます。裁判所のウェブサイトによると、強制執行では債務者の給与や銀行預金などを差し押さえ、債権者が勤務先や銀行から直接支払いを受ける形で債権を回収します。

具体的には、給与の一部(原則として手取りの4分の1まで)や、預貯金、不動産などが差し押さえの対象となります。給与が差し押さえられた場合、勤務先にもトラブルの存在が知られてしまいます。

参考:裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)

交渉の余地がなくなり不利な条件を受け入れることになる

法律事務所からの通知に早い段階で対応していれば、請求額の減額や分割払いなどの交渉ができる場合があります。しかし、放置して時間が経つほど交渉の余地は小さくなります。

また、金銭の支払い請求の場合は、放置している間にも遅延損害金が加算され続け、最終的な請求額が当初より大きく膨らむリスクがあります。早めに対応することが、結果的に自分の負担を軽くすることにつながります。

法律事務所から手紙が届いたときにやってはいけないこと

法律事務所から手紙が届いたときにやってはいけないこと

手紙を受け取って動揺しているときこそ、やってはいけない対応を知っておくことが大切です。以下の3つの行動は状況を悪化させる可能性があるため、避けてください。

  • 感情的に反論・抗議の連絡をする
  • 書面の要求をそのまま受け入れる
  • トラブルの相手本人に直接連絡を取る

それぞれ詳しく見ていきましょう。

感情的に反論・抗議の連絡をする

怒りや焦りから、相手方の弁護士に電話やメールで感情的に抗議するのは避けましょう。なぜなら、電話やメールでのやりとりは証拠として記録される可能性があり、感情的な発言が法的に不利に働くことがあるからです。

たとえば、「そんなお金は払えない」という発言が「請求内容自体は認めている」と解釈されるケースもあります。対応は必ず冷静に、できれば自分側の弁護士を通じて行うのが安全です。

書面に記載された要求をそのまま受け入れる

手紙に書かれた要求にすぐ応じてしまうのも危険です。相手方の弁護士は依頼人の利益を最大化するために動いているため、書面の主張がすべて正当とは限りません。

専門家に相談せずに支払いや合意をしてしまうと、後から「やはり納得できない」と思っても覆すのが非常に困難になります。書面を受け取ったら、まずは弁護士に内容を見てもらい、妥当性を判断してから回答しましょう。

トラブルの相手本人に直接連絡を取る

弁護士が代理人として選任されている場合、トラブルの相手本人に直接連絡を取ることは避けるべきです。弁護士が代理人についている場合、相手方本人と直接やりとりすることは法的なマナーに反するだけでなく、トラブルを悪化させる原因にもなります。

たとえば、離婚問題で配偶者に直接連絡を取ったことで、感情的な対立が激しくなり、かえって交渉が難航するケースは少なくありません。連絡は必ず弁護士を通じて行いましょう。

法律事務所からの手紙への正しい対応方法

法律事務所からの手紙への正しい対応方法

ここまで、無視や不適切な対応のリスクを解説してきました。では、実際にどのように対応すればよいのでしょうか。正しい対応のステップは以下の3つです。

  • 手紙の内容と証拠を保全する
  • 回答期限を確認し、早めに弁護士に相談する
  • 相手方弁護士への回答は書面で行う

それぞれ詳しく見ていきましょう。

手紙の内容と証拠を保全する

まず、届いた手紙は封筒ごと保管してください。封筒の消印(日付)は、いつ発送されたかを証明する重要な情報です。書面と封筒をセットにして、紛失しない場所に保管しましょう。

加えて、スマートフォンで書面の写真を撮り、デジタルデータとしても保存しておくことをおすすめします。万が一の紛失に備えられるだけでなく、弁護士にオンラインで相談する際にもすぐに共有できます。

トラブルに関連するメールやLINEのやりとりがあれば、削除せずにスクリーンショットなどで保全しておきましょう。

回答期限を確認し、早めに弁護士に相談する

書面に回答期限が記載されている場合は、期限内に対応を開始することが重要です。期限を過ぎると、相手方が訴訟など次の手段に進む判断材料となります。

自分側にも弁護士をつけることで、相手方と対等な立場で交渉を進めることが可能になります。弁護士費用に不安がある場合は、法テラス(日本司法支援センター)の無料法律相談を活用する方法もあります。法テラスでは、収入や資産が一定基準以下の方を対象に、弁護士との無料法律相談や費用の立替えを行っています。

参考:法テラス「無料法律相談のご利用の流れ

相手方弁護士への回答は書面で行う

相手方の弁護士に回答する際は、電話ではなく書面(できれば内容証明郵便)で行うのが基本です。口頭でのやりとりは「言った・言わない」の争いになりやすく、後から内容を証明するのが困難だからです。

内容証明郵便であれば、「いつ・どのような内容の回答をしたか」を郵便局が証明してくれます。回答内容は自分で判断せず、弁護士と相談したうえで作成するようにしましょう。

まとめ

まとめ

法律事務所から手紙が届いた場合、まずは差出人が実在するかを確認し、手紙の種類(普通郵便・内容証明郵便・特別送達)に応じた緊急度を見極めることが大切です。届く理由は借金の督促や離婚、相続、損害賠償などさまざまですが、いずれの場合も無視・放置は最悪の選択肢です。

放置すれば訴訟や強制執行に発展し、給与や預貯金の差し押さえという深刻な事態を招きかねません。感情的な対応や安易な承諾も避け、書面と証拠を保全したうえで、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。

名古屋H&Y法律事務所は、お客様に「本気で寄り添う」をモットーにする法律事務所です。不貞慰謝料・相続・刑事事件に関するご相談は無料で受け付けております。ウェブ会議や電話会議を利用したリモート相談にも対応しておりますので、お気軽にご連絡ください。

信頼できる弁護士の探し方は?後悔しないためのチェックポイント

2026-08-05

信頼できる弁護士の探し方は?後悔しないためのチェックポイント

「弁護士に相談したいけれど、どうやって探せばいいのかわからない」という方は少なくありません。

弁護士への依頼は人生でそう何度も経験するものではないため、探し方や選び方の基準がわからないのは当然のことです。

この記事では、弁護士の具体的な探し方と、信頼できる弁護士かどうかを見極めるためのチェックポイントを解説します。

弁護士を探す前に整理すべき3つのポイント

弁護士を探す前に整理すべき3つのポイント

弁護士を探し始める前に、まず自分の状況を整理しておくことが大切です。準備なしに探し始めると、どの弁護士が自分に合っているのか判断できず、時間だけがかかってしまいます。

事前に整理しておきたいポイントは、次の3つです。

  • 自分が抱えている問題の分野を明確にする
  • 希望する条件を決めておく
  • 相談のゴールを事前にイメージしておく

それぞれ詳しく見ていきましょう。

自分が抱えている問題の分野を明確にする

弁護士にはそれぞれ得意とする分野があります。たとえば、離婚問題に強い弁護士と、企業法務を専門にしている弁護士では、持っている知識や経験がまったく異なります。

まずは「自分が何を相談したいのか」を明確にしておくことが、最適な弁護士を見つける第一歩です。「離婚の財産分与について相談したい」「相続で兄弟と揉めている」など、できるだけ具体的に言語化しておくと、弁護士探しがスムーズになります。

希望する条件を決めておく

弁護士を探す際は、費用の上限・事務所の所在地・対応スピードなどの条件をあらかじめ決めておきましょう。条件が曖昧なままだと、複数の弁護士を比較する際に判断軸がなく、なかなか決められない原因になります。

たとえば「自宅から30分以内で通える事務所」「着手金が30万円以内」など、具体的な数字を含めた条件にしておくと比較しやすくなります。すべての条件を満たす弁護士が見つからない場合もあるため、優先順位をつけておくことも大切です。

相談のゴールを事前にイメージしておく

「示談で早期に解決したい」「裁判をしてでもしっかり争いたい」など、自分がどのような結果を望んでいるのかをイメージしておきましょう。ゴールが明確であれば、弁護士も初回の面談で具体的な方針を提案しやすくなります。

反対に、方向性が定まっていないと、弁護士側も適切なアドバイスがしにくく、面談の時間を有効に使えない可能性があります。完璧に固める必要はありませんが、「できればこうしたい」という大まかな方向性だけでも考えておくとよいでしょう。

弁護士の探し方6つの方法

弁護士の探し方6つの方法

弁護士の探し方は一つではありません。それぞれの方法に特徴があるため、自分の状況に合った手段を選ぶことが大切です。

主な探し方として、次の6つの方法があります。

  • インターネット検索で探す
  • 弁護士ポータルサイトで探す
  • 弁護士会に相談して紹介してもらう
  • 法テラスを利用する
  • 日弁連のサイトから探す
  • 知人・友人からの紹介で探す

それぞれの方法を詳しく解説します。

インターネット検索で探す

もっとも手軽な方法が、検索エンジンを使って弁護士事務所を探す方法です。たとえば「名古屋 離婚 弁護士」のように、「地域名+分野+弁護士」で検索すると、近くの事務所を効率よく見つけられます

事務所の公式サイトでは、取扱分野・解決実績・費用体系などを確認できます。ただし、検索上位の事務所が必ずしも自分に最適とは限らないため、複数の事務所を比較検討することが重要です。

弁護士ポータルサイトで探す

弁護士ドットコムやココナラ法律相談などのポータルサイトを利用する方法もあります。これらのサイトでは、分野・地域・口コミなどの条件で弁護士を絞り込めるため、比較検討がしやすいのが特徴です。

ただし、掲載されているプロフィールや実績は弁護士自身の自己申告によるものがほとんどです。ポータルサイトの情報だけで判断せず、公式サイトも確認するようにしましょう。

弁護士会に相談して紹介してもらう

各地域の弁護士会では、法律相談や弁護士の紹介を行っています。日本弁護士連合会によると、全国約300か所に法律相談センターが設置されており、お住まいの地域で気軽に利用できます。

弁護士会の法律相談では、相談内容に応じた弁護士を紹介してもらえるため、自分で一から探す手間が省けます。相談料は30分あたり5,500円程度が一般的です。相談後、そのまま担当弁護士に依頼することも可能です。

参考:日本弁護士連合会「弁護士の見つけ方

法テラスを利用する

法テラス(日本司法支援センター)は、経済的に余裕のない方が法的トラブルに対応できるよう、国が設立した支援機関です。収入や資産が一定の基準以下であれば、弁護士への無料法律相談を利用できます

さらに、弁護士費用の立替制度(民事法律扶助)も用意されています。立替制度を利用するには、収入・資産が基準以下であること、勝訴の見込みがないとはいえないこと、民事法律扶助の趣旨に適することの3つの条件を満たす必要があります。

参考:法テラス「無料法律相談・弁護士等費用の立替

日弁連のサイトから探す

日本弁護士連合会(日弁連)の公式サイトには、2種類の検索機能があります。

一つは「日弁連の弁護士検索」で、現在登録されているすべての弁護士の基本情報を確認できます。紹介を受けた相手が本当に弁護士として登録されているかを確かめたいときに便利です。

もう一つは「ひまわりサーチ」で、取扱業務や対応分野から弁護士を絞り込んで検索できます。ただし、ひまわりサーチは任意登録制かつ自己申告に基づく情報であるため、すべての弁護士が掲載されているわけではない点に注意しましょう。

参考:日本弁護士連合会「弁護士検索

知人・友人からの紹介で探す

身近な人から弁護士を紹介してもらう方法もあります。実際に依頼した経験がある人からの紹介であれば、対応の丁寧さや費用感など、公開情報だけでは得られないリアルな評判を聞けるのが強みです。

一方で、紹介者との関係上、合わないと感じても断りにくくなるデメリットがあります。紹介を受けた場合でも、必ず自分自身で面談をして相性を確認し、納得したうえで依頼するようにしましょう。

信頼できる弁護士の探し方9つのチェックポイント

信頼できる弁護士の探し方9つのチェックポイント

弁護士を見つけた後は、その弁護士が本当に信頼できるかどうかを見極める必要があります。以下の9つのチェックポイントを参考に、自分に合った弁護士かどうかを判断しましょう。

  • 依頼したい分野の実績・経験が豊富か
  • 事務所が自宅や勤務先から通いやすい場所にあるか
  • 弁護士費用が明確に提示されているか
  • 説明がわかりやすく丁寧か
  • 相談内容を丁寧に聞いてくれるか
  • 連絡のレスポンスがスムーズか
  • 不利益になる情報も正直に伝えてくれるか
  • 人柄や相性が合うと感じられるか
  • 過去に懲戒処分を受けていないか

それぞれ詳しく解説します。

依頼したい分野の実績・経験が豊富か

弁護士を選ぶうえで、自分が相談したい分野の実績が豊富かどうかは最も重要なポイントの一つです。公式サイトに掲載されている解決事例や取扱件数を確認しましょう。

具体的には、「離婚問題の解決実績100件以上」のように数字を明示している事務所は、その分野に注力している可能性が高いといえます。反対に、あらゆる分野を均等に扱っている事務所は、特定分野の専門性がやや薄い場合もあるため、事前の確認が大切です。

事務所が自宅や勤務先から通いやすい場所にあるか

弁護士との打ち合わせは1回では終わらないことが多く、書類の受け渡しや進捗確認のために複数回の来所が必要になるケースもあります。そのため、自宅や勤務先から通いやすい立地にある事務所を選ぶことは、実務的に重要なポイントです。

最近ではオンライン面談や電話相談に対応する事務所も増えています。遠方の弁護士に依頼したい場合は、オンライン対応の可否を事前に確認しておきましょう。

弁護士費用が明確に提示されているか

弁護士に支払う費用は、主に「相談料」「着手金」「報酬金」「実費」の4つに分かれます。日本弁護士連合会によると、着手金は事件の結果に関係なく発生し、報酬金は成功の度合いに応じて支払うものとされています。

初回相談の段階で費用の内訳を明確に説明してくれる弁護士は信頼度が高いといえるでしょう。「費用は後でお伝えします」と曖昧にされる場合は、依頼前に書面で見積もりをもらうことをおすすめします。

参考:日本弁護士連合会「弁護士費用(報酬)とは

説明がわかりやすく丁寧か

法律の専門用語は、一般の方にとってなじみが薄いものです。そのため、難しい言葉をかみ砕いてわかりやすく説明してくれるかどうかは、弁護士を選ぶ際の大切な判断材料になります。

たとえば「不法行為に基づく損害賠償請求」と言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。具体的な例を交えながら、素人にもわかるように話してくれる弁護士であれば、依頼後も安心してやり取りができます。

相談内容を丁寧に聞いてくれるか

初回の面談で、こちらの話を十分に聞いてくれるかどうかも重要なチェックポイントです。一方的に方針を押しつけたり、話の途中で結論を急いだりする弁護士には注意が必要です。

弁護士が正確な助言をするためには、依頼者の事情を細かく把握することが欠かせません。「話をしっかり聞いてもらえた」と感じられるかどうかが、その弁護士との信頼関係の土台になります。

連絡のレスポンスがスムーズか

依頼後の連絡のスムーズさは、ストレスなく案件を進めるために欠かせない要素です。メールや電話の返信が極端に遅い弁護士の場合、進捗状況がわからず不安を感じる方も少なくありません。

初回相談の問い合わせ段階で、返信のスピードや対応の丁寧さを確認しておくのがおすすめです。この段階でのレスポンスが遅い場合は、依頼後も同様の対応になる可能性があります。

不利益になる情報も正直に伝えてくれるか

弁護士に相談した際、良い面だけでなくリスクやデメリットも率直に説明してくれるかを確認しましょう。たとえば、裁判に進んだ場合の敗訴リスクや、想定よりも解決に時間がかかる可能性などです。

「必ず勝てます」と断言する弁護士には注意してください。法的なトラブルに100%の保証はなく、リスクを隠さず伝える姿勢こそが、誠実な弁護士の証といえます。

人柄や相性が合うと感じられるか

弁護士との関係は、問題が解決するまで数か月〜数年にわたって続くこともあります。そのため、話しやすさや安心感といった「相性」も、弁護士選びでは無視できない要素です。

初回面談で「話しにくいな」と感じたり、威圧的な雰囲気があったりする場合は、無理にその弁護士に決める必要はありません。違和感があれば遠慮なく別の弁護士に相談し直しましょう。複数の弁護士に会って比較することは、まったく失礼なことではありません。

過去に懲戒処分を受けていないか

弁護士の懲戒処分とは、弁護士法に基づいて弁護士会が行う処分のことです。日弁連によると、処分の種類は「戒告」「2年以内の業務停止」「退会命令」「除名」の4段階があります。

日弁連の弁護士検索では、現在業務停止中かどうかを確認できる場合がありますが、すでに終了した過去の懲戒処分歴は表示されません。過去の処分歴を調べたい場合は、懲戒処分の公告が掲載される官報や、日弁連の機関誌「自由と正義」のバックナンバーを確認する方法があります。

参考:日本弁護士連合会「懲戒制度

弁護士選びで失敗しないための注意点

弁護士選びで失敗しないための注意点

弁護士の探し方やチェックポイントを押さえたうえで、さらに失敗を防ぐために知っておきたい注意点があります。以下の4つのポイントを意識することで、後悔のない弁護士選びにつなげられます。

  • 事務所の規模や知名度だけで選ばない
  • 費用が安すぎる事務所には注意する
  • 相談した弁護士がそのまま担当になるか確認する
  • 過度な値段交渉や失礼な言動はしない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

事務所の規模や知名度だけで選ばない

「大手の事務所なら安心」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、事務所の規模と自分の案件との相性は必ずしも一致しません。大手事務所は企業法務を中心に扱っているケースもあり、個人の離婚や相続案件には対応していないこともあります。

逆に、個人経営の小規模事務所であっても、特定の分野に絞って豊富な実績を持っている弁護士は多く存在します。規模や知名度ではなく、「自分の問題に合った専門性があるか」を基準に選ぶことが大切です。

費用が安すぎる事務所には注意する

弁護士費用はできるだけ抑えたいと考えるのは自然なことです。しかし、相場と比較して極端に安い場合は、対応品質が低かったり、後から追加費用が発生したりするリスクがあります。

たとえば、着手金が相場より大幅に安い代わりに、報酬金が高く設定されているケースも見られます。費用の安さだけで判断するのではなく、費用の内訳が明確で、トータルでいくらかかるのかを事前に確認するようにしましょう。

相談した弁護士がそのまま担当になるか確認する

規模の大きな事務所では、初回の相談を担当した弁護士と、実際に案件を進める弁護士が異なる場合があります。「この弁護士なら信頼できる」と思って依頼したのに、実際の担当が別の弁護士だったというトラブルは意外と起こりえます。

依頼前に「最初から最後まで同じ弁護士が担当してくれるのか」を明確に確認しておきましょう。担当が変わる可能性がある場合は、実際に担当する弁護士の経歴や実績も事前に確認するのがおすすめです。

過度な値段交渉や失礼な言動はしない

弁護士との関係は、依頼者と専門家という対等なパートナーシップが前提です。費用について相談すること自体は問題ありませんが、過度な値引き要求や横柄な態度は信頼関係を損なう原因になります。

弁護士も人間ですので、信頼を寄せてくれる依頼者に対しては、より丁寧に対応しようという気持ちが生まれるものです。費用面での不安がある場合は、法テラスの立替制度や分割払いの相談など、正当な手段で解決を目指しましょう。

まとめ

まとめ

弁護士の探し方は、インターネット検索・弁護士会の相談窓口・法テラス・日弁連の検索機能・知人の紹介など複数あり、これらを組み合わせて使うのが効果的です。探し始める前に、自分が抱えている問題の分野・希望条件・相談のゴールを整理しておくことで、最適な弁護士を効率よく見つけやすくなります。

初回の無料相談を活用して複数の弁護士に会い、比較検討したうえで依頼先を決めることが、後悔しない弁護士選びにつながります。

名古屋H&Y法律事務所は、お客様に「本気で寄り添う」をモットーにする法律事務所です。不貞慰謝料・相続・刑事事件に関するご相談は無料で受け付けております。ウェブ会議や電話会議を利用したリモート相談にも対応しておりますので、お気軽にご連絡ください。

司法書士と弁護士の違いは?どちらに頼むべきか解説

2026-07-17

司法書士と弁護士の違いは?どちらに頼むべきか解説

「弁護士と司法書士はどちらも法律の専門家だけど、何が違うの?」と疑問に思う方は多いでしょう。どちらに依頼すべきかは、抱えている問題の内容や金額によって変わります。

本記事では、弁護士と司法書士の業務範囲の違いを明らかにしたうえで、相続・債務整理・不動産登記・交通事故・成年後見といったケース別に、どちらに依頼すべきかを解説します。

弁護士と司法書士の違い

弁護士と司法書士の違い

弁護士と司法書士の最大の違いは、扱える業務の範囲にあります。

弁護士は法律事務全般を扱える資格であるのに対し、司法書士は登記業務を中心とした限定的な範囲を担当する専門家です。以下では、それぞれの業務範囲と、弁護士にしかできないことを具体的に解説します。

弁護士の業務範囲

弁護士は、弁護士法第3条により「訴訟事件、非訟事件その他一般の法律事務を行うことを職務とする」と定められています。つまり、法律に関するあらゆる業務を扱える「万能資格」です。

たとえば、民事裁判や刑事弁護はもちろん、示談交渉や契約書の作成、企業法務のアドバイスまで幅広く対応できます。取り扱える金額にも上限がなく、数百万円から数億円規模の案件まで制限なく代理が可能です。

参考:日本法令外国語訳データベースシステム「弁護士法

司法書士の業務範囲

司法書士の中心業務は、不動産登記や商業登記といった各種登記手続きの代理です。加えて、裁判所に提出する書類の作成も行えます。

さらに、法務大臣の認定を受けた「認定司法書士」であれば、簡易裁判所における訴額140万円以下の民事事件に限り、訴訟代理や和解交渉が可能です。具体的には、少額の貸金返還請求や敷金返還請求などが対象になります。

ただし、140万円を超える案件や、地方裁判所以上での訴訟には対応できません。業務を進める途中で訴額が140万円を超えた場合も、その時点で弁護士に引き継ぐ必要があります。

弁護士にできて司法書士にできないこと

弁護士と司法書士の違いを明確にするために、弁護士にしかできない業務を整理しておきましょう。

業務内容 弁護士 司法書士
140万円を超える民事事件の代理 ×
地方裁判所以上での訴訟代理 ×
刑事事件の弁護 ×
行政訴訟の代理 ×
紛争相手との交渉(金額制限なし) △(140万円以下のみ)
不動産登記・商業登記

特に重要なのが、「相手方との交渉」を代理できるかどうかです。弁護士法第72条により、弁護士以外の者が報酬を得て法律事件の交渉を代理することは原則禁止されています。認定司法書士は140万円以下の簡裁案件に限って例外的に認められていますが、それ以外の交渉代理は弁護士にしかできません。

参考:第二東京弁護士会「本当に怖い非弁提携

【相続の場合】弁護士と司法書士の違いを踏まえどちらに依頼すべき?

【相続の場合】弁護士と司法書士の違いを踏まえどちらに依頼すべき?

相続では、手続きの内容によって適切な依頼先が変わります。大きく分けると以下の2パターンです。

  • 相続登記(不動産の名義変更)が中心 → 司法書士
  • 相続人間でトラブルがある → 弁護士

それぞれ詳しく見ていきましょう。

相続登記の手続きは司法書士が得意

相続登記とは、亡くなった方の名義になっている不動産を相続人の名義に変更する手続きです。2024年4月から相続登記が義務化され、正当な理由なく3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。

不動産登記は司法書士の専門領域であり、実務経験や対応件数が圧倒的に多い分野です。戸籍の収集や相続関係説明図の作成、争いのない場合の遺産分割協議書の作成補助にも対応できます。

相続人間で揉めごとがなく、不動産の名義変更がメインの手続きであれば、司法書士に依頼するのがスムーズでしょう。

相続トラブルがある場合は弁護士に依頼する

遺産分割の内容で相続人同士が揉めている場合や、遺言書の有効性を争いたい場合は、弁護士に相談してください。交渉や調停・訴訟の代理ができるのは弁護士だけであり、司法書士ではこれらの対応はできません。

たとえば、「特定の相続人が遺産を独占しようとしている」「遺留分を請求したい」「被相続人の預金を生前に使い込んだ疑いがある」といったケースでは、弁護士が依頼者の代理人として他の相続人と交渉し、必要に応じて家庭裁判所での調停・審判に進みます。

参考:兵庫県弁護士会「非弁護士による法律事務取扱等対策委員会

【債務整理の場合】弁護士と司法書士の違いを踏まえどちらに依頼すべき?

【債務整理の場合】弁護士と司法書士の違いを踏まえどちらに依頼すべき?

債務整理を検討する際も、弁護士と司法書士で対応できる範囲が異なります。判断の基準となるのは以下の2点です。

  • 1社あたりの債権額が140万円を超えるかどうか
  • 自己破産・個人再生を選ぶかどうか

それぞれのケースを確認しましょう。

司法書士に依頼できるケース

認定司法書士であれば、1社あたりの債権額が140万円以下の任意整理に対応可能です。なお、140万円の判定は借金の「総額」ではなく「個別の債権ごと」で計算します。たとえば、A社に130万円・B社に70万円の借入がある場合、合計200万円でも各社の債権は140万円以下なので司法書士に依頼できます。

費用面では弁護士より安い傾向がある点もメリットです。ただし、自己破産や個人再生の手続きでは司法書士の業務は書類作成にとどまり、裁判所での代理はできません。裁判所とのやり取りは自分で行う必要がある点に注意してください。

弁護士に依頼すべきケース

1社あたりの債権額が140万円を超える場合は、弁護士に依頼する必要があります。また、自己破産や個人再生は地方裁判所で行う手続きのため、裁判所での代理権を持つ弁護士に依頼するのが安心です。

弁護士であれば、債権者との交渉から裁判所での手続きまで一貫して代理できます。司法書士に依頼した場合、途中で自己破産や個人再生に方針変更が必要になると、改めて弁護士に依頼し直す手間と費用が発生するリスクもあります。借入額が大きい方や手続きの確実性を重視する方は、最初から弁護士への相談をおすすめします。

【不動産登記の場合】弁護士と司法書士の違いを踏まえどちらに依頼すべき?

【不動産登記の場合】弁護士と司法書士の違いを踏まえどちらに依頼すべき?

不動産登記については、実務上は司法書士に依頼するのが一般的です。不動産登記は司法書士の中核業務であり、売買・贈与・相続・抵当権設定など、登記の種類を問わず豊富な経験を持っています。

法律上は弁護士も登記申請の代理が可能です。しかし、登記手続きの実務に日常的に携わっているのは司法書士のほうが圧倒的に多く、不動産売買の決済に立ち会う専門家としても司法書士が指定されるのが通例です。

たとえば、マイホームを購入する際の所有権移転登記や、住宅ローンに伴う抵当権設定登記は、ほぼすべてのケースで司法書士が対応しています。不動産登記だけであれば弁護士に依頼する必要はなく、司法書士に任せるのが費用面でも合理的です。

【交通事故の場合】弁護士と司法書士の違いを踏まえどちらに依頼すべき?

【交通事故の場合】弁護士と司法書士の違いを踏まえどちらに依頼すべき?

交通事故の損害賠償請求では、賠償額が140万円を超えるかどうかが依頼先を分けるポイントになります。それぞれのケースを見ていきましょう。

損害賠償額が140万円以下の場合

物損事故や軽微な人身事故など、損害賠償の請求額が140万円以下であれば、認定司法書士も簡易裁判所での代理や示談交渉に対応できます。

たとえば、追突事故で車の修理費用のみを請求するケースや、軽いむちうちで通院期間が短い場合などが該当します。費用を抑えたい場合は、司法書士への依頼も選択肢の一つです。

ただし、治療が長引いて賠償額が140万円を超える可能性がある場合は、最初から弁護士に相談しておくほうが安心です。

損害賠償額が140万円を超える場合

後遺障害が残るケースでは、慰謝料や逸失利益を含め賠償額が高額になりやすく、弁護士に依頼すべきです。弁護士であれば、保険会社の提示額に対して弁護士基準(裁判基準)で請求でき、賠償額が大幅に増額する可能性があります。

弁護士基準とは、過去の裁判例をもとにした損害算定の基準で、保険会社が用いる「自賠責基準」や「任意保険基準」より高額です。弁護士に交渉を依頼するだけで、賠償額が2倍以上になるケースも珍しくありません。

なお、自動車保険に付帯する「弁護士費用特約」を利用すれば、最大300万円まで弁護士費用を保険会社が負担してくれます。自己負担なく弁護士に依頼できるため、特約がある場合は積極的に活用しましょう。

【成年後見の場合】弁護士と司法書士の違いを踏まえどちらに依頼すべき?

【成年後見の場合】弁護士と司法書士の違いを踏まえどちらに依頼すべき?

成年後見制度の利用にあたっては、弁護士と司法書士のどちらにも関わりがあります。家庭裁判所への申立書類の作成は司法書士が対応でき、申立ての代理は弁護士が行えます。

注目すべきは、後見人に司法書士が選任されるケースが多いという点です。「公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート」には全国の司法書士の約3分の1にあたる7,000人以上が登録しており、第三者後見人として家庭裁判所から選任される実績が豊富です。リーガルサポートでは裁判所への報告に加え、半年に1度の業務報告が義務づけられており、二重チェック体制がとられています。

一方、将来的に親族間の紛争が見込まれる場合は弁護士が安心です。後見人として選任された後に相続トラブルや財産の使い込みが発覚した場合、弁護士であれば法的手続きにも一貫して対応できます。

参考:公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート「リーガルサポートって?

参考:厚生労働省「法定後見制度における成年後見人等選任方法

弁護士と司法書士の費用相場の違い

弁護士と司法書士の費用相場の違い

依頼先を選ぶうえで、費用は気になるポイントでしょう。弁護士と司法書士では、料金体系に大きな違いがあります。

費用項目 弁護士 司法書士
相談料 30分5,000円〜1万円

(初回無料の事務所も多い)

30分5,000円前後

(初回無料の事務所も多い)

料金体系 着手金+報酬金が基本

(旧日弁連報酬基準が目安)

定額報酬型が多い
着手金の目安 10万〜50万円程度 なし(報酬に含まれることが多い)

一般的に、弁護士のほうが費用は高くなる傾向があります。これは弁護士が対応できる業務範囲の広さや、交渉・訴訟の代理といった高度な業務を含むためです。

一方、司法書士は登記など定型的な業務を定額で引き受けるケースが多く、費用の見通しが立てやすいメリットがあります。ただし、費用の安さだけで依頼先を選ぶと、途中でトラブルが発生した場合に弁護士へ依頼し直す二重コストが生じるリスクもあります。「何をどこまで任せたいか」で判断することが大切です。

弁護士と司法書士の違いに迷ったら、まず弁護士に相談すべき理由

弁護士と司法書士の違いに迷ったら、まず弁護士に相談すべき理由

「自分のケースは弁護士と司法書士のどちらに頼めばいいか判断できない」という場合は、まず弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士は業務範囲に制限がないため、どのような案件であっても対応できます。

相談の結果、登記だけで済む案件であれば「この件は司法書士に依頼したほうがよいですよ」と案内してもらえることもあります。最初の入口として弁護士を選んでおけば、適切な専門家に最短でたどり着けるのです。

近年は初回相談を無料としている法律事務所も増えています。費用をかけずに専門家の見解を聞けるため、「まずは話を聞いてほしい」という段階でも気軽に利用できます。

まとめ

まとめ

弁護士は法律事務全般を扱える万能型の専門家で、交渉・訴訟の代理に金額の制限がありません。一方、司法書士は登記業務のエキスパートであり、認定司法書士であれば140万円以下の簡裁案件にも対応可能です。依頼先を選ぶ際は「紛争性があるかどうか」「金額が140万円を超えるかどうか」「手続きの種類は何か」の3つを判断基準にしてください。迷った場合は業務範囲に制限のない弁護士にまず相談することで、自分に合った専門家にスムーズにたどり着けます。

名古屋H&Y法律事務所は、お客様に「本気で寄り添う」をモットーにする法律事務所です。不貞慰謝料・相続・刑事事件に関するご相談は無料で受け付けております。ウェブ会議や電話会議を利用したリモート相談にも対応しておりますので、お気軽にご連絡ください。

書類送検されるとどうなる?書類送検とは何か弁護士が簡単に解説します

2024-10-19

ニュースでよく耳にする「書類送検」って何?

芸能人やスポーツ選手が「書類送検された」というニュースを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

ところが、「書類送検」の意味を正確に理解している人は案外少ないように思います。

「書類送検」とは何かというと、警察が捜査をした事件について、その書類や証拠を検察庁に送致することをいいます。

刑事事件では、まず警察が事件について捜査します。関係者から話を聞いたり、実況見分して証拠を集めたりといったことをするわけですね。

しかし、警察には事件を起訴するかどうか判断する権限がありません。

日本で起訴か不起訴かを判断する権限を持つのは検察だけです。

そこで、事件について捜査を終えた警察は、検察官に起訴か不起訴か判断してもらうために事件の書類や証拠を検察庁に送致しなければなりません(刑事訴訟法246条)。

この警察が検察に事件の書類や証拠を送ることを文字通り「書類送検」というわけです。

関連記事:刑事事件はどのように進んでいくのか?刑事事件の流れについて弁護士がわかりやすく解説します

逮捕されている場合は「書類送検」とは言わない

上述のとおり、「書類送検」とは、書類や証拠を検察庁に送致することを意味します。

もっというと、あくまで書類や証拠のみを送致するニュアンスを含んでいるのであり、被疑者が逮捕されていない在宅事件の場合にのみ使われる言葉です。

これに対して、被疑者が逮捕されている場合、警察は逮捕から48時間以内に証拠や書類と一緒に被疑者の身柄を検察庁に送致しなければならないとされています(刑事訴訟法203条1項)。

このように被疑者が逮捕されている事件(身柄事件)では、被疑者の身柄も一緒に検察庁に送られるため、「書類送検」とはいいません(では、その場合は何というのかというと、特に呼び名があるわけではなく、単に「送致」や「送検」ということが多いです)。

「書類送検=犯罪の疑いがある」ではない!

上述のとおり、書類送検とは、被疑者が逮捕されていない在宅事件について、事件の捜査を終えた警察がその書類や証拠を検察庁に送ることをいいます。

「書類送検された」と聞くと、「その人が実際に犯罪を行った疑いがあると警察が判断したから送検したんだ」というような印象を受ける人も多いかもしれませんが、実際はそうではありません。

というのも、刑事訴訟法では、警察は捜査をした事件については、原則として、全件を検察庁に送致しなければならないとされているからです(刑事訴訟法246条)。

これを全件送致主義といいます(ただし、全件送致主義の例外として、ごく軽微な万引き事件などについては、書類送検せずに警察限りで事件を終結させる処理がなされることがあり、これを微罪処分といいます。微罪処分はあくまで例外であって、すべての事件について検察庁に送致をするのが原則です)。

上述のとおり、警察には事件を起訴するかどうかを判断する権限がありません。

ですので、警察は、犯罪の疑いがあるか否かにかかわらず、すべての事件を検察庁に送致して、検察官の判断に委ねなければならないのです。

したがって、警察は、捜査した結果、犯罪の疑いが全くないと考えるような場合であっても、書類送検しなければならないのであって、裏をかえせば書類送検されたからといって、犯罪の疑いがあるということでは決してないということになるのです。

書類送検というのは、あくまで形式的な手続きを意味するに過ぎないのであって、犯罪の疑いがあるか否かとは全く無関係ということですね。

今後は「書類送検された」というニュースを目にしても、その人のことを色眼鏡で見ないことが大切です。

書類送検されても前科はつかない

書類送検されると前科がつくのでしょうか?

すでに説明してきたとおり、書類送検というのは、あくまで警察が事件に関する書類や証拠を検察庁に送致することであって、起訴にするか不起訴にするかを決めるのは送致を受けた検察です。

そして「前科」とは、起訴されて裁判で有罪判決を受けることなので、当然ながら、書類送検されただけで前科がつくということはありません。

関連記事:前科をつけないためにはどうすればいい?

保釈が認められるのはどんな場合?―保釈制度について弁護士がわかりやすく解説します

2024-06-17

・保釈ってなに?釈放とは違うの?

・保釈が認められるのはどういう場合?

・保釈で身柄を解放してもらうにはどうすればいい?

そもそも「保釈」とは?

保釈は「身柄事件」の「公判段階」においてのみ適用される制度

「保釈」とは、起訴された被告人が勾留によって身体を拘束されている場合に、一定の金銭(保釈保証金)を裁判所に預けることで、身体拘束から解放してもらう制度のことをいいます。

刑事事件は、通常、捜査段階→公判段階という流れで進んでいきます(刑事事件一般の流れについては「刑事事件はどのように進んでいくの」というコラムで詳細に解説しておりますので、そちらもご参照ください)。

つまり、おおまかにいえば、①警察が事件を捜査をして、検察官が起訴or不起訴の判断をするまでの段階を捜査段階、②検察官が起訴した後、裁判所で行われる裁判手続きのことを公判段階といいます。

そして、捜査段階で犯罪の嫌疑を受けて捜査の対象となっている人のことを「被疑者」、公判段階で事件について審判の対象となっている人のことを「被告人」といいます(捜査段階=被疑者、公判段階=被告人ということです)。

上述のとおり、保釈は「起訴された被告人」について認められる制度なので、起訴後の公判段階においてのみ適用されます。したがって、捜査段階での保釈というのはありません。

また、保釈は身体拘束からの解放を目的とした制度なので、当然ですが、本人の身柄が拘束されている事件(=身柄事件)であることが前提となります(身柄事件に対して、本人の身柄が拘束されていない事件のことを「在宅事件」といいます)。

身柄事件も在宅事件も捜査段階と公判段階がありますが、保釈は身柄事件の公判段階においてのみ適用されうる制度であるということです。

保釈が必要になる場面とは?

以上を前提にもう少し詳しく説明すると、身柄事件においては、捜査段階で最長23日間身柄を拘束されることになります(身柄拘束されている刑事事件の流れについては「ご家族が逮捕された方へ」というコラムでも詳細に解説しておりますので、そちらもご参照ください)。

そして、この最長23日間の間に警察は事件について捜査を進め、最終的に検察官が起訴にするか不起訴にするかを判断します(繰り返しになりますが、この捜査段階での身体拘束について「保釈」を求めることはできません。捜査段階での身体拘束については、別の手続き(勾留準抗告や勾留取消請求等)によって身柄の解放を求めていくことになります)。

捜査終了後、検察官が不起訴にすると判断すれば、そこで事件は終了するのですぐに身柄が釈放されます。当然、この場合は保釈は不要です。

また、起訴の場合でも「略式起訴」といって、軽微な事件について書面審査だけで罰金に処する簡易的な手続きが選ばれた場合も、必ず罰金になるので身柄はすぐに釈放されます。この場合も保釈は不要です。

これに対して、不起訴でも略式起訴でもなく、正式起訴という手続きが選ばれた場合は、正式な刑事裁判手続きを行うことになるので、最終的に判決が出るまでの間、身体拘束(勾留)が続くことになってしまいます。

しかし、判決が出るまでの数か月(下手をすれば数年)もの間、身柄拘束が続くのは被告人にとって極めて負担が大きいといえます。

そこで、一定の金銭(保釈保証金)をいわば人質代わりに裁判所に収めることで、身柄を解放してもらうのが保釈という制度になります。

保釈保証金は、保釈の際に出される条件(保釈条件)を守っていれば、裁判が終わった時点で全額戻ってきます。

他方、逃亡や証拠隠滅を図るなどして保釈条件を破ってしまった場合は、保釈保証金の全部または一部が没収されます。そしてこの場合、保釈も取り消しとなって再び収監されることになってしまいます。

「保釈」と「釈放」はどう違う?

なお、「保釈」とよく混同される用語として「釈放」があります。

「釈放」とは、身体拘束から身柄を解放してもらうこと全般のことを意味しています。

保釈によらなくても、例えば、不起訴処分となって身柄が解放されることも「釈放」といいます。

これに対して、「保釈」は刑事訴訟法88条〜94条によって定められている上記のような制度(お金を納めて身柄を解放してもらう制度)のことをいうのであり、身体拘束からの解放全般を指す「釈放」とは意味が異なります。

保釈の重要性

保釈によって身体拘束からの解放を得ることは極めて重要です。

すでに説明したとおり、保釈はすでに起訴され、裁判を控えている人が身柄を解放してもらう制度です。

ですので、来たる裁判の期日に備えて弁護人と密に打ち合わせなどをしていかなければならない状況にあります。

しかし、身体拘束が続いている状態では、拘置所や留置場の面会室でしか打ち合わせをすることができず、これでは刑事裁判に向けて必ずしも十分な準備ができるとはいえません。

他方、保釈によって身柄拘束から解放された場合、もとの生活を送りながら裁判に対応することが可能となり、時間や場所の制限を受けず、十分に記録を検討しながら、弁護人と密に連絡をとりながら裁判に向けて準備を進めることができるようになります。

このように保釈制度は、刑事裁判に向けて充実した準備を進める前提として非常に重要な意味を持っているといえるでしょう。

保釈はどういう場合に認められる?

全ての事件において保釈が必ず認められるわけではありません。では、保釈はどのような場合に認められるのでしょうか?

保釈が認められるための条件を定めた規定としては、刑事訴訟法89条と90条があります。

89条は、いわゆる「権利保釈」について定めた規定であり、保釈の請求があった場合は、同条1号から6号までに定める事由(除外事由)がある場合を除いて、保釈を認めなければならないという規定です。

つまり、「保釈の請求があった場合は、原則として保釈を認めないといけないけど、1号〜6号までの事情に当てはまる場合は例外ね」ということです。条文は以下のとおりです(条文の内容は後で詳しく説明します)。

第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。

一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。

二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。

三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。

四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。

六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

これに対して、90条は、いわゆる「裁量保釈」について定めた規定であり、89条1号から6号に該当する事由があり、権利保釈が認められない場合であっても、裁判所が様々な事情を考慮して裁量によって保釈を認めることができるという規定です。条文は以下のとおりです。

第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

まとめると、保釈の可否判断は、①保釈請求があれば、原則として、保釈(=権利保釈)を認めないといけない→②ただし、例外的に89条1号〜6号に該当する事由(除外事由)がある場合は、権利保釈を認めない→③除外事由があって権利保釈が認められない場合でも、裁量保釈を認めることはできる、という3段構造になっているということです。

そこで、以下では権利保釈と裁量保釈についてみていきましょう。

権利保釈

上述のとおり、89条1号から6号に定める除外事由がない限り、裁判所は権利保釈を認めなければなりません。

したがって、権利保釈が認められるか否かは、89条1号から6号に定める除外事由に該当するか否かによって全てが決まります。

以下で除外事由について一つずつ見ていきましょう。

89条1号

一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。

これは、起訴された罪の法定刑に死刑もしくは無期刑、又は、短期1年以上の懲役、禁錮刑が含まれている場合のことです。

このような重罪事件については重い刑罰が科される可能性が高く、類型的に逃亡するおそれが高いと考えられるため、権利保釈の除外事由とされています。

例えば、殺人罪は、法定刑の中に死刑または無期刑が含まれているので、これに該当します。

また、強盗罪は、死刑や無期刑は定められていないものの、短期5年以上の有期懲役が法定刑となっているので、これに該当します。

したがって、殺人罪や強盗罪では権利保釈が認められることはありません。

89条2号

二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。

これは保釈決定時を基準として、それ以前に死刑や無期刑、長期10年を超える懲役、禁錮に当たる罪について有罪判決を受けたことがある場合のことを指します。

過去に一定以上の重大犯罪について有罪判決を受けたことがある場合、今回の裁判でも重い刑罰となることが予想されるところ、類型的に逃亡のおそれが高いと考えられるため、権利保釈の除外事由とされています。

「死刑や無期刑、長期10年を超える懲役、禁錮に当たる罪について」とされているので、実際に過去に受けた判決が死刑や無期刑、長期10年以上の懲役、禁錮である必要はありません。

例えば、過去に殺人罪について懲役8年の懲役刑を言い渡されたことがある場合でも、殺人罪は法定刑に死刑や無期刑が含まれた犯罪なので、89条2号に該当することになります。

なお、有罪の宣告を受けていれば足り、判決が確定していることは不要ですし、ここでいう有罪の宣告には、執行猶予が付されていた場合も含みますので注意が必要です。

89条3号

三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。

「常習として」とは、同種・同質の犯罪事実を繰り返し行なっていたことが認められる場合のことを指します。

これが権利保釈の除外事由とされているのは、1号、2号と同じ趣旨であり、重い刑が科される可能性が高いので、定型的に逃亡のおそれが高いと考えられるからです。

必ずしも起訴された事実だけに限らず、余罪として繰り返し行なっていたと認められる場合もこれに含まれます。

例えば、1件の窃盗(長期10年)で起訴された場合でも、起訴はされていない余罪として複数回に渡って窃盗を繰り返し行なっていたことが証拠上認められる場合は、89条3号に該当し、権利保釈は認められないことになります。

89条4号

四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

現在、権利保釈を却下する理由として一番多いのがこの要件です。

罪証を隠滅するおそれがある否かは、犯罪事実の軽重、罪を認めているか否か、証拠の隠滅が客観的に可能か否か、可能であるとすればその証拠はどの程度重要なものであるか、適切な身柄引受人がいるか否か、などの事情によって判断されます。

なお、89条4号にいう「罪証」とは、物証や書証のみならず、人証も含みます。

例えば、証人予定者が被告人と面識のある人物である場合、被告人が容易に接触することができるため、罪証を隠滅するおそれがあると判断される可能性が高まるといえるでしょう。

89条5号

五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。

これは被害者や証人等に対する いわゆる「お礼参り」を防止するために設けられた規定です。

これに該当するか否かは、被告人の属性(反社会的勢力に所属していないか否か等)や過去の言動、被害者等との関係性などによって判断されます。

89条6号

六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

氏名や住所が不明な場合は逃亡のおそれが類型的に高いと考えられるため、権利保釈の除外事由とされています。

「氏名又は住所」と定められているとおり、氏名と住所のいずれかが不明であれば、89条6号に当てはまります。

裁量保釈

権利保釈が認められない場合でも、裁判所は職権で裁量保釈を認めることができます。

実際、権利保釈の除外事由に該当する事件でも、裁量保釈で保釈される事案はたくさんあります。

裁量保釈は、逃亡や証拠隠滅の防止という勾留を継続することによるメリットと、健康上、経済上、社会生活条の不利益等勾留を継続することによるデメリットを比較衡量して判断されます。

健康上の不利益に関する事情としては、例えば、被告人が持病を抱えており、長期間の身体拘束が原因で健康が害されるおそれが高い場合などが考えられます。

経済上の不利益に関する事情としては、例えば、身体拘束の長期化により会社を解雇される危険が高いこと、収入が途絶えて家族の生活費が工面できなくなっていること、自営業者における顧客や取引先の消失等の事情が考えられるところです。

社会生活条の不利益に関する事情としては、例えば、学生である被告人が退学処分を受ける可能性があることなどが考えられます。

保釈の手続きはどうすればいい?

保釈を求めるためには、保釈請求書を裁判所に提出しなければなりません。

保釈請求書には、保釈を認めるべき理由を記載するとともにそれを裏付ける資料を添付します。また、保釈が認められた場合に生活の拠点となる場所(制限住居)も記載しなければなりません。

なお、保釈が認められるためには、親族等の適切な身柄引受人がいることが必須ですので、保釈請求書には必ず身柄引受書を添付しなければなりません。

裁判所は保釈請求書の内容や事件記録を検討し、検察官の意見も聴取した上で、保釈を認めるか否かを判断します。

裁判所が保釈を認めると判断した場合は、保釈決定が出されます。

保釈決定には、保釈中に守らなければならない条件(保釈条件)や制限住居、保釈保証金の額が定められます。

保釈決定で定められた保釈保証金を裁判所に納付すれば、晴れて釈放されることになります(通常は、保釈保証金を納付したその日のうちに釈放されます)。

なお、保釈決定で定められた保釈条件を破った場合は、保釈が取り消されて再度収監されるとともに、保釈保証金の全部又は一部が没収されてしまいます。

また、保釈期間中に制限住居が変更になる場合は、裁判所の許可を得なければなりませんので、保釈期間中の引越しや旅行の際には注意が必要です。

保釈保証金の額はどのように決まる?用意できない場合は?

保釈保証金の額は、起訴された犯罪事実の重大性や逃亡、証拠隠滅のおそれの程度、本人の経済力などによって判断されます。

要するに、本人にとって逃亡や証拠隠滅を抑止するのに十分な金額がいくらであるかという判断になりますので、カルロス・ゴーンやホリエモンなどの大富豪の場合は億単位の保釈保証金が設定されることもありますが、そうではない一般市民の場合は数百万円(概ね100万円〜300万円)になることがほとんどです。

なお、保釈保証金は必ずしも本人が用意する必要はなく、親族などに用意してもらうことなども勿論可能です。

保釈保証金を用意できない場合、一定の手数料はかかってしまいますが、日本保釈保証支援協会(https://www.hosyaku.gr.jp/)という機関が保釈保証金を立て替えてくれる制度がありますので、こちらの利用を検討すべきでしょう(なお、立て替えには審査があります)。

まとめ

以上、保釈制度について解説してきましたが、保釈を獲得するためには、保釈の要件や手続き等に関する専門的な知識を前提に、裁判官を説得するための技量と経験が非常に重要になってきます。

名古屋H&Y法律事務所では、豊富な知識と経験に基づき、あなたのご家族が保釈されるために尽力いたします。

ご家族の保釈獲得をご希望の場合は、ぜひお早めにご相談ください。

慰謝料以外の損害は不倫相手に請求できる?―不倫によって発生する様々な損害が請求可能かどうか弁護士が解説します

2024-06-10

配偶者が不倫をした場合、不倫相手に対して精神的苦痛についての慰謝料を請求することができます。

ですが、不倫に起因して発生する損害には様々なものがあり、必ずしも精神的苦痛に限られるわけではありません。

ここでは慰謝料以外の損害について、不倫相手に請求することができるのか、過去の裁判例などに基づいて解説していきたいと思います。

不倫慰謝料=精神的苦痛の損害賠償

「配偶者が不倫をした場合、不倫相手に対して慰謝料を請求できる」というのは法律に詳しい人でなくても、広く知られた知識だと思います。

では、その法律的な根拠は何でしょうか?

民法には以下のような規定があります。

第709条(不法行為) 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

これは「不法行為に基づく損害賠償責任」について定めた規定であり「意図的に(故意)あるいは不注意(過失)によって他人に損害を与えた場合、その損害を賠償しなさい」という内容の規定です。

例えば、交通事故によって怪我をした場合、治療費や休業損害、慰謝料など様々な損害を相手に請求できますが、その根拠となるはこの民法709条です。

不倫慰謝料を請求できるのも、同じくこの民法709条が根拠規定となっているのであり、不倫が不法行為として他人に損害を与える行為であるから、その損害の賠償を相手に請求できるということになるのです。

そして、民法709条における「損害」には、精神的損害とそれ以外の損害があり、特に精神的損害に関する賠償のことを「慰謝料」といいます。

したがって、「不倫慰謝料」とは、不倫によって被った精神的苦痛についての損害賠償ということになります(不倫慰謝料の相場などについては、不倫・不貞慰謝料の相場と証拠というコラムでも詳しく解説しておりますので、そちらもご参照ください)。

ですが、交通事故の場合に治療費や休業損害など精神的損害以外の様々な損害が発生するのと同じように、不倫の場合も、精神的損害以外の種々の損害が発生することがあります。

では、不倫の場合、交通事故と同じように、それら精神的損害以外の損害についても相手に賠償請求ができるのでしょうか?

以下では、この点について各損害ごとに見ていきたいと思います。

慰謝料以外の損害賠償の可否

探偵(興信所)の調査費用

配偶者の不倫が疑われる場合でも決定的な証拠がない場合は、探偵(興信所)に依頼して証拠を集めることも多いでしょう。

では、探偵(興信所)に依頼した場合の費用は「損害」として、相手に賠償請求ができるのでしょうか?

これについては、認める裁判例と一部を認める裁判例、否定する裁判例があります。

【認める裁判例】

・東京地裁平成28年11月30日

Xは、Aの行動からその不貞を疑ったが、Aがこれを否定したため、やむなく興信所に調査を依頼したものであり、その結果、Yがその相手方であることを突き止めることができたのであるから、そのためにXが興信所に支払った費用は、Yの不法行為と相当因果関係のある損害というべきである。

Xは、興信所にその費用として77万7600円を支払ったこと、調査は2日にわたって行われていることが認められ、同額は不相当に高額とまではいえないから、Yは、Xに対して、その全額を賠償すべきである。

【一部を認める裁判例】

・東京地裁平成29年4月27日

Xは、調査費用として304万4609円を要したと主張する。確かに、Xの提出する写真や精算書によれば、Xが本件調査を依頼し、YとAとの関係について写真撮影がされたことは認められるものの、本件調査を依頼した時点では、YとAはまだ再開しておらず、Yとの関係で平成27年1月からの調査が必要であったとはいえず、どのような調査が行われたのかの内容も不明であり、その支払いもXのみにおいて行ったのかは明らかではない。これらの事情からすると、本件不貞行為と相当因果関係のある調査費用を20万円と認めるのが相当である。

【否定する裁判例】

・東京地裁平成28年6月3日

調査費用については、これにより得られる調査報告書その他調査結果はいわば証拠収集の手段でしかなく、行為としての調査も弁護士費用のように法律上資格等による制限がなされているものではなく、代替的な性質のものであることに鑑みれば、Xにとって重要であったとしても、不法行為と相当因果関係のある損害とは認められない。

◉解説

以上のように、調査費用を損害として認める裁判例、認めない裁判例、その中間として一部を認める裁判例があります。

もっとも、実務上は、調査費用が全額認められることは少ないといえるでしょう。

配偶者が不倫を否定しており、他に有力な証拠もないなど、探偵に依頼する必要性が高かったといえる場合であれば、調査費用の一部が認められることもありますが、その場合でも実際に認められるのは実際にかかった費用の1割程度です。

治療費

不倫によって精神的苦痛を被り、それによってうつ病や適応障害等の精神的な疾病を発症した場合、その治療費等を請求することは可能でしょうか?

【認める裁判例】

・東京地裁平成28年2月1日

Xの心療内科への通院が、本件不貞を知ったことによることは明らかであるから、Yは、治療費及び交通費の合計3万6320円をXに対して賠償すべき義務を負うほか、Xが医師から長期の通院を要する旨伝えられていることを踏まえると、少なくとも、将来1年間分の治療費として6万2263円をXに対し支払うべき義務を負うと認められる。

 

【否定する裁判例】

・東京地裁平成28年11月8日

一方配偶者の不貞行為により他方配偶者が精神的衝撃を受けたとしても、それを原因としてうつ病に罹患するのが通常であるとはいえないから、治療費、通院交通費、休業損害、後遺障害による逸失利益、通院慰謝料及び後遺症慰謝料が、AとYとの不貞行為との間に相当因果関係がある損害とは認められない。

 ◉解説

治療費等についても肯定例と否定例がありますが、認められることは実務上極めて稀有といえます。

実際にうつ病などの精神疾病を発症したとしても、不貞との因果関係が必ずしも医学的に明らかでないこと、仮に因果関係があったとしても、不貞行為によって通常生じる損害とはいえないことがその理由です。

ただし、精神的な疾病を発症したことは、個別の損害として認められるのは難しくても、慰謝料の増額理由にはなり得るでしょう。

転居費用

自宅が不倫の現場になっていたなどして、転居を余儀なくされた場合、その転居費用を不倫相手に請求できるでしょうか?

これについて肯定した裁判例は見当たりません。

否定した裁判例は以下のとおりです。

【否定する裁判例】

・東京地裁平成28年8月30日

Xは、Y及びAの不貞行為によって引越しをせざるを得なかったとして、引越し費用30万7400円も相当因果関係ある損害として主張している。

しかしながら、Y及びAの不貞行為があったからといって必然的にXが転居しなければならなくなるものとはいえず、Y及びAの不貞行為とXの転居費用との間に相当因果関係があるとはいえない。

◉解説

不貞行為がきっかけで転居することになったとしても、必ずしも不貞行為と因果関係があるとはいえず、転居費用を不倫相手に請求することはできないといえるでしょう。

弁護士費用

不倫相手に慰謝料請求をするにあたり弁護士に依頼をした場合、その弁護士費用は相手に請求できるのでしょうか?

これについて実務の運用はすでに固まっており、訴訟をした場合、弁護士費用以外の損害の1割が不倫と因果関係のある損害として認められるということになります。

ですから、例えば、弁護士費用以外の損害額が200万円として認められた場合、弁護士費用は20万円までがこれと因果関係のある損害として認められ、最終的な認容額は220万円になるということです。

離婚慰謝料

不倫によって離婚をした場合、不倫自体によって発生した慰謝料(不倫自体慰謝料)の他に、離婚したことによって発生した慰謝料(離婚慰謝料)も請求できるのでしょうか?

これについては、最高裁の判例があります。

最高裁の判例は、下級審(地裁や高裁)との裁判例とは格が違い、ある論点について一度最高裁が判例を出した場合、それ以降、実務はその判断に従って運用されることになります。

さて、離婚慰謝料についての判例(最高裁平成31年2月19日)は「夫婦が離婚をするに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが、協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても、離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である」として、不貞と離婚との因果関係を否定して、離婚慰謝料についての賠償責任を否定しました。

もっとも、最高裁も全ての場合に離婚慰謝料が否定されるとは述べておらず「当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦の離婚をやむを得なきに至らしめた場合」は、離婚慰謝料を請求できると判示しています。

ただ、このような場合は極めて例外的な場合に限られるであろうと思われます。

このように、現在の実務では、離婚慰謝料を相手に請求することはできないとされています。もっとも、不貞を原因として夫婦が離婚した場合、個別の損害として賠償請求をすることはできないものの、離婚によって精神的苦痛が大きくなったとして不貞自体慰謝料は増額されることになります。

不倫(不貞)の証拠は自分で集められる?探偵を使わずに不倫(不貞)の証拠を集める方法について弁護士が解説します

2024-06-03
  • 配偶者が不倫をしているかもしれないので証拠を集めたい
  • 不倫の証拠は自分で集められる?
  • 不倫の証拠を集めるためには探偵に依頼しないといけない?
  • 探偵に依頼しないで証拠を集める方法は?

このコラムではそのようなお悩みをお持ちの方にために、不倫の証拠を集める方法についてわかりやすく解説していきたいと思います。

そもそも「不倫(不貞)」とは何か?

不倫(不貞)の証拠を集めるといっても、そもそも何が「不倫(不貞)」にあたるのかがわからなければ、適切に証拠を集めることができません。

実際、「不倫の証拠が取れた」としてご相談いただいたものの、不倫(不貞)の意味をきちんと理解できていなかったために、弁護士が見たら有用な証拠がほとんどなかったという事例はたくさんあります。

そこでまず、目標を見失わないために、「不倫(不貞)とは何か?」ついて解説しておきたいと思います。

なお、ここまで「不倫(不貞)」という記載の仕方をしていますが、「不倫」と「不貞」は同じ意味です。

一般には「不倫」という言葉が使われることが多いでしょうが、法律の世界では民法の条文(770条1項1号)で「不貞な行為」という文言が使われていることから、それに従って「不貞」ないし「不貞行為」と呼ぶのが通常です。

以下では皆様になじみのある「不倫」の方で統一したいと思います。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、「不倫」というのはズバリ「配偶者以外の異性との性交渉」のことをさします。

したがって「性交渉」がないと不倫とは呼べません。そして、ここでいう「性交渉」とは「性交または性交類似行為」のことを指します。

「性交」というのは、姦淫行為のことで、もっとくだけた言い方をするといわゆる「本番行為」のことです。

「性交類似行為」は、姦淫行為以外でそれに類似する行為であり具体的には、口淫、手淫などがそれに当たります。

なお、キスについては、一般にそれだけでは不倫にあたらないとされています。

このように、不倫とは肉体関係の存在が前提となるのであり、例えば二人で食事に行くとか、頻繁に電話やLINEをしているというだけでは不倫にはあたりません。

ですので、集めるべき証拠は性交渉があったことを示すものでなければならず、そこがゴールになるということを意識していただく必要があります。言い換えれば、単に親密な交際関係にあることを証明しても、性交渉の存在を証明できない限り不倫の証明にはならないということです(なお、単なる親密交際関係であっても、それ自体が不倫の存在を推認させる一つの事情になり得ます。ただ、それだけで不倫の証明をするというのは難しく、位置付けとしてはあくまで「補完証拠」といったところです)

不倫の証拠は自分で集められる?それとも探偵に依頼すべき?

さて、目標が定まったところで、以下では具体的な証拠収集の方法について解説していきたいと思います。

ここで、最初に考える必要があるのが探偵に依頼するか、自分で集めるかという問題です。

探偵に依頼するメリットは、確実な証拠写真が取れる可能性が高いということです。

探偵は不倫調査を生業としているので、当然、ノウハウを持っていますし、素人ではなかなか用意できない機材も揃えています。

ですので、それらを用いて確実な証拠写真を押さえてくれる可能性は高いといえます。

ですが、探偵に依頼するとかなりの費用(数十万円〜100万円程度)がかかってしまいます。また、探偵に依頼したからといって確実に証拠が取れるわけでもなく、費用をかけたものの空振りに終わったということもよくあります。

そこで、探偵には頼らず、自分で証拠収集に挑戦するという選択肢もあります。

自分で証拠を集めることができれば、探偵に依頼した場合に発生するような高額な費用は当然かかりません。

ですが、探偵のようなノウハウも機材もない中で、探偵が撮影するような確実な証拠写真を撮るのはなかなか難しいところでしょう。

また、自分で証拠収集に挑戦することで、相手に察知されてしまうリスクも高いところです。

ですので、探偵に依頼するか否かは上記のようなメリットとデメリットを考慮して判断していただくことになります。

おすすめとしては、まず最初に安価でかつ低リスクに価値の高い証拠を集める方法にトライしていただき、それがダメな場合は探偵に依頼することを検討するという順番で進めるのが良いのではないかと思います。

探偵に依頼せずとも簡単に有力な証拠が取れるのであれば、高い費用をかけて探偵に依頼する必要は最初からありません。なので、まずはそういった方法を試してみるべきです(具体的には、後述する、LINE等のチェックです)。

ですが、そういった方法を試みても証拠を集めることができない場合は、状況を打開するために探偵に依頼することも検討した方がよいでしょう。

とはいっても、「数十万円の費用かけてまで探偵に依頼する余裕はないよ」という方も多いのではないかと思います。

そこで、以下では、探偵を使わずに証拠を集めるという道を選択した場合、どのような方法があるかをご紹介したいと思います。

なお、不倫の証拠については不倫・不貞慰謝料の相場と証拠でも詳しく解説しておりますので、そちらもご参照ください。

探偵を使わない証拠収集の具体的な方法

LINE、メール、SNSのやり取り

LINEやメール、SNSで性交渉の存在を示唆するようなやり取りは非常に価値の高い証拠になります。

基本的にはそれのみで不貞の立証ができると考えていただいても大丈夫なほどです。

先ほど、まずは安価でかつ低リスクに価値の高い証拠を集める方法にトライすべきだと述べましたが、ここでいう安価でかつ低リスクに価値の高い証拠を集める方法というのは、まさにLINE等のチェックです。

夫婦であればスマホの暗証番号を共有していることも多いので、その場合は隙を見てチェックすることも可能でしょう。あるいは、スマホの画面を開いたまま寝落ちしている隙にチェックして不倫が発覚したというケースも時々あります。

暗証番号がわからない場合は、配偶者がアンロックする際の指の動きを見て推認するという方法もありますが、ご存知のとおり、スマホの暗証番号を複数回間違って入力するとロックがかかってしまうので要注意です。

また、スマホ自体の暗証番号がわからなくても、他のデバイス(PC、タブレット、スマートウォッチ等)と同期しており、そこからLINE等を見ることができたという事例もあるので、心当たりがある場合は試してみてはいかがでしょうか?

証拠となるやり取りを見つけた際は、(LINEの場合)テキストデータとして自分のスマホに転送したり、その画面自体を自分のスマホで撮影するなどして証拠化しておくとよいでしょう。

性交渉の場面や不倫相手とのやり取りを記録した音声、動画

性交渉の場面を記録した音声や動画は極めて有力な証拠になります。

例えば、自宅で不貞行為に及んでいるような場合であれば、自宅の発見されにくい場所に盗聴器などを仕込んでおくとよいでしょう(なお、性交渉の場面を撮影する行為は、盗撮として犯罪に該当してしまうおそれがあるので、控えておいた方が無難です)。

こちらが所有している車の中で行為に及んでいる場合も同様に車の中に盗聴器を仕込んでおくことは容易だと思われます。

なお、その場合はドライブレコーダーなどに映像、音声が残っている可能性もあるので、確認してみることをおすすめします。

ホテルや相手の家で行為に及んでいる場合は、配偶者のカバンや持ち物に小型の盗聴器を仕込んでおく方法が考えられます。最近の盗聴器は極めて小型化しているので発覚のリスクは小さくなっています。

それでもやはり盗聴器を仕込んだことが発覚してトラブルになるリスクは避けられませんので、その点は考慮に入れて検討すべきでしょう。

上記のような方法で音声や動画の記録を収集した結果、性交渉の場面そのものではなくとも、不倫相手との会話の内容を録音することができ、その中で性交渉の存在を前提とするやり取りがされているということもよくありますが、それも極めて有力な証拠となります。

また、ご丁寧に配偶者が不貞相手との性交渉の場面を撮影していることもままあります。

スマホをチェックすることが可能であれば、写真、動画フォルダも確認してみるべきでしょう。

位置情報

配偶者の位置情報も証拠の一つにはなります。

ですが、どうしても誤差がありますし、例えば「配偶者がラブホテルにいた」という位置情報だけだと、配偶者が不倫していたことは推認できても、相手が誰かわからないので、不倫相手に慰謝料請求する際の証拠としてはあまり価値がありません。

証拠収集の方法としては、配偶者のカバンなどにGPSを仕掛けることが考えられますが、発覚のリスクが避けられない上、上述のとおり、あまり証拠としての価値も高くないので、コスパ的にそこまでおすすめはできません。

利用する場面は、「配偶者が本当に不倫をしているか確かめたい」という場合や、後述する写真を押さえるための手段として用いる場合に限定されるでしょう。

なお、配偶者のスマホに位置情報アプリが入っている場合は、その履歴をチェックするという方法もあり得ます。

ラブホテルや相手の自宅の出入りの写真

これは基本的に探偵の領分であり、素人が確実な写真を押さえるというのは至難の業です。

また、トライした結果、相手に察知されて尻尾を出さなくなるというリスクもありえます。

それでもチャレンジしたい場合は、まず配偶者のカバンや自動車にGPSを設置してその動きを把握するところから始めるべきでしょう。

尾行するという方法もありますが、自分でやっても発覚のリスクは高いので、配偶者と面識のない友人などにお願いする必要がありますし、素人が備考をしても失尾してしまう可能性が高いでしょう。

ですので、おすすめはGPSの設置ですが、当然これも発覚のリスクは避けられません。

配偶者の位置情報から特定の場所での不倫が疑われる場合、そこで張り込みをします。

ラブホテルであれば、二人で入っている場面か出てくる場面のいずれかがあれば十分です。

他方、不倫相手の自宅などの場合、滞在していた時間や時間帯も重要なので、「入」と「出」の両方が必要です。ですから、入ってから出てくるまで張り込む必要があります。

さらに、夜間であれば当然周囲は暗いので、普通のカメラだと顔が識別できる写真を撮ることはできません。したがって、きちんと撮影するためには暗視カメラが必要でしょう。

また、当然、ある程度離れた場所から撮影する必要がありますが、その場合は望遠カメラも必要でしょう。

配偶者の自白

配偶者の自白は極めて価値の高い証拠になります。

証拠収集にトライした結果、何となくそれっぽい証拠は集まったものの、決定打まではないという場合、最後の手段として配偶者にこれまで集めた証拠を突きつけて自白を迫ります。

裁判で不倫が確実に立証できる程度の証拠がなくても、それなりに不倫があったことを推認させるような証拠があれば、配偶者が観念して自白してくることも多いです。

その場合、確実にその場面を録音しておくようにしてください。

また、配偶者に自筆の念書を書かせることができればなお良いでしょう。

まとめ

以上、探偵を使わずに証拠を集める方法をご紹介してきましたが、何がどの程度有力な証拠になるのかはなかなか法律に詳しくない人には判断が難しいところかと思います。

証拠収集の方法やそもそもどのような証拠を集めればよいのかお悩みの際は、プロである弁護士にご相談することをおすすめします。

不貞慰謝料の示談書(合意書)はどうやって書けばいい?-示談書の書き方と文例について弁護士がわかりやすく解説します

2024-05-27

 配偶者が不貞(不倫)をしてしまい、その不貞相手と示談をする場合、口頭の合意だけでは合意された内容が形として残らないので、後々のトラブルを招いてしまうリスクがあります。

 そこで、相手と合意をする場合、きちんと合意内容を示談書(合意書)という形で残しておく必要があります。

 といっても、法律に詳しくない人が一から示談書を作ろうとしても、何をどのように書いてよいのかわからないのが通常でしょう。

 ここでは、そのような方のために示談書の書き方について解説するとともに、サンプルとなる文例(雛形)をお示ししたいと思います。

そもそも示談とは?

「示談」というのは、慰謝料の金額などについて当事者間で取り決めをして、不貞慰謝料に関する争いを終結させることをいいます。

交通事故などでもよく「示談」という言葉を使いますが、不貞の場合も意味合いは同じです。

つまり、不貞をされた配偶者(被害者)と不貞をした相手方(加害者)が慰謝料の金額などについて話し合い、お互いに合意をして争いを終わらせることです

一言でいえば「話し合いによる解決」ですね。

もちろん、話し合いでは合意が成立せず、解決しないこともあります。その場合は被害者側が訴訟を提起して裁判所に判断してもらうことになります。

なお「示談」と似た言葉に「和解」というものがありますが、どちらも意味は同じです。

示談書を作成するメリットは?

示談をする際は単なる口頭での合意だけではなく、示談書(合意書)を作成しておくべきです。

示談書を作成するメリットは以下のとおりです。

①慰謝料の支払いを求める際の証拠となる

当事者間で合意をして示談書を作成すれば、示談書に記載された期間内に相手方から慰謝料の支払いがなされることがほとんどです。

しかし、まれに相手方が約束を守らず、合意書どおりに慰謝料を支払ってこないこともあります。

特に慰謝料が分割払いになっている場合などは、途中で支払いが途切れるということも一定数あります。

そのような場合、合意書を作成しておけば、それが証拠となり、裁判などで相手に慰謝料を支払うよう請求することができます。

②慰謝料以外の約束も明確になり、相手に守らせることができる

示談をする際には慰謝料以外にも、配偶者との接触禁止やそれを破った場合の違約金などについて合意をすることが多いです。

ところが、それらが口頭だけの合意だと、形に残らないので、相手が約束を反故にするリスクが高くなります。

そこで、示談書という形で約束事を明確にしておくことで、相手がその約束を守ってくれることが期待できますし、万が一相手が約束を反故にした場合は、違約金請求などの際の証拠とすることができます。

③争いが蒸し返されない

示談書には「清算条項」という条項を必ず付けます。

清算条項とは、「これで争いは終了したので、お互いこれ以上の請求はできませんよ」ということを確認する規定です。

清算条項を設けておくことで、同じ紛争が蒸し返されることが防げます。

これはどちらかというと、慰謝料を請求されていた側にとってメリットのある規定といえるでしょう。

示談書に記載すべきこと

それでは、以下で示談書に何を書くべきかについて解説していきます。

適宜、文例をお示ししますので、参考にしていただければと思います。

冒頭部分

●(以下「甲」という。)と●(以下「乙」という。)は、本日、乙が甲の妻である●(以下「丙」という。)と不貞行為に及んだ件(以下「本件」という。)について、甲の乙に対する慰謝料請求事件(以下「本件」という。)について、以下のとおり合意した。

どの合意書でもそうですが、通常、合意書の冒頭にその合意書が何について書かれたものであるのかを簡潔に示す冒頭文を付けます。

謝罪条項

乙は、甲に対し、甲の妻である丙と不貞行為に及んだことを認め、深く謝罪する。

不倫の示談書では、通常、一番最初に不貞行為を行なった事実を認めて謝罪するといった内容の謝罪条項を設けることが多いです。

法的な効力は特にありませんが、不貞をした側が事実を認めて謝意を伝えるということで不貞をされた被害者の心情に配慮するという意味合いのある規定です。

慰謝料(解決金)の金額に関する条項

乙は、甲に対し、本件の慰謝料(解決金)として、金●万円の支払義務があることを認める。

慰謝料の金額は示談書の中核といえるでしょう。

この条項では慰謝料の金額を明示するとともに、相手方においてその支払い義務があることを確認する旨記載します。

慰謝料の支払いに関する条項

乙は、甲に対し、前項の金員を令和●年●月●日限り、甲が指定する次の口座に振り込む方法によって支払う。振込手数料は乙の負担とする。

 ●銀行●支店 普通 ●名義(口座番号●)

慰謝料が一括支払いの場合は上記のような内容で足りますが、分割払いの場合は少し修正が必要です。以下に一例を示しておきます。

乙は、甲に対し、以下のとおり分割して、甲が指定する次の口座に振り込む方法によって支払う。振込手数料は乙の負担とする。

 ●銀行●支店 普通 ●名義(口座番号●)

 令和●年●月限り金●万円

⑵ 令和●年●月から令和●年●月まで、毎月末日限り金●万円ずつ

期限の利益喪失と遅延損害金に関する条項(分割払いの場合)

乙が前項の分割金の支払いを2回以上怠り、その額が●万円に達した場合、当然に期限の利益を喪失し、乙は、甲に対し、第●項の金員から既払額を控除した残金及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日から支払済まで年●%の遅延損害金を直ちに支払う。

慰謝料が分割払いの場合、分割金の支払いの支払いが万が一滞った場合の規定を設けておくことが多いです(そうすることで不払いを避ける効果も期待できます)。

具体的には「不払いがあった場合は残金を一括で払いなさい」という条項(期限の利益喪失条項)と「遅延損害金も併せて支払なさい」という条項(遅延損害金条項)を盛り込みます。

なお、上記の文例中「第●項の金員」となっている部分は、慰謝料(解決金)の金額に関する条項のことです。

求償権の放棄に関する条項

乙は、前項の給付をしたことを原因として丙に対して求償しない。

不貞は不貞相手と不貞配偶者の二人で行う不法行為ですから、当然、二人とも慰謝料を支払う義務を負います。

ですから、どちらか一方が一人で慰謝料の全額を支払った場合、もう一方に対して自分が支払った分のうちの一定割合(多くの場合は半分)を返してもらうよう請求できます。

これを求償権といいます(求償権については不倫慰謝料の求償権とはというコラムで詳細に解説しておりますので、そちらをご参照ください。)。

この求償権が残ったままだと、後日の争いを招いてしまうおそれもあるので、3者間の権利関係を一括で清算するために、不貞相手が不貞配偶者への求償権を放棄する旨合意することがあります。

その場合は、上記の文例のような規定を設けておきます。

接触禁止と違約金条項

乙は、甲に対し、本示談書締結日以降、面会、電話、メール、LINE、SNSその他方法の如何を問わず、丙との連絡、接触を試みないことを約束する。

前項の規定に違反した場合、乙は、甲に対し、違約金として違反行為1回につき●万円支払う。

不貞の示談書には不貞相手と不貞配偶者が二度と接触しないよう、接触禁止に関する文言を入れることもよくあります。

また、その約束が守られることを担保するために、約束を破った場合の違約金に関する条項を入れることもあります。

口外禁止条項

甲及び乙は、本示談書締結日以降、口頭、書面、電話、インターネットへの投稿その他方法の如何を問わず、本件に関する事実関係を第三者にみだりに公開、伝達しないことを約束する。

不貞に関する事実を口外しないことがお互いの利益にもなるとして、口外禁止条項を盛り込むことも実際は多いです。

清算条項

甲及び乙は、本合意書に定めるもののほか、本件に関し何らの債権債務のないことを相互に確認する。

先程も少し説明したとおり、示談書には争いが終了し、お互いに権利義務がないことを確認するための清算条項を設けます。

清算条項は、紛争の解決を担保するために必ず示談書に盛り込みます。

不動産を相続した場合の登記ってどうすればいいの?―相続登記について弁護士がわかりやすく解説します

2024-05-04

そもそも「登記」って何?

不動産の「登記」とは、不動産の状況や権利関係を公に示すために、公的な帳簿である不動産登記簿にそれらの情報を記録し、公開する制度のことです。

よく不動産の「名義」という言葉をお聞きになることがあるかと思いますが、そこでいう「名義」とはこの登記の名義のことを指しています。

不動産登記簿は法務局で調整、管理されており、全国の不動産に関する情報を誰でも見ることが可能です。

登記がなぜ必要か?

なぜ不動産を登記する必要があるかというと、登記をしておかないと不動産に対する権利を第三者に対抗することができないからです。

どういうことかというと、例えばAさんがBさんから甲不動産を購入したとします。しかし、Aさんは甲不動産の所有権取得について登記をしていませんでした。

そうしたところ、Bさんが別のCさんに甲不動産を売ってしまい(二重売買)、Cさんは甲不動産の所有権取得を登記しました。

この場合、Aさんは最初に甲不動産を購入し、Bさんに購入代金を支払っているにもかかわらず、甲不動産の所有権を取得できず、甲不動産はCさんのものとなってしまうのです。

このように不動産に対する権利を保全するためには登記をしなければならず、これをしておかないと、知らぬ間に自分の権利を失ってしまうおそれがあるのです。

そして、これは遺産分割によって不動産を取得した場合も同様です。

後述するように昨今になって相続登記は義務化されていますが、それは別にしても不動産を相続によって取得した場合は必ず登記をするようにしましょう。

相続登記はどうすればいいの?

不動産登記は、登記申請書に必要書類を添付して法務局に提出することで行います。

もっとも、相続登記は、①遺産分割による相続登記、②法定相続分による共同相続登記、③共同相続登記後の遺産分割に基づく登記、④(相続人への)遺贈による登記などのパターンが考えられ、そのいずれであるかよって申請書の記載事項や必要書類などが異なります。

以下でそれぞれのパターンごとに解説していきたいと思います。

①遺産分割による相続登記

・申請人

通常、相続登記は登記権利者(権利を取得した人)と登記義務者(権利を譲渡した人)の共同で申請しなければなりません。

例えば、不動産の売買だと、売主と買主が共同で申請する必要があります。

しかし、遺産分割による相続登記の場合は、不動産を取得した相続人が単独で所有権移転登記を申請することができます(不動産登記法63条2項)。

・日付及び登記原因

登記申請書には登記原因(登記をする理由となった法的な原因)とその日付を記載しなければなりません。

遺産分割によって不動産を取得した場合、相続開始時に遡って不動産を取得するとみなされるため(民法909条)、申請書に記載する登記原因日付は相続開始日になります。

また、登記原因は「相続」です。

・登録免許税

固定資産税評価額の0.4%

・管轄法務局

不動産の所在地を管轄する法務局に申請書を提出しなければなりません。

・添付書類

ⅰ 登記原因証明情報

不動産登記の申請をする際は、登記原因の存在を証明する資料を添付資料として提出しなければなりません。

遺産分割による相続登記の場合は、被相続人との相続関係を示すために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等と相続人の現在の戸籍謄本が必要になります。

なお、法務局で承認を受けた法定相続情報一覧図を戸籍一式に代えることも可能です。

以上に加えて、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑登録証明書も登記原因証明情報として提出する必要があります。

なお、調停や審判による分割の場合は、調停調書や審判書を提出しなければなりませんが、この場合は、戸籍一式や相続人の印鑑登録証明書は基本的に不要となります。

ⅱ 住所証明書

不動産取得者である相続人の住民票を提出します。

ⅲ 委任状

司法書士等に登記申請を委任した場合は、委任状を添付しなければなりません。

ⅳ その他

その他、不動産の固定資産税評価額がわかる資料と被相続人の本籍地の記載のある住民票の除票を添付するのが登記実務となっています。

前者は登録免許税の計算をするため、後者は被相続人と登記名義人の同一性を確認するために必要であるといわれています。

②法定相続分による共同相続登記

・申請人

被相続人の死亡により相続は開始したものの遺産分割はまだ成立していないという段階において、不動産を含む遺産は相続人たちが法定相続分に応じて共有していることになります。

この共有状態について登記するのが「法定相続分による共同相続登記」です。

この登記は各相続人が単独で申請することが可能です。

・日付及び登記原因

登記原因の日付は相続開始日、登記原因は「相続」となります。

・添付書類、登録免許税、管轄法務局

添付資料は①で挙げたものから遺産分割協議書(または調停調書、審判書)と印鑑登録証明書を除いたものです。

登録免許税、管轄法務局は①と同じです。

③共同相続登記後の遺産分割に基づく登記

・意義

②の登記をした後で遺産分割が成立したことによって不動産を取得した場合の登記のことを指します。

・申請人

従来、不動産を取得した相続人と他の相続人が共同で「持分全部移転登記」を申請する必要があるとされていましたが、法改正により令和5年4月1日からは単独での「所有権更正登記」が可能になりました。

したがって、同日以降は、不動産を取得した相続人が単独で登記申請をすることができます。

・日付及び登記原因

登記原因の日付は遺産分割の成立日、登記原因は「遺産分割」となります。

・添付資料

ⅰ 登記原因証明情報

 遺産分割協議書と相続人全員の印鑑登録証明書が必要になります。

 なお、調停や審判による分割の場合は、調停調書、審判書を提出しますが、その際は印鑑登録証明書の提出は不要です。

ⅱ 住所証明書

申請者の住民票を提出します。

ⅲ 委任状

司法書士等に登記申請を依頼する場合は、委任状が必要です。

・登録免許税

不動産の個数×1000円

・管轄法務局

管轄の法務局は①、②と同じで不動産の所在地を管轄する法務局です。

④(相続人への)遺贈による登記

・申請者

従来、遺贈の場合については、受遺者と他の相続人との共同申請が必要とされていましたが、法改正により、令和5年4月1日以降は、相続人への登記の場合は受遺者による単独登記が可能になりました。

・日付及び登記原因

登記原因の日付は遺言者が死亡した日です。また、登記原因は「遺贈」となります。

・添付資料

ⅰ 登記原因証明情報

まず、遺言書が必要になります。

公正証書遺言や遺言書保管制度によって法務局で保管されていた遺言書を除いて、家庭裁判所での検認を経ているものでなければなりません。

また、死亡の事実の記載のある遺言者の戸籍謄本等及び受遺者の戸籍謄本等も登記原因証明情報として必要になります。

ⅱ住所証明書

受遺者の住民票の写しを提出します。

ⅲ 委任状

司法書士等に登記申請を依頼する場合は、委任状が必要です。

ⅳ その他

その他、不動産の固定資産税評価額がわかる資料と被相続人の本籍地の記載のある住民票の除票を添付するのが登記実務となっています。

不動産登記の義務化

令和6年4月1日から不動産登記の義務化制度がスタートしました。

これにより、相続によって不動産を取得した人は、相続開始があったことを知り、かつ、不動産を取得したことを知った日から3年以内に所有権移転登記の申請をしなければならなくなりました。

正当な理由がないのに登記を怠った場合は10万円以下の過料に処せられます。

なお、遺産分割協議がまとまらないなどの理由で登記申請ができない場合は、登記名義人について相続が開始した旨と自身がその相続人である旨を法務局に申し出ることによって、登記申請の義務を履行したものと扱われます(相続人申告登記制度)。

その後、遺産分割協議が成立した場合は、成立の日から3年以内に所有権移転登記を申請しなければなりません。

司法書士との連携態勢

不動産登記は司法書士の守備範囲であり、弁護士が登記手続きについて隅々まで知識を有しているわけではありません。

もっとも、遺産の中に不動産が含まれている場合、遺産分割や遺言書の作成をするにあたっては、常にその後の登記手続きのことも視野に入れておく必要があります。

そこで、登記のことも踏まえながら遺産分割や遺言書の作成を適切に行うためには、弁護士と司法書士の協力関係が必須です。

名古屋H&Y法律事務所では登記の専門家である司法書士をご紹介させていただくとともに、司法書士との密な連携体制に基づくリーガルサービスを提供させていただきます。

遺産相続や遺言書の作成のことでお困りの際はぜひお気軽にお声がけください。

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